留学したあとの負のスパイラルを乗り越える

自分が何回か海外で数ヶ月ずつ滞在しているので思うのだが、言語が不自由な土地に住む場合、最初の数ヶ月で現地の友人を作って適応しないと、ずっと引きこもってインターネットで本国のページ見て本国の友人とチャットする毎日になってしまうので、その国に行って最初の3ヶ月がいちばん重要で、ちゃんとケアしてあげなければいけないと思う。これはどれだけ本国で自信のあった人でも陥る可能性があることで、本人の性格も関係するのだが、とにかく最初に負のスパイラルに入らないことが大事。

負のスパイラルに入ってしまったら、それはあなたのせいではなく、誰でもそうなる可能性があるので、必要以上に落ち込まないこと。能力がないからでもなく、周囲が自分に冷たいからでもなく、誰も自分のことを相手にしてくれないからでもなく、単にちょっとボタンを掛け違えてしまっただけ。一度落ち着いて(信頼できる本国の人に弱音を吐いてみるのでもいいし、「今日はとことん泣くぞ!」と決めて数時間涙が出尽くすまで泣くのでもいい。意気込んで来たし弱音を吐くのはみっともない、と思う人は、自分の不安や不満をノートに書き出すのでもいい。自分一人でどうしようもない話のこともあるので、本来カウンセラーの力を借りるべきなのだろうが、言葉の壁があるのが悩みの種)、晴れた日の午後にでもちょっと出かけてコーヒーを飲みながら甘いものを食べてみると、治ったりする。もしくは、朝起きて洗濯してお日さまの下に干して、暖かいうちに取り込むのもいい(場所によっては乾燥機しか使えないが)。お日さまのにおいをたっぷり吸い込んだ洗濯物って、涙が出てくるようななにかが洗われるような、そういうふしぎな効果がある。人によって気持ちのリセットの仕方って違うので難しいのだけど、だいじなことは「リセットしよう」と思うきもちで、変わろうと思っていれば、あとはきっかけがあれば自分は変われるものだから、自分にきっかけを与えようとすれば、そのうち道は開けると思う(自分のリセットの仕方、一度発見したら、覚えておくと便利。自己暗示のようなものだけど、自分で気持ちを切り替えられるようになる)。

もっとも、最初から負のスパイラルに入らないことも重要で、できれば新しい土地に行ったらそれまでの先入観は全部捨てて、なにかイベントがあったら(面倒くさかったり、気後れしたりしても)とにかく出て行くことにして、まず一人でもいいので友人を作ること。そして、オンラインとオフラインを両方活用して、対面とそれ以外両方で友人を増やして行くこと。こうして最初のスタートを乗り切らないと、ずっと鬱々と過ごして、ルームシェアしていても自分の部屋に直行して全然出てこないヒキコモリになったりしてしまう。日本に来る留学生だったら、知り合った人と帰ったその日に Mixi とか Twitter とかでもつながってみたり、アメリカに行く日本人だったら Facebook とか LinkedIn を活用して同じように知り合った人とコネクションを作って、リアルに知っている人とネットワークでもつながるようにしておくと、なにか集まりがあるとき声をかけてもらいやすくなる(し、なにかあることを知りやすいので参加しやすい)ので、だんだん居心地がよくなっていくと思う。

留学って、昔のように船しかなくて、死ぬ覚悟で行かなければならなかったころとは違い、割と簡単に行けるようになってしまったし、インターネットの発達によって本国の友人や家族たちとつながり続けることができるようになってしまったので、逆に留学先に適応しにくくなってしまう、という問題もある。かといって、インターネットのせいだから使わなければいいんだ、というのは本末転倒で、上に書いたように、技術のいい面と依存しすぎるとよくない面を理解して、現地にとけ込むためにうまく使いこなせばいいんだと思う。

まだ本人が好きで留学して鬱々とするなら「自己責任」と一蹴することもできるのだが、深刻なケースでは旦那についてくる奥さんなんかがこれにはまると本当につらく、毎日旦那を見送ってからインターネットと母語のケーブルテレビ(YouTube)で過ごし、現地語での生活を避け、旦那が帰って来たら堰を切ったように母語で話し始める、なんて状態になってしまいがちだし、一度そうなるとなかなか変えるきっかけがつかみにくくなってしまうので、重々注意したほうがいいように感じる。一番気の毒なのは当然ついてくる方で、ついてきてもらう方は日中仕事があるので現地語も話すし、仕事でつらいこともあっても楽しいこともあるし、まだましなのだが、ついてくる方は場合によっては本国での仕事を辞めてついてきたのに仕事もできず、ヒキコモリ生活になったりして、こんなことをしていてはいけないという気持ちもあるのに、それができないという苦悩もあって、自分のことを否定して死にたくなったりしてしまう。

