先輩の誘いを受けてリクルート

情報理論の授業の資料が準備できていなかったので、午前1時半に起きて作業(たまたま娘の夜泣きで起こされたせいだが)。毎年進度が若干違うので、少し変えないといけないのである。毎年少しは新しい内容を入れたいのだが、なかなか時間が取れない。1年目は右も左も分からず毎週授業をするだけで死にそうだったが、去年は暗号に関する話を入れることができたので、今年は文法圧縮のトピックをどこかに入れたいと思っている。(入れると勉強するので……)

授業準備の残った時間で、リクルートテクノロジーズでのトークの資料の準備。NAIST 松本研の先輩である [twitter:@takahi_i] さんからお誘いいただき、昨年度は新規の仕事を受けないことにしていたのだが、大変お世話になった間柄でもあるし、年度も変わるだろうしということで、お引き受けしたのである。年度が変わったら急激に時間がなくなるということは想定していなかったが(汗)

30分プラス質疑応答ということで時間を確保してくださっていたので、30枚ちょっと用意すればよく、幸い最近別件で作成したスライドがあったので、それをベースに手直し。しかし聞きに来る人がどういう人たちか分からないのでちょっと不安。Twitter アカウントを知っている人はアイコンを見れば分かるので、いやいやそんな高度な話はしませんよ(懇親会がメインだと思って来てください)、と申し訳ない気持ちもするのだが、たぶんプロはそんなに来ないと想定して資料を準備。

リクルートといえば先日人工知能の世界的なトップ研究者をアドバイザーに迎えた研究所を設立して関係者の間でどよめきが起きたが、攻めているな〜。(名前以上に実質的に何をするのか、というのを静観している人が大半だろうが)

午前中は大学で情報理論の授業。学部3年生対象の授業だが、3年生は日野キャンパスがメインになるのがこの4月からで、3月までは南大沢キャンパスがメインだったので、ちょっと微妙な雰囲気。学部4年生からは研究室に配属されるので座席があるのだが、学部3年生はご飯を食べる場所も共有スペースを使わないといけないので、ちょっとかわいそうな気もする。夏に新しい実験棟ができればもっと快適になるだろうから、それを楽しみにしてもらえればと思う。(実験も新しい教室になる)

お昼休みには内部生を対象とした大学院入試説明会。自分が大学院入試委員だったのは昨年度までだが、4月中は引き継ぎで新旧両方の委員がなんとなく担当することになっているので、自分も出席。今年から筆記試験免除(要は推薦)の申請にも TOEIC あるいは TOEFL のスコアを提出させるようにしたので、学生に念を押しておくのであった(事あるごとにアナウンスしているけど)。

コース内で TOEICTOEFL の IP テストもしていないし、これまで筆記試験免除の学生の英語力をコースで把握することができなかったのだが、今年からは少しずつ全容が明らかになるのではないかと思う。研究室の学生が書く英文を見たり論文紹介を聞いたりすると、英語が読み書きできないというわけではなく、みんな TOEIC で言うと600-800点くらいあるように思うのだが、どうも英語に苦手意識がある学生が多いようで、もったいなく思っている。もっとたくさん読んで、書いて、話すのにチャレンジするとよいのではないかな?

昼過ぎからはテクニカルライティングの授業。例によって30分ほどで演習は終了し、残りの1時間は雑談。他の研究室の話を聞いても、この授業は4月のうちにたっぷり教員と雑談することで日野キャンパスにスムーズに慣れることを目的としているので、しっかり(?)雑談するのが重要と聞いたのだが、1年目や2年目はその趣旨を把握しておらず(そもそもそういう説明もなかったし)、研究の話をしたりしていて、あれは果たしてよかったんだろうか……と反省したり。

学部3年生に共通する疑問・質問として、周りが大学院には行ったほうがいいと言うし、みんな行くようだけど、特に研究したいことがあるわけではないので、進学するかどうか迷っている、というお話。まあ、教員の立場としては、特に働きたい企業があったりするわけではないなら進学してもいいんじゃ?(2年間増えるので、それでインターンシップに行ったり、研究してみたりすれば、視野が広がる)と思わないでもないのだが、親御さんが進学に反対していたりすると、説得するのはそんな気軽な話でもないので、真剣に回答を考えないといけない。前期の間、もう少し考えてみよう。

午後には研究室の進捗報告。M1 の人たちは全員卒論でやっていた研究は修士では継続せず、仕切り直すようである。奨学金の返還免除を考えていたりすると、卒論が査読付き国際会議および論文誌に通る方が圧倒的に有利なのだけど、ネタ的に無理そうなネタもあるし、一度やる気がなくなったネタを引きずるのもしんどいので、最初のうちは色々試してみるのがいいと思う。

一方、研究室に2年以上いるのにまだ一度も対外発表をしていない人は、とりあえず1回はサーベイ、ベースラインの選定、提案手法の実装、評価実験、考察、といったサイクルを回してほしい。これが苦手な人が大学院に来る人の1/3くらいいるようで、最終的にはどうしてもできずに留年もしくは退学する人も1/10くらいいるので、早めに危機感を持ってもらいたいのである。「自分はできない」と認識している人は現在の実力がどうであれちゃんとやるので卒業できるのだが、「自分はできる」と根拠なく思っていて実際には着手しない、というのが一番困り、留年を繰り返して中退する人をしばしば見かけるし、学部までの勉強と勝手が違って正解が常にあるものではないので、自分の頭で考えて他人を説得する訓練をしてほしい。

夕方はリクルートテクノロジーズに移動して、Recruit Technologies Open Lab #01と題して自然言語処理の最近(2010年以降)の展開のお話をする。冒頭に書いたように、どういう人が聞きにくるのかはっきりしなかったので、深層学習に関する話を半分、それ以外を半分用意した。懇親会で聞いたりすると、形態素解析の話を聞きたい人が多かったようだが、形態素解析は研究として特に大きな新展開はないので、それは厳しかったかも……(開発的にはいろいろ動きはあったが)。

懇親会では Twitter 上でしか認識していない人たち何人と初めてお話したり、第三者経由でよく話を聞いていた人たちとお話できたり、非常によい出会いがあったが、うちの研究室の学生も4人来ていたので、他の人に紹介しようと思っていたのに、登壇者だったせいか次から次に人が来て、ついに帰るまで学生のところに行かれず。

とはいえ、学生たちもお互い固まらず積極的のいろんな人と話していたようで、すばらしい。そのうちどこかの勉強会で発表すると、発表を聞いた人の方から話しかけてくれるようになったりするので、お勧めである(笑)

研究室内の SNS でも「懇親会がメインです」と伝えてあったので、有効活用してくれたようでなにより。

しかしながら、これでしばらく外でトークするのはお休みかな……。