情報処理学会山下記念研究賞を受賞します

本日情報処理学会から連絡いただき、平成22年度の山下記念研究賞をもらえることが決定したようだ(実際の授賞式は来年3月の情報処理学会の全国大会)。受賞対象の研究は「ウェブ検索ログを用いたラベル伝播による意味カテゴリ獲得」で、理論的には格別新しいことをしたわけではないのだが、実アプリケーションに適用するに当たっていろいろと工夫した点(大規模化や省メモリ化など)と、自然言語処理にこういうログのような非言語情報を組み合わせて精度を向上させるという方向性(発展性)を評価していただいたのだと思う。

日本国内でこの研究を参照してくれている研究も(自然言語処理というよりはデータマイニング系のようだが)ちらほらあるようで、またこのアルゴリズムを実装した実アプリケーションもあるようで、世の中で使われているという話を聞くのも嬉しいものである。本当はブートストラップ法の理論的な研究のほうがしっかりした研究だと思うが、そちらはなにか応用アプリケーションが作れるという話ではないし……

今回の研究もヤフーの方々のサポートがなければ実現不可能だったことだし、内容的には NAIST でやっていた博士論文の研究テーマがなければ思いつきもしなかったことだし、こういう研究ができたのもみなさんのおかげである。ありがたいことである。学振の支援があったので、こういう研究に打ち込めた、というのもあるし、松本研にいたからこそ好きなことを好きなだけできた、ということもある。(日本学術振興会以外からの研究費の受け入れができなかったので、実費でウィークリーマンションを借りてもらったり、いろいろと手続き的な面倒くささはあったが、そういうこともヤフーの側で全部面倒をみていただいたので、感謝感謝)

情報系以外の人のために補足しておくと、情報処理学会というのは我々の分野で日本最大級の学会であり(これと同じ規模のものは電子情報通信学会)、毎年各分野から優れた研究を選んで表彰している。自然言語処理分野からは例年2件が選ばれている。毎年100件程度の研究が情報処理学会自然言語処理研究会で発表され、この中から2件選ぶ、というわけである。蛇足だが2009年はdaiti-m さんの教師なし形態素解析の研究が受賞するべきだと個人的には思うのだが、論文投稿時の問題によって選考外になっているようだ。至極残念。(そう言われると、自分もこの発表の原稿は、2009年のこの研究会から導入された1ページ横長のフォーマットではなく、縦長の2008年度以前のフォーマットで出したのだが……)

松本研SVM 勉強会のメンバー全員が山下記念研究賞を受賞したという話(2009年1月13日の日記)を読んだとき、自分もこの賞は取らねばと思い、今年来年の研究で本気を出すつもりだったのだが、ちょっと早く願いが叶ったことになる。次の目標は今後の2年前後で統計的自然言語処理分野の一つのランドマークになる仕事をする、ということかな……。(あと、これまでもらった賞は全部発表賞で、論文賞はまだもらったことがないので、論文をみっちり書くことも)

むしろ今年はまだ1本も対外発表できていないので、ちょっとは焦ったほうがいいのかな、と思いつつ、焦らず種を蒔く時期かなと思いつつ、最後で帳尻合えば別に途中の道筋はどうでもいいかな、と思ったりしている日々である。今後も理論・実用化双方向を意識しつつ研究を進めていきたいと考えている。