失敗することを恐れないで挑戦してみよう

自分は学部3年生のとき AIKOM (Study Abroad in Komaba) という東大の交換留学プログラムで1年間シドニー大学に行ったことをきっかけに、いろいろと人生観が変わったので、東大自体にはそんなに思い入れはないのだが、AIKOM には大変感謝している。今日はその AIKOM 経由で、東大の学生団体 (東大ドリームネット) が主催する留学関係のイベントに留学経験者として招かれたので参加。

ちょっと早く着いたので、懐かしの情報教育研究棟にお邪魔する。学部2年生から卒業するまでの間ずっと、ここで「相談員」としてアルバイトしていたのである。基本的には学部1年生を中心としたユーザサポート業務なのだが、自分の勤務時間でない時間でも先輩相談員の方々の隣に坐っていると、知らない Unix の使い方やらなにやらを教えてもらうことができて、とても勉強になったものである。

自分自身、大学に入ってしばらく、環境に適応することができずに苦しんだものであるが (中高からの友人や予備校時代の友人と話しているほうが楽しかったし、大学でも気の置けない友人はできたのだが、ほとんどの授業は期待したほどおもしろくないし、かといって試験だけ出て単位を取ったりすることができるような性格でもないのでつらかった)、毎年辞めたいと思ってそれを踏みとどまることができたのは、この相談員の先輩・友人たちがいてくれたおかげだし、その後人生を前向きに生きることができるようになったのは AIKOM のおかげなので、ここに来ると「よく辞めずに卒業できたなぁ」としみじみ思うのである。

招かれたのは40分のグループディスカッションを2つ、の2時間ほど。留学経験者控え室に入ると、どうやら半分以上の人は東大ドリームネット関係の OB/OG ですでに知り合いらしく、ものすごい勢いで近況報告や情報交換をしていて、AIKOM 出身者は激しいアウェイ感を感じる (そもそも AIKOM で留学していた人は、同窓会もないのでお互いのことをほとんど知らない)。そもそも内輪の集まりなら AIKOM 出身者を呼ばないでほしいと思ったが、どうも東大ドリームネットMBA 留学の人ばかりで、学部時代に留学した経験のある人が少ないそうで AIKOM に話が来た、という経緯があるので、仕方ないのかもしれない。

グループディスカッションでは主に1-2年生、文理はバラバラのグループに分かれ、留学経験者 (社会人、いわゆる文系1人理系1人) 2人、学生4-5名で、前半は経験者が自分の留学体験について話し、学生がそれに質問する、というディスカッションと、後半はグループを変えて今度は学生がどうしていま留学したいのか、自分の考えているメリットとデメリット、特にいま不安に思っていることはなにか、というのを話してもらい、留学経験者がそれにアドバイスする、というもの。

こういう場所があるということ自体はよいのだが、話を聞いているとどうも理系の留学と文系の留学は相当違うので、これは混ぜないでグループを別にしてやったほうがいいのではなかろうか。学部を出た後の留学も、文系では応募元が出す (社費や公費、あるいは自腹) で行くのに対し、理系では受け入れ先の大学が出す、というところからして違う。そして在学中も感じていた東大の文系の「トップ以外に行かない人はダメ」というような考え方はやはり自分は全然受け付けないな、ということを再確認し、この大学を卒業することができて本当によかったな、と思うのであった。エリートはこういうキャリアで、ここから外れた人は落伍者、みたいに考える人が東大の文系 (特に文1と文2) では少なくなく、入学してからそういう考えの人にしょっちゅう出会ったので、どんどん大学に来る足が遠のいてしまったのであった。

最後のまとめのときある学生が「外資系の企業に入って海外赴任したいです」と言ったのに対し、就職してからコロンビア大学MBA を取った人がすかさず「これは勘違いしている学生がすごく多いのでこれだけは覚えて帰ってほしいけど、海外赴任できるのは外資系の会社じゃなくて、日本企業かキャリア公務員、あるいは日銀みたいなところ。海外の会社で日本に支社がある場合の日本の会社の役割は、本社のブランチで、本社から人が日本に来てローカライズしたりするためにあるので、その役割を考えたら海外赴任なんてする意味がないでしょ。」とツッコミを入れていたのがおもしろかった。

1年生や2年生のうちからこういうイベントに来るのは、学生の人たちはとても真面目だと思うのだが、失敗するのが不安で来ているような感じに見受けられるので、もっと失敗しても全然かまわないんだよ、ということを伝えようとしたのだが、伝わったかなぁ。