4年ぶりの MSR 訪問、変わっていたものと変わらないもの

昨日歩き過ぎたので早めに起きられず (しかしいつも通り日本時間の夜9時に起きてしまう習性)、朝ご飯を食べつつ慌ただしくスライドを準備することに……

朝9時半にホテルで松本先生と @neubig さんと合流し、タクシーで Microsoft Research (MSR) へ。MSR は Microsoft のメインキャンパスから少し離れたところにある (歩いたら40分くらいかかり、社員向けの無料バスが出ているくらい) のだが、ビルの名前を言っても通じないだろうと思っていたら、タクシーのドライバーはビル名だけ言って通じたようだ。すごい。

タクシーはフリーウェイである SR 520 を通って一路 MSR のある Redmond へ。この道、夕方の時間帯は異常に混んでにっちもさっちも行かなくなるのを思い出す。午前のこの時間帯は混まないと言われていたが、どうもなにかあったようで、1人しか乗っていない車のレーンは大渋滞になっていた。我々はドライバーの人を入れて4人だったので、複数人乗っていれば走れる Carpool レーンが使えたので、だいぶショートカットできたが……。

道路の上からワシントン湖を見渡して気持ちいい。Bill Gates の家のパーティに行ったことがあるのだが、Bill Gates の家はちょうどこのワシントン湖の湖岸にある。家の中をバスで移動するくらいなのだが、とにかく広い。2007年は ICML がオレゴンであったんだった。ICML がこのエリアで開催されているときシアトルに縁があるらしい (笑)

さて、MSR で自分がインターンシップをしていた2007年当時と比べて、建物が新しい場所に移動していると聞いていたので楽しみにしていたが、確かにいろいろと新しい。すごい。前の建物は NAIST の研究科棟と同じかそれよりもしょぼかったので、感動。

午前中は Hisami さんと @tettsyun くんとディスカッション。UniDic の話から Microsoft構文解析器の話、そして並列句の話になり、松本先生が ChaKi を起動して日本語コーパスの白書のデータについて語りだす (笑)

@shuyo さんの「はじめての生成文法・後編」 (噛み砕いて書かれていて勉強になるのでお勧め) でも自然言語処理をやっている人があまり言語学に興味ないのでは、という話が出てきたが、機械学習が流行してから自然言語処理に興味を持った人たちは確かに言語学にあまり興味がないのかも。それ以前から細々とやっていた人たちは当然言語学についてもたくさん勉強しているし、Hisami さんや自分のようにむしろ言語学をもともとやっていて自然言語処理に来た人たちは逆に人手で解析木 (解析器、ではない (笑) )を書いたり文法作ったりするほうが親近感があるのだが……

ランチは@chris_brockett さんに引率されて社員食堂へ。XBox などのチームがいるビルのほうへ来たのだが、食堂だけで巨大すぎる。外の人が入れるスペースだけで高の原のイオン並みのスペースがあるような……。1Fだけでなく2Fもずっと社員食堂!1Fには郵便局や銀行、スポーツ用品店まである (笑) たまたま MSR にいらしていた辻井先生や @Yuki_arase さんともランチご一緒する。ランチが終わったとき辻井先生が財布を忘れていたのだが、ときどき忘れてしまうらしい (笑)

昼から @neubig さん、自分、そして松本先生による、それぞれ30分のトーク。思いがけないところで @yukino さんとお初にお目にかかったり。10日間アメリカにいて思ったが、生活に慣れてくるとここでなにができるかって考えるな〜。せっかく日本にいたら体験できない環境にいるので、なにか形に残ることをしよう、形に残らないでも日本にいる誰かの刺激になるようなことをしよう、ということを考えていたのを思い出したり。

最近 (研究以外の場所で依頼されることはままあるのだが) 研究者向けのトークもしてなくて、松本先生と2人でトークの時間の枠の押し付け合いをしていた (苦笑) のだが、自分のトークも思ったよりたくさん質疑・コメント・フィードバックがあってよかった。いろいろと帰ってからやることが増えてありがたい。松本先生も @neubig さんと自分に「君らの発表で1時間半時間切れになって自分の発表がなくなったほうがありがたい」と冗談でおっしゃっていた割には普通にトークされていて、あれだけの雑用の合間によく準備されていたなぁとびっくり。

