午前中は進捗報告。就職活動中の学生たちはリクルートスーツで報告してくれるが、就職もスムーズに決まり、研究もうまくいけばよいのだけど……。
理系教育を破壊する就活長期化という記事で、以下の意見に同感である。
理系の教育は文系とはまったく異なる。理系では、4年生の時に行う卒業研究が大学教育の中で非常に大きな意味を持っており、私は1〜3年までの3年間と、卒業研究の1年間は同程度の価値を持つと考えている。そうでなければ理系の学費は文系と同じで良い。
(中略)
さらに大事なことは、理系教育では大学院教育が非常に重要であるということだ。レベルの高い大学の理系学部での大学院進学率は60〜80%であり、理系では大学院進学率がそのレベルを決めると言っても過言ではない。これが文系とまったく異なる点である。
実際自分が留学していたオーストラリアの大学では人文系の学部と理工系の学部は修業年限が違ったし、大学院に行く人はさらに honors degree といって1年余分に勉強する必要があったりして、結局そういうふうにするのがいいんじゃないかと思う。学士号を取得したら大学院に進学せず就職する人にまで卒業論文を書かせなくていいし、そもそも3年までで単位を取り終えて4年は卒論だけなら、卒業論文を書かないコースの学生は3年で卒業すればいいんじゃなかろうか?
進捗報告は順調に時間が増えてきて(議論する内容が高度になってきている)、5人いると2時間を超えたりして(今日は6人で3時間)、週2回ではなく週3回にしなくてはいけないかも、と思ったりする(時間に余裕があればもっと学生同士でも議論ができるのだが、いまは報告と TODO の確認だけで上記の時間になってしまう)。そもそも時間割で空いているところがないのだが、大学院の授業と重なるのは諦めるしかないか……。
昼からはコース会議。会議資料が電子化され、とても楽になった。5月はあまり特に紛糾する議題もないので、2時間弱で終わる。大学院入試の筆記試験免除(推薦入試)の出願が5月25日に迫っているので、希望者と面談をしておかなければいけないのだが、来週時間あるかな……。
合間合間の時間で学会(研究会)の仕事をしたりメールの返事を書いたりするのだが、平均して数日遅れになってしまっている。学校でなければできないことを優先的に学校でやることにしているのだが、家でもできることは家でやる時間を確保できないと進まないので、家でもできる仕事に遅延が発生しがちなのである(1日あたり1時間程度は確保できるので、全く進まないわけではないが)。しかし、10時に大学に来て17時に帰る生活だと、学校でなければできない仕事をやっているだけで、17時になってしまう。ワークライフバランス、難しいものである。自分の感覚では、大学にいる時間と仕事のできる分量は以下のような関係がある。
- 週60時間=1日12時間: やりたいこと(研究、教育、その他)は全部でき、かつダラダラやる(合間に雑談したり)余裕がある。
- 週55時間=1日11時間: やりたいことは全部できる。
- 週50時間=1日10時間: 必要最小限の仕事はできるが、やりたいことの一つに十分な時間を使うことができない。(例: 筆頭著者として実験し、論文を書く)
- 週45時間=1日9時間: 必要最小限の仕事はできるが、やりたいことの二つに十分な時間を使うことができない。(例: 独自の教科書を書くくらいの勢いで授業をする)
- 週40時間=1日8時間: 必要最小限の仕事はできるが、やりたいこと全てに十分な時間を使うことができない。(例: 渾身の研究計画書を書く)
- 週35時間=1日7時間: 必要最小限の仕事もできない。
週40時間あれば(学会運営に関する仕事や事務書類作成など含めて最低限の)仕事ができるといえばできるのだが、楽しい部分は余裕がないとできないのである。そういう意味では「やりたいことを仕事にできていいね」というのは全くその通りであるが、週40時間の仕事を超えたところに楽しいところが待っているので、好き嫌いに関わらず存在する業務をした上で、(趣味の)研究をしても働いたことになる、というのが正確なところであろう。つまり、仕事を長時間すればするほど楽しいことのできる時間が増える、という構造になっているので、大学教員にはたくさん仕事をする人が多いのではないかと……。
夕方は研究室に行き、実装に関する相談を受ける。再帰を使えば簡単に書けるので、だが難しいようだ。再帰概念はコンピュータサイエンスならではで、去年 SICP 勉強会でたくさんやったのだが、M1 の授業と重なっていたので、コンピュータサイエンスの基礎知識が抜けている人も1/3ほどいるのである。いまの学部4年生以降は、自分の授業で再帰の概念や動的計画法を学んでいるのだが……。いずれにせよ、大学院から研究室に来る人もいるし、学部でやっているから研究室でやらなくてよい、というわけでもないのだけど。