インターンに行こうか迷っている人に対して一言

MSR インターンシップの滞在記がおもしろい。毎回 Microsoft Research (MSR) でインターンシップをしている1人にインタビューして、インターンに来たきっかけや、大学での研究との関連性、研究所と大学との違いなどについて話してもらう、というもの。

今年松本研からも両手で数えるくらいインターンシップに出かけているが、アメリカの工学系の大学では夏休みはインターンシップで研究室にいないのは普通だし、うちの研究室では9割以上の学生がいない、と確か CMU 出身の学生から聞いたこともあり、せっかく研究と応用が近い分野にいるのだから、機会があれば違う環境でしばらく過ごしてみていいんじゃないかと思う。

下からいくつかピックアップして紹介すると、いちばん名文なのは5回目の相川さん

インターンに来たきっかけ、目的
目的の前に、自分がどういう人間なのかから書いていきたいと思います。まず衝撃告白から。僕は、国際学会はおろか国内の研究会にすら論文を投稿したことがありません。理由は、検索スパムにしかならないような論文を世に出しても仕方がないと思っていたからです。もし自分が今まで誰もできなかったようなことを成し遂げ、皆がそれを知りたくて仕方がないようなものができたときだけ、その方法を書けばそれでいいだろうと思っていました。
一方、僕はプログラムを書くのは好きで、ACM-ICPCというプログラミングコンテストに出たり、コーディングを伴うバイトを継続的にやっていたりしました。こういうエンジニアリング的な領域は結果がでたら割とすぐに評価されるので、大学での研究の方が疎かになることもしばしばでした。それなら、研究やらずにそういう道に進めばいいじゃんと思われるかもしれませんが、僕は、SI業界に良くあるような他人に言われてコードを書くことは大っ嫌いですし、やれば書けることがわかっている自明なコーディングをするのもあまり好きではありませんでした。逆に面白い論文を読んで自分でも試してみるようなプログラミングの方が好きだったんですね。簡単に言えば、論文を書くよりコードを書くのが好きな研究者といったところでしょうか。
そんな自分が、MSRAのようなしっかり研究ができる場所に行こうと考えたのは、「大学院という道を選択した自分が全く研究成果をあげないのはやはり良くない。ただ今のままやっていても自分は変わらないだろうから、環境を変えたい。」と思ったからです。なぜそんなことを思うようになったかは自分でも曖昧なのですが、以下のような理由はあります。

  • 就職活動という自分が行きたいのが技術職なのか研究職なのか悩む機会があったこと。
  • 親にお金を出してもらって、素直に感謝するようになったこと。
  • 最初に挙げた理由も、実力がない自分への言い訳にしか過ぎないことも分かっていたこと。
  • 実際に自分の尊敬するエンジニアの方々の多くは優れた研究成果も出していること。

こういった成り行きで応募したので、MSRAインターンに来た目的は、論文を継続してTop Conferenceに通すような人は、どのように研究をするのか知り、自分もそれをできるようになることでした。

よく悩んでこういう道に辿り着いているというのは素敵なことだなと思う。大学院に来るというのはやはり研究をするために来るのであり、研究以外してはいけないという訳ではないが、研究(=論文を書く、産みの苦しみ)に耐えられない(と自分で思う)人はいろいろ逡巡するわけである。

そういう悩みはどのインターンにも共通していて、たとえば2回目の小山田さんのインタビュー。

インターンに行こうか迷っている人に対して一言
死ぬほど迷った方が良いと思います。人によって何が基準になるか異なると思いますが、インターンを経験した人に話を聞いてみてはどうでしょうか。やはり経験者にしか分からない事は多いと思うので、学会会場等で直接話したりメールで聞いたりすれば、多少は迷いのタネが無くなるかもしれません。MSRAの研究者に直接メールを送る学生もいるようですが、どちらにせよ、インターンについて知っている人に話を聞くと良いかもしれません。
僕自身、インターンに応募しようかどうか多少悩みました。松下さんの下で学びたいという思いはあったものの、松下さんが行っている研究と僕が大学で行っている研究はだいぶ違うので、果たして自分の実力が通用するのかという不安はありました。こっちに来てからは出来るか出来ないかではなくやるしかないという感じで研究をしていて、ようやく投稿までもう少しという段階にきました。メンターやグループによって違いはあると思いますが、研究に集中出来る環境はあるので、死ぬ気で頑張れば何とかなるのかなぁと思います。

