研究室にいないと分からないこと

これは微妙に昨日の話だが、GPGPU 実習のミーティング。あまり時間はないのだが、手を動かし始めたら意外に簡単にできるものなので、今週は(お盆休みもあるし)簡単に方向性を決める。

ここから今日の話だが、CUDA SDK のインストール。自分でインストールすればすぐ終わると思うのだが、自分がいつまでもやっていてもよくないし、インストールしてもらうのもありかと思い、隣でインストールするのを見る。そういえば、自分も Unix の使い方を覚えたのは、ずっと相談員席に坐って隣の先輩方(場合によっては後輩であることも)がばしばし使うのを見ていたからであって、こういうのって物理的に隣にいて使い方を見ることができるのが大きいのかもしれない。

ブートキャンプの名札を返しに行く道すがら、aki-su さんとすれ違う。博士論文の最終審査はどうでしたか、みたいな話をする。よく思うのだが、博士後期課程というのはありえないくらい孤独なので、同期がいるかどうかでものすごく心理的障壁が下がる。同期がいなくても、聞ける人がいるかどうかだけで本当に違う。あまりに周囲に博士号を取得した人が少ないので、誰かこの課程を通り抜けた人の話を聞かないと不安で不安でたまらないのである。

松本研でも同期が3人いる代はお互い情報交換し合って励まし合ってストレートで3人とも出られると思うのだが、そうでないと厳しいのではないかと思う(自分がそうなったことはないけど)。持つべきものは友である。

最近の学生は(←こんな表現を使う自分が嫌)用事がないから研究室に来ないという人もいるようだが、できるだけ研究室に来て先輩たちのことを見ているとよいと思う。どういうタイミングでどういうことに悩んでいるか、どういうことをしているか、というのは、その場にいないと分からない。「あえて正月に来て M2 の人がどれくらい切羽詰まっているか知るのも大事」と言った助教の方もいるらしいが、概ね同意。結果しか見ないと分からないことはたくさんある。

昨日今日とで研究計画書やらなにやらいろいろ見る。こういうのって、そのフォーマットの書き方に慣れているかどうかもけっこう重要。当然中身がないとどれだけ取り繕ってもどうしようもないのだけど、せっかく書けることはたくさんあっても、書き方次第で伝わり方が違うので、そこのチューニングは必要だと思う。自分の人生では、学振書いたのがいちばん役に立ったかなぁ。

学部のとき進学振り分けは2回落ちた(3回目で受かった)し、交換留学は2回落ちた(3回目で受かった)し、大学院に来てからも南カリフォルニア大学のサマーインターンシップにも落ちたし、未踏にも落ちたし、Microsoft Research のインターンシップも1度落ちた(2回目で受かった)し、学振も1度落ちた(2回目で受かった)し、必ずしも自分はこういうの常に通る訳ではないのだが、出し続けるとどこかで受かるものなので、みなさんも諦めずチャレンジしていただけると。これだけ落ちていることをいつも言っているのに「またまた小町さんは失敗したことないから」と言う人がいてげんなりするのだが、成功の数を多くしたければ、より失敗すればいい。みんな1回失敗したら諦めるからそこで終わるだけで、通る人は最後まで諦めなかった人なのである。

研究室にいて先輩たちの姿を見ていて学んだこと。研究の仕方は(勉強と違って)教えてもらうものでも、テキストに書いてあることでもなく、先生方や研究者の方々、先輩たちから盗むもの。盗むためには一緒に仕事をする、同じ空間・同じ時間を過ごす、そういうことが必要で、王道はないんじゃないかなぁー。そのうちすぐ盗める人はいなくなり、自分が盗まれる側になってしまうので、先輩たちから盗めるうちにたくさん盗んでおくとよいと思う。研究の仕方を盗まれて悪い気をする人はいないと思うし、研究のスタイル、向き不向きは人それぞれで違うから、誰かに押し付けられて身に付くものではないし、少しずつ色んな人のやり方を自分なりにアレンジするしかない。

@caesar_wanya さんの日記、 「学部4年の1年間の重要性」を見ていても、

こういった基礎力(森先生は筋トレという)を学部生のうちに付けておくのは大事で、僕は学部生時代は大いにサボって遊んだので、今になって大変後悔している。とにかく、学部の4年生の間(つまり研究室に配属されてから)何をやるかというのは非常に重要で、論文の読み方、書き方、実験の仕方などの基本は、この時期に身につけるものである。そこを真面目にやっていた学生さんはどんどん成果も出せるし、逆にそういう基礎がない学生さんというのは、僕のように修士の間に大変苦しむことになる。

というわけで、着実にやっている人は(@caesar_wanya さんはご本人が思うほど基礎力がないわけじゃないと思うのだが、学生の早いうちに気づいて危機感を持つのはすばらしい)数年後ちゃんと実になって返って来ると思うのである。