新しい研究室と伝統と

いろいろと仕事と〆切が立て込んでいて、午前1時に起きて仕事。日本学術振興会特別研究員(学振)の研究計画書にコメントを入れたり、評価書を書いたり。

奈良先端大にいたときも学振の研究計画書を読んでコメントしたりしていたのだが(添削した人の採択率は、平均採択率を遥かに上回る)、研究室全体の主指導教員は松本先生だったので、主指導教員として評価書を書いたりするのは初めてで、こういう仕事もあるのだなぁ、と改めて松本先生の偉大さを発見する(6人くらい出していた年もあったと思うが、推薦書はお願いすると30分くらいでささっと書いてくださる。すごい。)。

午前中は情報理論の授業である。授業後、複数の学生から海外の大学に行きたいのだけど、という相談を(別個に)受ける。結局大学院で行くなら推薦状が必要なので、研究室に配属されたらしっかり研究を進め、いい推薦状を書いてもらうとよいのでは、そして学部3年生だとまだ研究室に配属されないので、アルバイトやインターンシップに行ってみては、という話をする。

個人的なお勧めのルートは、日本で大学院(修士)に進学し、M1から研究をがんばってメジャーな国際会議に通し、そこで海外の研究者と話したり様子を見聞きして心を固め、M2で学振に申請しつつ海外の大学院を当たる、というコースである。このルートだと、途中で博士号取得を断念したり、留学を取りやめたりしても日本で普通に働けるし、実力も実績もあるので海外の大学院でも(直接行くより)楽かなと思うのである(ここまで準備しても、大変だと思うけど)。

お昼はうちの研究室の受験希望者とランチ。すでに松本研に行ったことがあるそうなので、うちの研究室の勉強会に参加してもらい、雰囲気の違いを見てもらおうと思ったのである。自分自身 NAIST 松本研出身なので、松本研もよい環境だと思うし、決めかねているなら(あるいは落ちることが不安なら)両方受験してもらってあとで決めればいいと思うし、どこを重視するかは人それぞれなので、見学した直感で決めてもらえればいいんじゃないかな。

自分が思う松本研との違いは、以下のような感じである。

  • 松本研究室
    • 歴史と実績があり、OB/OG ネットワークが強い
    • 教員数が多く、カバーできる研究分野が広い
    • 博士後期課程の学生が多く、突っ込んだ議論ができる
    • 学部生がいないし、新入生はほぼ全員が分野外なので、M1が全員フラット
    • 学内の研究費や公的な研究費が多く、計算機環境が充実している
    • 学内に寮があり、都会から離れているので研究が捗る
  • 本研究室
    • できたばかりで、新しいことに挑戦しやすく、将来性がある
    • 学生主体の勉強会が多く、和気あいあいと過ごせる
    • 研究室メンバー中の新入生の比率が高いので、楽しく勉強できる
    • 自然言語処理に詳しい同期がいるので、質問しやすいし、刺激になる
    • 企業の訪問・共同研究・インターンシップ・アルバイト募集が多く、生のデータに触れたり企業の人と交流したりできる
    • 都内にキャンパスがあるので各種勉強会やセミナーに参加しやすく、就職活動も楽

どっちもどっちだと思うので、自分が重視するところはどこか、というので判断してもらえればな、と……。

夕方は進捗報告。ゴールデンウィーク明けから、サーベイ中(実験もしていなければ論文も書いていない)の人は、毎週

  • 新しい論文を最低10本リストアップする(タイトルと著者、国際会議名等を報告する)
  • うち最低3本は少なくともアブストラクト、イントロダクション(関連研究)あたりを読む
  • うち1本を全部読んで詳しく紹介する
  • 目を通した論文の関連研究などを参考に、次回の10本を探す

ということを要請したところ、みんなちゃんとサーベイしてきてくれて、とても勉強になる。というか、やはりこれまでサーベイをしてといくら言ってもほとんど論文を読んでもらえていなかったようだったが、具体的な数字と、何をどこまでやるか、ということを明示したら、やりやすくなったのかもしれない。

これだけがサーベイの唯一の方法であると思っているわけではなく、もっと深く時間をかけて読む方法もあるだろうし、むしろ個人それぞれが自分に合ったサーベイ方法を模索してもらうのがベストだと考えているのであるが、とりあえず一つの「型」を数ヶ月体験してもらうのが近道なのかな、と思ったのであった。(好きか嫌いかに関わらず、一つのやり方を試してみて、自分のやり方を考えてもらう)