大学でやっている研究とインターンでやる内容がだいぶ違うというのはよくあることだが、そこまで大学でやっている研究に固執しなくていいのでは、と思う。たかだか3年だか5年だか分からないが、人生まだ20年以上仕事するわけだし、3年しかやっていないテーマと違うからこれはやりたくない、というのはもったいない話だと思う。逆に言えば、博士課程なんて、どんな問題を与えられてもすぐに解き方を見つけて解ける能力は養われているわけで、しばらく時間をもらえばみんな通用するくらいの実力はあるはずだし、上司との相性やたまたま選んだテーマの問題はあるかもしれないが、3ヶ月かけてなにも成果がないということは常識的にありえないので、決断して行くしかないんじゃないかなぁー。

元の相川さんのインタビューに戻ってみると、

インターンに行こうか迷っている人に対して一言
迷っている理由はいろいろあると思います。
すでに体験談は何人もの優秀な博士の先輩が書いてくれていたので、僕はこの文章を「自分なんか応募していいレベルじゃないんじゃないか」と思い迷っている人をターゲットに書いたつもりです。そんな人たちに僕が言えることはこの一言です。
「とりあえず、興味のある人は応募してみればいいのではないでしょうか?」
行ってやれるかどうかは自分ではなくMSRAの面接官(研究者)がしてくれます。自分はラッキーでしたが、もし落ちていても、英文レジュメや電話面接の経験は無駄にはならないと思います。MSRAとしては、できる限り優秀な人を採りたいのかもしれませんが、「本当にできる人はMSRAという良い環境を用意されなくてもできるはずだ。MSRAに行くのは自分ぐらいが一番適しているはずだ!」などと少しずるく考えてみてもいいのではないかと思います。

というのは全く同感で、応募する前から「自分は実力がないかもしれない」「自分は求められているパフォーマンスが出せないかもしれない」と悩んでも仕方なくて、実力があるかどうか、パフォーマンスが出せそうかどうかの判断は面接官の人がしてくれるのだから、気にせずどんどん出してみる、たくさん落ちてみる、というのが重要なんではないかな? 確かに落ちるのは悔しいことだし、結果が分かるまで胃が痛いものなのだけど、「ここに応募したのに落とされた」というのも実はあとで笑い話(話のネタ)になるので、なにごとも経験だと思って応募してみてはいかが?

その他全部のリンクは下記なので、どうぞ参照されたし。

Microsoft Researchインターンのご紹介。第7回は、北京のラボに滞在中、NAISTの武富さんです。私が知る限りNAISTから北京へインターン来られた方の第2号です。NAISTとはビジョン、自然言語処理などMSRと近い分野でハイレベルな研究をしているラボが多いので、ぜひ多くの学生の方にチャレンジしてほしいです。

Microsoft Researchインターンのご紹介。第6回は、北京とレドモンドの両方のラボでのインターンを経験した東京大学の菅野さんです。Vision界の期待の若きエースのひとりです。先日、代々木上原でお会いしましたが、非常に元気そうでした。

Microsoft Researchに滞在中のインターンの方のご紹介、好評につき第5回目です。今回は北京でインターンしている早稲田大学の相川さんです。相川さんはコーディングが得意な修士の2年生です。今までの方とは少し違った観点で、インターンについて感想を述べてくれていますので、参考になる方も多いと思います。

Microsoft Researchに滞在中のインターンの方のご紹介の第4回です。今回はRedmondでインターンをしているブラウン大学の木村さんです。ブラウンでは五十嵐先生(東京大学)以来の日本人ということで期待の星です。

Microsoft Research Asiaに滞在中のインターンの方のご紹介の第3回です。今回は京都大学の歌詠み人、加藤誠さんです。

Microsoft Research Asiaに滞在中のインターンの方のご紹介の第2回です。今回は慶應義塾大学ラスト・サムライもしくは張飛翼徳こと、小山田さんです。

現在、Microsoft Research Asiaでインターンをしている学生の方々をご紹介したいと思います。
北京での研究生活についていろいろお聞きしました。インターンを検討している方の参考になれば幸いです。
まず記念すべき第1回目は、東京大学の國越さんをご紹介します。