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情報通信特別講義の2日目。例によって詳しい内容は首都大情報通信特別講義2014まとめとうちの研究室 B4 の [twitter:@Ace12358] くんが書いてくれた 企業の方々の招待講演を聞いてきた(2日目)を参照されたい(あまり関係ないが、彼にはまとめブログを書く才能があると思う)。

今日は [twitter:@unnonouno] さんと [twitter:@hitoshi_ni] さんと [twitter:@overlast] さんの発表。朝に資料を印刷していこうと日野キャンパスに寄ったのだが(こういうところが南大沢がアウェイである悲しさ)、プリンタの調子が悪く全然刷れなかった。南大沢でプリンタを使う方法を調べた方がいいのかもしれない。あるいは、秘書さんがいてくれたら、事前に頼めるものは頼んで印刷しておいてもらうのだが……。

@unnonouno さんの話はかなり B1 の人たちに刺さったようである。特に、大企業と中小企業に優劣はない、という話をちゃんと考えていない人には、IBMからPFIに転身された実体験を交えた話が衝撃的だったようで、すばらしいトークであった。個人的には、企業の安定と個人の安定は違うから、安定した企業なら企業が安定するためには個人はリストラされるし、安定した個人になるには実力を身につけることだが、そうすると企業は点々とするかもしれないが、いろんな企業からお声がかかるので、ずっと仕事に困らない、という話が印象的だった。まさしく、挑戦しないことがリスクでもあるこの時代、安定した企業に入りたい、というのは逆に自分を不安定なポジションに追い込んでいる、と考えているので、それをズバッと言語化してもらったのは爽快であった。

お昼は講師陣と学食へランチ。他の講師の方々も、一日ずっと参加されるようで、豪華な一日である(笑)

午後は @hitoshi_ni さんによるお話。今回お呼びした中では、唯一ずっと研究者畑を歩いてきた方なので、研究職を考えている人や、考えていない人でも参考になるかと思ったら、案の定「研究職って考えていなかったけどおもしろそう」と感じてくれた人がいるようで、よかった。自分も研究者と呼ばれる人を知らなかったころは、大学教員くらいしかイメージできなかったが、国語研でアルバイトをしたり NTT 研究所でインターンをしたり、実際に話してみてだいぶ印象が変わったので、そういう経験を学生のうちにさせてあげたいと思うのである(研究者は雲の上の存在ではなく、飲んべえだったり酒好きだったり、いろいろな人がいる。あ、飲んべえと酒好きは同義語か)。

最後のトークは @overlast さん。@overlast さんの学生に向けたトークはかれこれ2-3回聞いていて、毎回大変な感銘を受けるので、今回も全幅の信頼をおいて楽しみにしていたのだが、期待を全く裏切らない最高のトークであった。ちなみに内容が公開されているのは大学3年生の僕に伝えたいことをつらつらとPerlで自然言語処理の2本で、どちらも学部生や院生の人が読んだら参考になると思う(最近のスライドのほうがかなり洗練・アップグレードされていてすばらしいのだが、最近のものは公開されていない)。

@overlast さんは冒頭でスライドは配布しないので、メモを取って聞いてほしい、写真撮影も禁止、と断っていたが、自分も代ゼミで学生をしていたとき、そして代ゼミの寮で住み込みチューターをしていたときも、授業を録音して、あとで聞ける気になって毎年浪人する人がいたのを思い出す(そういう性格の人は、なぜかどうしても勉強ができるようにならない)。録音したり録画したり、スライドがダウンロードできるからいいや、とメモを取らなかったりするのはもったいない。こういう素晴らしいトークは全神経を集中して聞いた方がよいと思う。

