学部1年は高校生から大学生になっていく何者でもない時期

今日から2日間、情報通信特別講義という集中講義で、主に1年生を対象に外部講師の方々をお招きして、「20歳のころの自分が聞きたかった話」というお題で話してもらう。とはいえ、1年生は南大沢キャンパスで、自分は日野キャンパスなので、朝は日野に出勤して資料を印刷したりしてから南大沢に移動。

細かい報告はTwitter のまとめおよびうちの研究室 B4 の [twitter:@Ace12358] くんがまとめてくれた「企業の方々の招待講演を聞いてきた」を見ていただければ概要は分かると思うので、ここは裏側の話をしたいと思う。

実はこの授業、15コマやるのがデフォルトで、去年は「何人外部の講師を呼んでくださってもかまわないので」と言われていたので、10人くらい呼ぼうとして声をかけ始めたら「通信系とのバランスを考えると、ちょっと困る」「趣旨の説明として内部の教員が1コマくらい話してほしい」とストップがかかり、泣く泣くお断りした方もいる(ごめんなさい)のだが、非常勤講師をお願いすることになるので最後は教授会の承認が必要な事項になるそうで、そのあたりの手続きが一通り分かったのは、よかった。学部生はこういう機会でいろんな方の話が聞けるとよいと思うので、こういう機会は積極的に提供したいと思うし、単位にならない学生でも(少なくとも自分がホストする授業は)どんどんもぐってほしいと思う。

というわけで、まず自分がこの2日の招待講演のコンセプトを話すことになったのだが、首都大に来てから各種授業のどこかで話しているインターンシップの話、卒業したらどういう能力を身につけていることが期待されているか、という話をしたりする。本当は先日オープンキャンパスで高校生を対象に話した PageRank のスライドも用意していたのだが、60分では話す余裕がなかった。毎回講義の最後の20〜30分を質疑応答タイムにし、感想票を配ってコメントを書いてもらったのだが、やはり1年生だと全く今後どういうことを意識して学生生活をすればいいか考えていなかったようなので、話してよかったと思う。学部3年生以上の方が「1-2年生のときにこういう話を聞きたかった」と複数書いてくれていたのが印象的であった。

お昼は [twitter:@guttimi] さん、[twitter:@tomo_wb] くんと食べる。@guttimi さんはもうかれこれ10年以上前からの知り合いで、最初は学部2年生のとき出入りしていた Z会の受験生向けの掲示板で知り合い、誘われてジョブウェブという就職活動関係のメーリングリストでしばらくやりとりをしていた、という間柄である。大学に入ったのに受験生関係のところで活動していた、というのが、今考えるとなんとも言えず受験を卒業できていなかった(当時は「代ゼミでの勉強は楽しかったのに、なんで東大の授業はこんなにつまらないのか」と思っていた)感があるが、2年生ながら「働いたら負け」と思っていた哲学科志望の自分が就職活動をする「意識高い」系のコミュニティに参加し、いろいろと変わっていくきっかけになったかなと思う、恩人の一人である。

特に @guttimi さんのすごいのは、自分と違って三歩先くらいを見ているので、「このタイミングでそう行くか」というような人生の選択をされるところである。@guttimi さん以外に自分がそう思うのは penny さん、[twitter:@takahi_i] さん、そして [twitter:@akf] さんである。あとになって、ああ、こういうことだったのか、と気づくことばかりなので、自分と見えている世界が違うのだな、と思わされるのだ。

夕方は [twitter:@uchumik] さんのトーク。@uchumik さんとは Y! 社時代に知り合った。それまで自分は(ウェブ)企業を外から見ていて「企業の人は研究できないのだろうな」と思っていたのだが、[twitter:@sassano] さんに声をかけていただいて中に入ってみると、企業の人は論文を書かないだけで論文を(大学の人以上に)読んでおり、論文を書く代わりに特許とプログラムを書いているだけだ、ということが分かり、自分の不見識を嘆いたものである。(他にも Y! 社には何人も「この人はすごい」と思った方はいらっしゃるのだが、某社の方々の大部分は所属を明らかにされていないので、ここではリンクしない)

感想票を見ると @uchumik さんのことを教授だと思っていた人がいて「高専出身でエンジニアとしても活躍し、教授にまで登り詰めてすごい、4年生に進学したら内海教授の研究室に行きたい」などと書かれていたりしたのだが、学部1年生には誰が教授かは分からないか……。

終了後、昨日準備ができていないからと発表練習しなかった学生の修士論文の中間発表の練習に付き合っていただ。@uchumik さんもこういう話を以前されていたそうで、やりたいことは分かるが詳細を書いてほしい、というコメントをいただく。3,000件のタグ付けを1日でやった、という話を聞いて「すごく手が速いですね!」とおっしゃっていて、自分もその通りだと思う(情報系の学生はどうしてもプログラミングは好きですぐ書くのだが、タグ付けは好きであるとは限らず、というかむしろ人手でやるのは極力やりたくない人が多いので、遅い人が多い)。学外の人から言ってもらえるということは、自信を持っていいのではないかな?

@uchumik さんは明日もいらっしゃるということで、明日にゆっくりお話することにして日野に戻り、M1 の公開期末評価の発表練習。これがなければ直接帰れたのだが、決まった時間の発表練習でないと、どうしても(プライベートな時間に)しわ寄せが出てしまう。かといって、練習しないで他の研究室の先生方に聞かせることはできないし、発表練習をやむを得ない理由がなくやらないというのを防ぐにはどうしたらいいかなぁ。うちの学部生の実験は、無断欠席を1回するだけで単位が出ないし、連絡があってもやむを得ない理由でなければ成績がマイナスになり、数回遅刻するだけで単位を落とすのだが、発表練習もそれと同じくらいの運用にしたほうがいいのだろうか……(そんなことしなくても、ちゃんとやってほしいのだけど)

夜は溝ノ口に移動し、松本先生を囲む会。いつもは松本研 OB の D山さんなど3人が飲んでいる会だそうだが、最近訳あって D山さんとやりとりする機会が増え、かつたまたま松本先生が国語研の日本語ワークショップ参加のために立川に泊まっているので、少し人数を増やして(といっても5人)松本研 OB で松本先生を囲みましょう、ということでお誘いいただいたのである。

松本研の最近の話を聞いたりしたが、もう NAIST を離れて1年以上経ち、新しく入ってきた人たちの様子も全然分からないので、不思議な感じ。あと、やっぱり松本研はいい環境だったのだな、ということを改めて思う。D山さんは、NAIST にいたときが人生の頂点で、そこからはずっと下り坂のように感じてらっしゃるそうだが、自分は東大に入ってから数年が人生の底で、シドニーに留学してから先はずっと上り坂(前の年より今年のほうが常によい)のように感じる。南大沢に行くとなんだか落ち着かないのは、学部に入りたての教養のころにあまりよい思い出がないからかもしれない(ずっとキャンパスは駒場だったが、後期課程に進学してからはだいぶましになった)。日野キャンパスは学部3年生以降しかいないので、非常に居心地がよい。こういう特殊な大学で働けるというのは、とても恵まれていると思うので、南大沢にときどき行かないといけないくらい、ぶつぶつ言わずに楽しんで行こう、と思った。