震災をきっかけに関西にベースが移った

タイに行く前の最後の出勤日。本当はもう1日早く出ようと思っていたのだが、今回は発表者ではないし、1週間丸々行かないのもどうかと思って変更したりしたのである。

昼から研究会。研究の内容とは関係ないが、「この研究テーマはおもしろくないと思うので、他のことがやりたい」と言いつつその研究テーマについてコメントを求める、というのはちょっと……。助言・助力を求めるときは「その行為を通して何がしたかったのか」を伝えることという話、全くその通りだと思う。

「研究ネタとして斬新な、おもしろい研究がしたい」と思うのは立派なことだと思うし、そういう中から優れた研究が産まれていくのだろうと思うのだが、世の中には研究としておもしろいことばかりが重要であるわけではなく、たとえば開発としては手法は教科書に載っているようなごくごく平凡なものでも、実際のデータに対して適用すると目覚ましい効果がある (それまでできなかったことができるようになるだけでよくて、カリカリにチューニングしたりする必要がなかったり、多少の精度を上げるために速度やメモリ使用量、コードのメンテナンスを犠牲にするメリットがなかったり)、ということも日常茶飯事である。世の中研究が全てではないし、トップレベルの国際会議に通るようなおもしろい研究をしなければならない、という強迫観念に追い立てられて精神的に追い詰められるよりは、もっと気楽に考えて「あんな人・こんな論文が通るなら自分の研究だって負けていない」くらいの気持ちでいいんじゃないかなぁ。

夕方、[twitter:@shirayu] くんの発表練習と teruaki-o くんの発表練習があったのだが、途中で中座して学園前経由でリムジンバスに乗り、関空へ。2008年ハワイで開催された国際会議に参加するとき、パスポートを忘れて宿舎まで取りに引き返した記憶がよみがえる……。今年6月にアメリカに行ったときは羽田経由だったので、関空の出発口に来るのは2009年ぶりで、なんだか懐かしい。

久しぶりに関空で少し過ごしたが、いろいろお店がなくなっていたりできていたり、浦島気分である。Pitapa (Pasmo のような関西の私鉄の IC カード) の機能がほしくて KANKU CLUB カード を作っていて、関空では専用ラウンジが使えたりして少しは便利だったのだが、専用ラウンジが廃止されたりなんだり、関西を離れたら海外に行くときは羽田か成田経由になるだろうし、そうしたら解約しようかと思っていたのだが、どうやら11月15日で新規申し込みも停止するらしい。いろいろあって関空とのご縁はまだ続きそうだが、Pitapa は別のカードに移動しようかなぁ。SuicaPasmo と相互利用が可能になってくれれば、全部1枚で済むのだが……

23:55発なので、出発まで妻と電話したりしつつまったり過ごす。今回はシンガポール航空で、4人掛けの座席に2人だったので、楽に過ごせる。iPad で自炊していた「震災婚」を読む。

震災婚 (ディスカヴァー携書)

震災婚 (ディスカヴァー携書)

震災をきっかけに結婚したカップルが多いという現象の記述と考察がいろいろあり、へーと思わせるところもあったが、自分の論に都合のいいところだけを恣意的に取り出して書いているようで (書き方は秀逸なので、読み物としてはおもしろいのだが)、そういうところは興ざめである。とはいえ、自分たち夫婦も、震災とそれの直後の混乱のとき、震災直前まで福島にいた (予定では5月まで福島で調査を継続することになっていたが、震災後災害の影響でデータが取れなくなったし、東京も余震や停電やらの混乱があったので) 妻を奈良に1ヶ月呼び戻したり、福島で借りていたウィークリーマンションの引き上げに同行したり、確かに震災を経て我々も変わったなと思うことが多々あったので、他の人たちも同じような人たちがいたんだ、と思ったりする。

しかし新書だからと値段を見ないで買ったのだが、他の新書とページ数も変わらない (208ページなので、むしろ新書の中ではもっとも薄い部類に入る) のに1,050円は高い。自分の感覚では、新書で1,000円を超えるのは、相当分厚いものだと思うのだが……