分厚い本もみんなで勉強すれば怖くない

午前中は原稿の校正。ゴールデンウィーク進行なので、少し早いのである。

2限の時間にあったNLTK本の勉強会には出そびれてしまったが、あの本の全訳をしたそうで、あまり進行に口を出さないつもりだったが、さすがにそれはどうかと思って(そこまでして読むような本ではない)、もう少し他のことに時間を使ってもらうことにする。本にも時間をかけて読む価値のある本とそうでない本があると思うし……。全く読む価値がないと言っているわけではないが、他に優先度の高い本はあるし、全員が揃って読むべき内容かどうかという問題もある(有志で自分たちから言い出して集まって読むのは、どういう本でもいいのでぜひやるといいと思うが)。難しいのは、和訳で読んでほしいわけではないが、かといって英文和訳をしてほしいわけでもない、ということかなぁ(英語の専門文献を読む勉強会は他に3つあるし、そちらは英語を精読する価値があると思う)。結局、和訳を使いたい人は使う、というところで落ち着いたが……。

午後は離散数学の基礎勉強会。「オートマトンと言語理論」の授業でも教科書にしているいわゆる Sipser 本「計算理論の基礎」の第一巻をみんなで読む。

計算理論の基礎 [原著第2版] 1.オートマトンと言語

計算理論の基礎 [原著第2版] 1.オートマトンと言語

計算機科学の基礎的な知識もみんなが持っているというわけではないので、毎期1科目くらいずつ、基礎的な本を読んでみると自分の勉強になっていいかもしれない。データベースの本とか、アルゴリズムの本とか。問題は、自分は1回読むとしばらく読まなくていいという気持ちになるので、それがよい本であっても、翌年の新入生と一緒に読もうという気にならないことだろうか。

夕方にはウェブマイニングの勉強会ということで、Introduction to Information Retrieval (IIR)の読み会。リンク先は和訳で、原著は著者のサイトでPDFが無料公開されていて、そちらを使用。

情報検索の基礎

情報検索の基礎

最初はうちの研究室と石川研究室の合同勉強会だったのだが、高間研究室や片山研究室の人たちも合流して20人以上の大所帯に。ちょっとした授業のサイズである。外部から[twitter:@takuya_a] くんも参加してくれた。

普通初回は担当を決めるだけなのだが、この勉強会だけスタートが少々遅くなってしまったので、自分が1回目を担当することに。Boolean Retrieval ということで、単語やフレーズがその文書に入っているかどうかを検索する、という検索の問題を扱った。単純なモデルだが、それだけに理解しやすいし、ウェブ検索は毎日のように使っている人も、アルゴリズムを理解しようと思うと簡単なモデルから学んだ方がいいと思うので、この本はよく考えて作られている。次回以降が楽しみである。

夜は場所を移動して [twitter:@yotarow] くんの歓迎会。[twitter:@hitoshi_ni] さんが音頭を取ってくださって、ありがたい限りである。20人近く、研究室のOBOG会でもないのに自然言語処理関係者が集まったのは驚くべきことで、とても貴重な機会であった。ただ、19時半スタートなのに、豊田から溝ノ口まで1時間以上かかったので、合流できたのは1時間以上遅れてしまったが……(もっとも、そのおかげで@takuya_a くんと電車の中で話せたので、よかったけど)。

久しぶりにお話する方々もいて(国内の学会や研究会では時間がなく、もっぱら国際会議に参加しているときくらいしかゆっくり話せない)、大変よい会であった。教員として大学にいるということはどういうことか、というのを最近改めて考える。研究をしたいなら、大学以外の研究所も有力な候補であるし、研究に加えて仕事として開発と教育のどちらがよりやりたい(もしくはやってもよい)かで、大学と研究所どちらが過ごしやすいか変わってくる、ということかなぁ。

自分も博士号を取得して助教になったとき、2年間は助教として働こう、2年経ってこれは違うなと思ったら企業に行こう、と考えていて(そのため科研費という研究費もあえて2年間で申請した)、想像以上に大学の環境が肌に合っていたので大学に残ることにしたが、もともと中高の教員になろうかと思って教職の単位を揃えていたくらい教育が好きな自分ですら迷うほどなので、絶対的に大学の環境がよい、と言い切れるのもではない。もっとも、情報科学の分野では、博士号を取得して企業に就職するのもよくあるケースなので、修士の段階で迷うくらいなら、博士に進学して就職する段階で迷えばいいんじゃないかと思っている。(むしろ、全く迷いがなく「教員として大学に残る以外の選択肢は考えていません」という学生がいたら、とりあえず博士後期課程への進学を止めると思う)

1次会でお暇したが、すでに南武線で帰れない時間で、一度渋谷まで出たのだが、山手線と中央線が止まっているようだったので、京王井の頭線で吉祥寺に出る。結局中央線が止まっていて、2時間ほど歩けば帰れるのだが、すでに日が変わっていたのでタクシーに乗る。2,620円なり。吉祥寺からタクシーに乗るのは初めてで、いくらかかるかびびっていたが、深夜割り増しを入れてもそこまで高くなかった。