解決策としては、できるだけ余裕のある側(たとえば旦那)が、会社の集まりに奥さんを連れて行ってあげるとか、昼間に少しお金がかかっても仕方ないから学校に通ってもらうとか、もしくは休みの日はドライブに連れて行ってあげるとか。住む場所(住む地域、という意味でも、職場の近くのどこに住むか、という意味でも)は実は重要で、歩いて行ける場所にカフェやウィンドウショッピングができるところがある、というのでもいい。外に出たい、と思えるところでないと引きこもる可能性が一気に上がるし、住む場所によっては足(=車)がないとどこにも行けないのである。

日本から海外に留学する人には負のスパイラルに入って失意のまま帰ってきたりしてほしくないし、逆に海外から日本に来る留学生には、日本の生活に適応できず日本が嫌いになって(もしくは日本での生活が嫌な思い出になって)帰ったりしてほしくない、と思っているので、できるだけどちらの人たちも手助けしてあげたい。日本に来た留学生も、ちょうどそういうケアが必要な時期に自分がインターンシップに行ってしまったりして、十分面倒を見てあげられなかったりして、あとで後悔することもあるのだが、できるだけ努力したいし、同じように感じる人(特に日本人)をもっと増やしたいとも思う。留学生がどれくらいのストレスにさらされるのかは、やっぱり行ってみるしかないと思うので、そういう意味でも海外への交換留学や長期のインターンシップをみなさんにお勧めするのであった。もっと「ふつうの人」が留学していいと思うし、そこで体験した経験があると優しくなれると思うし……

(コメントを読んで追記)

現地人の友人が必要、というように読めてしまうのだが、言いたいのは現地に住んでいる人が友人に必要、ということで、別にそれが日本人であってもいい(海外から日本に来た人なら、自分の母国から留学してきている人)。なぜ現地にいる人が重要かというと、現地でどこに行けばなにがあるのか知っているし、現地の他の友人を知っているから。絶対日本人以外の友人ばかり作らないといけない、ということではないし、そう考える必要はない(自分はシドニー大学にいたとき「日本人以外の友人を作る」と意気込んでいたが、あまり意味がないことに気がついて、MS にいたときや Apple にいたときは日本人の友人も積極的に作った。シアトルでは日本人は上司以外ほとんど会わなかったので、一人もできなかったが……)

あと「引きこもりが合っている人もいる」というのもごもっともで、別に絶対友人を作る必要はないのだが、作っておいて連絡を取らないのは可能でも、友人を最初に作りそびれてあとから「必要だった」と思っても遅いし、もしそうなったら深刻な人生の危機(鬱になったことがなかったり、鬱の人が身の回りにいないと分からないのかもしれないが)ので、安全側に倒して最初は友人を作っておいた方がいい、というのがこのエントリの趣旨。一度鬱になると精神は不可逆なので、立ち直るのに非常に苦労するし、予防できるなら最初から予防しておくべきだと思う。作ってみてから合わなかったら引きこもればいいわけで……。(しかし工学系の大学院にいると、学校来ないで引きこもられても困るわけだが……)

結論めいたものはないのだが、以下今日の日記。

遠方よりご夫婦で松本研に来客。博士論文・修士論文提出済みのみなさんで歓待。松本先生がアルション登美ケ丘店(ランチバイキング)に連れて行ってくれたので、いろいろ食べる。予約してなかったそうでテラス席になったが、他にお客さんもいなかったので、この時期少し寒いことを除けばよかったかも? 料理もいろいろとバリエーションがあり、確かにこれ昼はお得かもしれず。

午後は shuya-a さんや alexander-s さんと少し話してみる。来週の学位記授与式(卒業式)には出ないそうで、もう学位論文も全部出したらしい。早い。manab-ki くんは今日から印刷の準備をするらしく、背表紙になりそうな紙を探していたが……(自分は nozomi-k さんから引き継いだ紙を持っていたのだが、公聴会用に博士論文のドラフトを作ったときなくなってしまった)。

午後は勉強会。いつになく3時間。内容的には大変参考になった。昔はよく分からなかった数式だが、勘所が分かってくると改善できそうなところも理解できる……。逆に言うとこれ分からないで聞いているのはつらいだろうなー。M1 のとき @takahi_i さんの話聞いて自分も全く分からなかったので、気持ちは分からないでもない……。

夜は @yotarow くん、@Wildkaze くんらと回転寿司を食べに行く。寿司は好きなので毎日でもいい(と言ったら言い過ぎか)。当初8人で行けるレストランってどこだろう、と考えて思いつかなかったが、6人だったらちょうど入ることができた。ぴったりでよかった。しかしちょっと食べ過ぎた。

深夜レンタカーで西に旅立つ manab-ki くんを見送る。やばい、ちょっと寂しいかも。来週また卒業式&追いコンで会うのだけれども。