首都大で人材育成に取り組む

久しぶりに時間が取れたので、日記を書いたりする。日記を書けるのは週末・休日か、電車で移動中だけなのだが、最近車で移動する回数が多く、あまり時間が取れなかったのだ。

人工知能学会誌、「人工知能」の3月号が Amazon で購入可能になったようだ。(速攻で売り切れてしまったが)

人工知能 2014年 03月号 [雑誌]

人工知能 2014年 03月号 [雑誌]

これまでは学会員になるのがもっとも容易に読める方法だったが、これで号単位での購入が可能に。もっとも、毎号読むなら会員になったほうが安いので、興味がある人は会員になるとよい(宣伝)。

今号は第五世代コンピュータ特集、[twitter:@mhagiwara] さんによる海外インターンシップの勧め、[twitter:@Bollegala]さんによる自然言語処理における深層学習の記事(最後に展望が書いてあるのが興味深い)、など自然言語処理関係の学生さんには見どころ満載だと思うのだが、松本先生の記事がおもしろかった。

pp.128-129
 ICOTが計画段階であった頃,この分野に入ったばかりの若手研究者であった著者にでもプロジェクトの研究目標が高過ぎるのではないかという驚きがあった.渕氏に何気なくこの疑問を質問した際に返ってきたのは,研究計画は予算獲得の方便であり,目標は人材育成という明確なものだった.

 このような奇跡の研究環境を現在実現するのは不可能だと思うが,その何分の一でも実現したいという思いは,大学に異動して以来著者の中にずっと残っており,研究室運営のベースとなっている.
 第五世代プロジェクトを失敗と結論付けている資料をよく目にするが,少なくとも人材育成の視点からは,これほど成功したプロジェクトはほかには見当たらないのではなかろうか.

p.132
 このような影響力をもった第五世代コンピュータプロジェクトが,40代半ばの渕氏が立上げの中心となり,主として30代までの中堅研究者と20代からプロジェクトに参加した若手研究者によって進められたことは特筆に値する.形や規模は違っても,同様の研究環境を若手研究者が経験できる機会が実現されればと思う.

第五世代コンピュータが失敗というのは巷でよく言われていることだそうだが(そもそも自分には遠い昔の世界で、失敗と言われても成功と言われても実感がないのである)、松本先生からは繰り返し上記のようなことを聞いていた(「中の人」の意見なので、多少割り引く必要はあるだろうが)。ただ、そういう気持ちで研究室を運営してきたというのは初耳だった。自分も松本研みたいな夢のような環境を実現するのは NAIST 以外では不可能だと思うのだが、首都大でもその何分の一かでも実現したい、と思っていたところで、歴史を辿るとICOTに遡るのかぁ。

自分が首都大で実現したいことは割と明確で、研究の分かる技術者(あるいは技術の分かる研究者)の育成である。個々の研究テーマで取り組みたいことはいくつかあるのだが、結局やるかやらないか、どのようにやるか、は学生と一緒にやってみて初めて分かることであるし、学生から見て一番力がつくようなことができればなと思うのである。

あとは最先端の技術の社会還元。どのような方法で還元するのがよいか、まだよく分かっていないので、これは10年くらい試行錯誤する予定である(たぶん10年後に還元している内容は、いま自分が持っている知識ではなく、これから5年間くらいで研究して学生と一緒に発見する知識だと思うけど)。

松本研はあと6年だそうで、研究に適した環境としてはいまがピークなのだろうけど、残り5年を切ったところから少しずつ店じまいが始まるだろうし、自分の研究室はあと30年あるので、2020年くらいから2040年くらいまで(自分はいま35歳なので、40歳から60歳まで)ずっと最盛期にできればと思っている(笑)

そういえば[http://d.hatena.ne.jp/mamoruk/20110604/p1:title=第五世代コンピュータに関して以前も書いたことがある]のだが、リンク先に書いてある内容をすっかり忘れていて、今も企業の人が訪ねてきて無料のコンサルをして終わっている気がする……。

あと、研究室運営というものは何か分からず走ってきた1年であったが、自分が後輩や学生に繰り返し言ってきた「何をやるかではなく何をやらないかが大事」というのは、自分にもそのまま当てはまる。優先順位をきちんと意識しないとな〜。