研究も開発もオープンにするのがいちばん

朝から第5回DSIRNLP(データ構造と情報検索と自然言語処理)勉強会に参加するためお出かけ。

今回は参加条件が独特で、

今回に限り参加者同士がどんな技術・研究テーマに興味がある人なのか分かるようにしたいと思うので、以下の条件に"一つも合致しない方"は、簡単、かつ、短くて構いませんので発表資料を作ってきて下さい。

  • 過去にDSIRNLP・TokyoNLPでの発表経験がある
  • オープンソースなアプリケーション・データセットをネット上に無許可利用できる形で公開している
  • 著書が書店で売っている
  • ネット上に閲覧可能な発表の録画が公開されている
  • 査読あり論文を論文誌または国際学会に採択された経験がある
  • 開場提供をしてくださっているスマートニュース株式会社の社員である

というもの。あとで [twitter:@overlast] さんに聞いたら「いつも昼間の勉強会は100人くらい参加者がいるのに懇親会になると30人くらいになって、いなくなる70人がどういう人か知りたいので、なんらかの形で話を聞いてみたかった」とのことで、うまいこと考えるなぁ、なんて感心したりする。結局話した面々はほとんど「いつものメンバー」のような気がするが、ゆるふわ系の新年会かと思ったら、割とガチの勉強会になっていたりして(汗)

勉強会の内容は 第5回 データ構造と情報検索と言語処理勉強会 #DSIRNLP にまとめたし、動画もあるそうなのでそちらをご覧いただくとして、おもしろかったのは [twitter:@conditional] さんの「いまさら聞けない “モデル” の話」。スライドは「モデル」とは何か,について考えていたことを,DSIRNLPで発表してきましたでも公開されている。自然言語処理界隈を専門にする学生が「モデルって何?」という疑問を持つことは割と多いと思うが、そういう学生に「モデルってこういうものだよ」と暖かく教えてあげる、というトークである。NAIST にいたころ、自分も D2 くらいになってようやく「モデルとは何か」か腑に落ちた感があったので、自然言語処理の研究をするに当たってみんなもやもやと思っているところなのかなと思う。

ただ、まずこの話を理解する前提として(「データ構造」と)「アルゴリズム」を知り、「パラメータ」(と「最適化」)とは何か分かった上で、ようやく「モデル」の話に入れると思うのだが、多くの場合第一段階と第二段階がちゃんとクリアされていないように思うのである。もしかすると「モデルとは何か?」という疑問を持つことのできる学生は、実はそんなにいないんじゃないか、という気もする。

だとすると、恐らく自分が教員としてやるべき仕事の一つとして、「モデルって何?」という疑問を持つことのできるような学生を(別に首都大生でなくても、この日記の読者で、機械学習に興味あるがまだ手を出せていない人を)育てる、ということがあるように思うのである。(もしかすると、「そんな低いところを目指して意味があるのか」と言う人がいるかもしれないが、自分の感覚としては学部4年生で「モデルって何?」という疑問を持つ人はかなり勉強している人である印象)

あと、研究ガチの発表の中では、[twitter:@iwiwi] さんのCache-Oblivious データ構造入門 @DSIRNLP#5 が非常におもしろかった。毎度のことながら、@iwiwi さんのプレゼンテーションとスライドは神技的に分かりやすい。うちの学生にもこういうわくわくするデータ構造の話をもっと聞かせてあげたいのだが、どこまで遡って教えておけばこのあたりが理解できるようになるのか、よく分からない。学部2年生の前期に「データ構造とアルゴリズム」という授業があるのだが、15回あるこの授業の中でも「データ構造」を取り上げるのはたった2回で、かつ首都大の情報通信システムコースではこの授業以外にデータ構造を教える授業が存在しないようである。

自分が担当する3年前期の「情報理論」という授業でデータ圧縮について扱えるのだが、いまの学部3年生は「オートマトンと言語理論」の授業が情報通信コースにない(南大沢の授業では存在するらしい)ので、学生たちは文脈自由文法などあまり知らないようである。来年度の学部2年生からは文脈自由文法を教えることができるので、いまの1年生が3年生になる2年後に、ようやく文法圧縮を教えられるようになるだろう。一事が万事こんな感じで、それぞれの項目に依存関係があるのだよね……。

夜は懇親会に参加。久しぶりに[twitter:@sumi_1554]さんとお話しし、[twitter:@ikejiriryohei]さんを紹介してもらう。現在は教育工学の研究をしてらっしゃる@ikejiriryoheiさんも文3出身だそうで、話が通じる(笑)

そういえば@sumi_1554 さんと初めてお会いしたのは情報科学若手の会だったかと思うが、東京にいる情報系の学部生〜院生は情報科学若手の会2014冬の陣に参加するといいと思う。学部生が学外で開発や研究が好きな学生に出会える場所はそんなにないので、楽しめるんじゃないかな〜。あの雰囲気が合う合わないはあると思うが、一度も参加したことがないなら、一度くらいは参加してもいいんじゃないかな?と思うのであった。

2次会で[twitter:@sleepy_yoshi] さんに愛妻生活についてお伺いしていたら、自分的に相当ショッキングな出来事だったようで、家に帰ってからしばらく挙動不審だったらしい。妻によると、一晩寝ても回復していなかったようである……。