クソゲーを作るだけでも一苦労

朝は晴れていたが、昨日雨で自転車を置いてきてしまったので、バスと徒歩で駅まで。駅の駐輪場で ryuta-k くん(NAIST 松本研の後輩)と会う。物理的に住んでいるところが直線距離で100mくらいしか離れていないので、どこかで会うだろうと思っていたが、東京に来て3年間でばったり出くわすのはこれが2回目である。

自分のほうが通勤時間帯が若干(10分ほど)早いので、自分が少し遅く出たときくらいしかすれ違わないだろうけど、奈良で初めて会った人がこんな感じでたまたま近くにいるのは不思議な感覚である。

いつも通勤のお供に iPad mini を持ち歩いていて、通勤電車は行きも帰りもガラガラなので日記を書いたりしているのだが(Twitter だけなら iPhone でもいいが、それなりの分量を書くには iPhone は厳しい)、たまたま今日は家に忘れてきてしまったので、先日献本いただいた「できる研究者の論文生産術」を読む。

できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)

できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)

大事なのは、まず執筆するためのスケジュールを決めて、会議などと同様にプライオリティを高くし、先に予定として時間を確保する、ということで、耳の痛い話である。どうしても時間を確保する相手がいない仕事は優先順位が下がってしまう。論文なら書くのがそんなにつらくないのは、共著者とのやりとりが発生するので自動的に優先順位が上がるからかな、と思ったりする(が、原稿をチェックしてくれる人がいても必ずしも執筆の優先順位が上がらないので、違うかもしれない)。

Microsoft Research のときメンターをしてくれた Hisami さんが、時間を空けてあるとミーティングを入れられてしまうから、先に時間だけ確保して予定として入れてブロックしておく、とおっしゃっていて、それは賢い、と思って一時期実践してみたのだが、どうも自分のほうがやり方には合わないようで挫折してしまった。

逆に、どれだけ長くとも1日で終わるくらいの粒度まで仕事をブレイクダウンし、TODO としてその日ごとに書き出しておいて、終わったら消していく、というやり方は自分に合っているようで、これは大学院に入ってから現在まで割と続いている。結局1日単位やせいぜい週単位での時間のスケジューリングくらいなら自分は管理できるが、週を超える時間のやりくりができない、ということなのだろう。数ヶ月インターンシップに行く、とか、半年勉強会をやる、というような形で強制的に時間を確保すると経験的にうまくいくのだが、毎週最低1時間は使う、というようになっていないとモチベーションが維持できず、勢いやる気になったとき一気呵成にやるモデルに傾いてしまうのかもしれない。

お昼は研究室に行ってご飯を食べる。ランチミーティングをできるかと思ったが、先週研究室メンバーが揃ってお昼を食べてみて、20人が同時にご飯を食べつつ話すというようなスタイルが不可能であることが判明したので(10人くらいなら可能だった……)、とりあえず小町は少なくともその時間帯は学生室でご飯を食べる、ということにしたのであった。

現在空いている机は存在せず、学生室のリフレッシュコーナーも最大10人くらいしか座れないので(みんなスマブラやったりしてくつろいでいる)、まだ研究室に来ていない人や、リフレッシュコーナーでまったりしている人の座席を間借りしたりする。いま情報通信システムコースでもっとも学生数が多い研究室の一つだと思うが、1教員に割り当てられている学生室のスペースを考えると、これ以上増えないように調整しないといけなさそうである(学部4年生と修士1年生の新入生を合わせると、去年が7人、今年が8人なのだが、8人が限界っぽい)。

研究会では今年度新たにうちの研究室に加わった博士後期課程の学生2名が、これまでの研究のオーバービューと、博士後期課程の研究プランについて紹介してくれる。2人とも言語教育支援を研究テーマとしているし、新入生も巻き込んで読解支援の勉強会も立ち上げてくれたりしているので、言語教育支援が研究室の柱の一つになればいいなと考えている。

研究会の後半は、M2 の学生が研究紹介および論文紹介をしてくれる。

  • Daniele Vannella, David Jurgens, Daniele Scarfini, Domenico Toscani and Roberto Navigli. Validating and Extending Semantic Knowledge Bases using Video Games with a Purpose. ACL 2014.

シューティングゲームロールプレイングゲームのようなゲームを用いたゲーミフィケーションで言語資源を作成する、という研究で、去年自分が紹介した COLING 論文と同様の話である。ゲーミフィケーションの研究って、それで有用な知識が抽出できることに異論はないのだが、クラウドソーシングと比べてお金と質どうなのよ、という話と、そもそも普通に専門家がつけたほうがお金はかかっても速くて質が高いんじゃないか、という話があって、当然どの論文もそれらと比較はしているのだが、「このゲームは研究室の学生に作らせたからコストは0である」なんてしれっと書いてあって、それってどうなの、と思ったりする。

結局アノテーションを目的としたゲームにしてしまうとゲームとしての完成度が高くないゲームができてしまう(ことが多い)のが一番の問題で、すでに流行ったゲームのログを活用して有用な知識が得られるほうが、自分の好みのスタイルである。プレイヤーとしてはすぐ「これはクソゲー」などと言えるのだが、自分で作るとクソゲーレベルのものすら全然作れない、というのが根本的な問題でもあるが……。

保育園のお迎えのために17時で退出しなければならなかったが、クリティークも本格的でけっこうツッコミがあり、楽しめた。これくらい批判的に論文が読めると、いい研究ができるだろうなぁ。