午後はいろんな人とミーティングを組んでいただいたので、いくつかデモを見せてもらったり、ディスカッションしたりなど。Patrick Pantel さんは去年から MSR に転職し、いつも super-busy な人なのだが、少しだけ時間を空けてもらえたので、ミーティングというわけではないがお互いの近況報告とかなんだとか。Appleインターンをしていたときも Yahoo! Labs の (いまは解散したが) マイニンググループの中の人たちを紹介してくれたり、その当時やっていた研究の話をしてくれたり (あるいはこちらの話をしたり)、ときどきそれぞれの数年分の進捗をするのは楽しいものである。

NAIST は海外の研究者の人を博士論文の審査委員に加えることができて、博士論文の中間発表と最終審査 (あるいは公聴会) の2回奈良に呼ぶ旅費・宿泊費・謝金も出してもらえるというユニークな制度があり、この制度を活用して Pantel さんに自分の博士論文の審査委員になってもらって2回奈良に来てもらったのだが、学位を取得してからもこうやってアカデミアの中でつながりを続けていられるというのは嬉しいかぎり。

そういうわけで、NAIST にはぜひこの制度を続けていってもらいたいと思うし、博士課程の学生のみなさんにはぜひ活用していただきたいものである。自分も博士論文の審査委員をお願いするまで Pantel さんには1回しかお会いしたことがなかったが、メールで何回かやりとりしたら快諾してもらえたので、せっかくの機会だから、いつも論文を読んでいて個人的に尊敬する人や、M2-D1 のうちに国際会議で会った人など、ダメ元でもコンタクトしてみるとよいと思う (依頼する前に指導教員に相談して、旅費のサポートしてもらえるか聞いてみた方がいいが)。

研究室を運営する立場にある教授や准教授のような立場の人よりは、助教ポスドクくらいの立場の人のほうが、時間を空けて奈良に来てもらいやすいし、研究についての突っ込んだ議論ができるので、ものすごい勢いで論文を書きまくっている若手の研究者の人にお願いするのが個人的なお勧めである。(とはいえ松本先生もときどき博士論文の審査委員を引き受けて1週間くらい海外に出かけることがあるが……)

夜は Hisami さんが集めてくれた自然言語処理機械翻訳グループの方々とディナー。これがアメリカで最後のディナーかと思うと感慨もひとしおである。Chris が辻井先生のことを "Professor Tsujii" と呼んでいたのがおもしろかった (笑) 今年から辻井先生は東大を退職されて北京の Microsoft Research, Asia に転職されたので、もはや「先生」ではないし、アメリカでは名字でなくファーストネームで呼び合うのが普通なのだが、辻井先生だけは世界中の人からも「辻井先生」なのだろう。東大の駒場科学史・科学哲学研究室の基礎を作られた大森先生

知の構築とその呪縛 (ちくま学芸文庫)

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も、ミシガン大学に留学していたとき、本人から醸し出される雰囲気によってアメリカでもファーストネームではなくラストネームで呼ばれていた (Mr. Omori だったか Dr. Omori だったかあるいは Prof. Omori だったか忘れたが) というのをどこか (たぶん「大森荘蔵著作集」の月報) で読んだ記憶があるのだが、そういう実例を初めて見た。

帰りは日本に帰国する組を Chris が送ってくれたので、ありがたい。いろいろとホスト && オーガナイズしてくださった Hisami さん、どうもありがとうございました〜 今週は MSR の近くで ICML もあるので、グループのみなさんも信じがたいくらい忙しい中、みなさん時間を割いてもらってありがとうございました!

はてさて、今回の出張の全日程がようやく終わり、肩の荷が下りた。部屋に着いたのはちょうど午後10時だったが、相当ぐったり。やはりホテルにずっと滞在すると落ち着かないので、早く家に帰って自分の布団で寝たい。