終了後、教室に残っていた人(今日の講師陣+[twitter:@uchumik] さん+[twitter:@tomo_wb] くん)で打ち上げにいく。首都大生が誰もいなくなってしまったが、こういう機会はチャンスなので、とりあえず残って講師に質問したり話を聞いたりしていると、じゃあご飯でも行く?と誘ってもらえたりするので(誘ってもらえなくても、色んな事情があることもあるので、あまり深く考えないで、次の機会にまたチャレンジ)、貪欲に動いてほしい。自分も色んな人が他の人に紹介してくれたからこそ、今の自分があると思うので、積極的に学生は他の人に紹介したいのだが、その場にいないと紹介のしようがないのである。あと、学生だけで固まるのはもったいないし、友人でも興味は違うことが往々にしてあるので、友人と違うことをするのを恐れず、ぜひ自分の知りたいことを社会人の方々にぶつけてほしいと思う。研究室選択も同じで、友人が行くから一緒に、というのは(1年くらいで就職あるいは他大学に進学して出るならいいけど、そこにしばらくいるつもりなら)やめたほうがいいし、きっかけは友人経由でもよいが、その研究室に行くか行かないか、社会人の人に話を聞きに行くか行かないか、自分の直感を信じたほうがよいと思うのだ。

いろいろな内容の(ぶっちゃけ)トークがあってとても有意義な時間を過ごすことができたが、一番心に残ったのは、勉強会を定着させる(論文を自ら読んだりするように新しい知識に関して貪欲である環境を作る)のはとても難しい、という話。まさしくいま立ち上げたばかりのうちの研究室で直面しているのは、研究するという意味での勉強会の定着なので、少なくとも情報科学修士を出たくらいの人たちがゴロゴロいるような環境で、てっきりどこもうまく行っているのかと思っていたら、うちだけの話ではないのか、と目から鱗であった。うちの研究室に限った話だと、プログラミングに関することとか、開発系の勉強会は問題ないのだが、研究になると論文紹介も進捗報告もなかなかうまくいかない。お手本になる先輩がいないから仕方ない、とこれまでは思っていたが、どうやらお手本がいればできるかというと、そういうものでもなく(言われてみると確かにそうで、先輩がいなければできないなら、開発系の勉強会も院生の数が圧倒的に少ないので、うまく行かなくておかしくない)、結局やる気の問題ではないか、という話。

ただ、それはメンバーのせいというよりは、単に自分の仕事に対するモチベーションの問題で、分からなかったらできる人がやってくれる環境だと、自分でできるようになろうというインセンティブがない(自分がやりたいことは別にある)からではないか、と。また、恐らくうちの研究室に関してはそういう興味の不一致の問題というよりは、やっぱり研究している先輩が少ないことが最大の原因だと思う。論文紹介や進捗報告が、どうしても教員と発表者の学生中心になってしまうのだが、これをもっと学生中心にできないかなぁ。2人だけでも研究する人がいて、学生同士で研究の話をしたりできれば、(耳学問でも)加速度的に理解が深まって、研究室全体でどんどん研究が進むようになると思うのだが……。

あと、インセンティブの話は実はそんなに単純な問題ではなく、自然言語処理の研究室に来てみたが、就職したい先は自然言語処理どころかデータ構造やアルゴリズムすら知っている必要がなく、ゲームだとか iPhone/Android アプリ(フロントエンド)を作る仕事がしたい、みたいに思っている人だと、そもそも自然言語処理機械学習の論文を読むインセンティブがなくてもおかしくない。しかも、それは学生の将来を考えると別に全然悪いことではなく、自然言語処理の論文を読む時間があったら MySQL でも Apache でもなんでもいいのでサーバをインストールして遊んだり、ハッカソンに出てアプリを作ったりするのを奨励したほうがむしろよいとさえ思う。作りたいものがあるならまだましで、大学院から分野を変えて来る人の中には、「自分のいまいる学科で就職するのは難しいようなので、大学院では就職できそうな情報系に行きたいです。研究は特にやりたいと思っていないので、研究テーマについては全く調べていません」というような人も、珍しいわけではない。

結局、こうだとすると研究室に来る学生のやりたいことと研究内容がマッチしていないことが根本原因なので、そこをなんとかしないとどうしようもないような……。ただ、来た人に自然言語処理を好きになってもらう努力をするよりは、自然言語処理に興味がない人は最初から来ないようにしてもらったほうがいいように思う(他のことがやりたい人は、そもそもより適切な大学・研究室に行けばいいだけなので)。いまの在学生は大丈夫なように見えるが、松本研でも自然言語処理に興味がない人が入ってき(て不登校になっ)たりするのを横目で見ていたし、首都大の大学院も NAIST と同じく数学と英語ができれば受かってしまうので、将来的に問題になりそう。

2日間にわたってトークしてくださった講師のみなさん、大感謝!