東京に引っ越してきたこともあり、「都立中高一貫校10校の真実」を読んでみた。
都立中高一貫校10校の真実 白鴎・両国・小石川・桜修館・武蔵・立川国際・富士・大泉・南多摩・三鷹・区立九段 (幻冬舎新書)
- 作者: 河合敦
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2013/11/29
- メディア: 新書
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長所は当然授業料が安く、学力的にも高い層が中学から入ってくるので、進学実績がそんなに悪くない、という点だが、短所もいくつかあり、高校から入ってくる層は倍率1倍を切っているので学力が高いわけではないとか、東大に入ったなんだと話題にはなっているが、中高一貫ではない他の都立高校の進学校と比べて進学実績が優れているわけではない(むしろ劣っている)、といった点である。
中高一貫校でありがちだが、別に教える内容が優れているわけではなく、選抜の段階で学力の高い生徒を入れ、大学受験になったら改めて塾なり予備校なりに通って勉強するから受かるのであって、学校の授業や補講だけでなんとかなるものではないし、学力検査を行わない(行ってはいけない)都立の中高一貫校で、選抜の段階で筆記試験に優れた生徒を選抜するのは難しいだろう。(個人的には、それでいいと思うのだが、大学進学実績の高い学校に子どもを入れたいと思う保護者からすると、ちょっと求めるものが違いそう)
興味深かったのは、中高一貫校は教員の負荷が半端じゃないので優秀な都立校教員からは敬遠されるという話。
都立高校の教員は、原則6年間しか同じ高校に在籍できない。とはいっても、「本校在勤務年数3.3年」というのはあまりに異常な数値だといえる。
都立高校の教員は、特別な事情がない限り、最低3年間、同じ学校で勤務しなくてはならない。すなわち、「本校在勤務年数3.3年」ということは、着任したとたん、すぐに嫌気がさして最短で異動したいと願っている教員が多くいることを示している。(p.196)
あと、高校籍の教員が中学籍の授業を押し付け合うとか、入学試験の問題を作りたくないので敬遠するとか、生々しい話ではあるが、大学の教員をしていると(あと学部生のいない大学院大学を経験していると)その気持ち、とてもよく分かる。自分の専門に近い話をしていればいいわけではないし。逆に中学籍の教員からすると、高校生の進路指導が大変なのだろうが、高校入試の進路指導をしなくてよい分、高校籍の教員よりは抵抗が少ないのかな。まあ、私立の中高一貫校ではみんなやっていることなのだから、中学生の授業を教えるのも、高校生の進路を指導するのも、できないわけはないと思うけど……
しかし3年はいなければならないが6年で出なければならない、というのは改めて考えると相当厳しい職場で(しかも特別支援学校、いわゆる教育困難校、進学校を点々と異動しなければならない)、大学教員の任期制がどうだとかこうだとかいうレベルの厳しさではないな。
もちろん都立校の教員という身分は保証されているという点では、任期が切れた先の保証がないよりは遥かに安定しているが、運よく任期の延長や無期転換、昇任人事でずっと職場を変わらず成果を挙げ続けることができる可能性がある大学教員に対し、必ず転勤になる、というのは積み重ねができないので、脱落する可能性が高くなりそうに思う。そういうのが嫌な人は、私立中高の教員になるのかもしれないが……。(でもこんなに転勤があるというだけで、優秀な教員が都立高校、ひいては都立中高一貫校に来ない、と言われても納得。)
あと「偏差値のカラクリ」というムックも購入して読んでみた。5年ごとの中学・高校・大学入試のいわゆる偏差値ランキングの変遷が載っていたりするので、最近の事情の勉強をしようかなと。このところ、全然興味なかったしな〜。(まあ、いまもぶっちゃけどの学校の入試の難易度がどうなろうが、どうだっていいのだが……)
- 作者: 日経BPヒット総合研究所
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2013/11/02
- メディア: ムック
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自分たちの子は、経済的に許す範囲内であれば、本人が行きたいところに行けばいいと思うので、近くて安くて楽しく通えるところがいいな。そういえば、今の家の学区にある都立中高一貫校は上記の新書のタイトルにもある都立武蔵(自分が通っていたのは私立武蔵中高で、男子校)で、一貫校になる前は私服だったのに、中高一貫校にしてから制服になったらしい。だから見慣れない制服の生徒を武蔵境駅周辺で見かけていたのか〜。納得。
中高大は男子校のほうが学力は伸びるというエントリも書いたが、学校を出てから必要とされることのうち、学力の占める割合は全然高くないし、できることなら共学の学校に行ってほしいものである。