新人に優しいコミュニティを作る

午前中は東大駒場キャンパスに行き、言語処理学会の年次大会のプログラム委員ミーティング。実はプログラム委員が全員顔を合わせるのはこれが最初で最後であり、基本的にメールベースで進むので、次に全員集結するのは現地の打ち上げなのである。

プログラム委員の自己紹介が回ってきたが、まだ自分の所属が「奈良先端大」と書いてあった。確かに奈良にいるイメージが強いのだと思うが(自分もまだ心理的には東京人の気がしないが)、もう東京に戻ってきて1年半になるので、そろそろ東京風が出てきてもよいのかもしれず。

午後は大学に出勤し、週明けの情報処理学会自然言語処理研究会の動画配信に使う配信システムをお借りする。情報処理学会は学会を挙げて研究会の動画配信を進めており、音楽情報科学研究会が動画配信の長い歴史を有するので、教えてもらう形で徐々に導入しているのだが、まだ追随している研究会は少なく、自然言語処理研究会は急進派の一つのようだ。

今回も、情報処理学会が購入した動画配信機材を借りようとしたのだが、機材が1セットしかないので、既に一度借りたことがある研究会は後回しにされるそうで借りられず、万事休すかと思いきや、同じく首都大のシステムデザイン学部で同僚である馬場先生の研究室で所有する動画配信機材をお借りすることができたので、九死に一生とはこのことである。

馬場研究室がどこにあるのか知らなかったのだが、実はうち研究室のすぐ下の階で、直線距離にすると10m離れていないようでびっくり。この棟、情報通信システムの研究室だけだと思っていたのだが、いろんなコースの研究室が混在しているのか。

使い方もレクチャーしてくださり、一度研究室に持ち帰って自分たちでもやってみて、なんとなくやり方が分かる。2時間ほどかかったが、慣れればセットアップに30分もかからなさそうである。学内のネットワークでは動画を見られても中継はできないようだが、e-mobile でも全然問題ないようで、一安心。(このとき、南大沢では e-mobile がほとんど入らないことを知らなかった)

研究室で動画配信の練習をしていると、隣の研究室の学生が挨拶に来てくれる。どうやら修士論文の副査には挨拶に行くという風習があるらしい。個人的には別に来てくれなくてもかまわないのであるが、隣の研究室なので、5分ほど話を聞いたりする。本当は、学部生のころからこういう学生一人一人と向き合った話しができればいいのだろうが……

夜は渋谷に移動して ryu-i さんの言語処理学会20周年記念論文賞の受賞記念その他もろもろお疲れ様会。富士通研の I 倉さんのところでインターンをしているうちの研究室の学生も来ていた。週1?週2?ペースで飲み会に来ているそうで、まさしく正しくインターンシップを活用している(笑)結局数週間では論文を書くところまでは行けないので、会社の中の生活(仕事の仕方)を見たり、仕事の仕方を教わったり、社会人の方々といろいろ話してみる、というのがいいんじゃないかと思う。(1週間以下だとそれすら不可能で、企業説明会もしくは学外の学生と仲良くなる場、あるいは青田買い以上でも以下でもないような……)

あと、同じテーブルだった [twitter:@takahi_i] さんと、オープンソースソフトウェア開発は、コミュニティをいかに作るかが大事、という話をする。新人さんいらっしゃい、という雰囲気であるのはもとより、ちゃんとドキュメントがあるとか、拡張しやすい仕様になっているとか、ソースコードが分かりやすいとか、いろいろ要因はあるだろうが、自分も居心地がいいのは新人に優しいコミュニティだったりするので、大いに同意する。自分は Gentoo などの Linux 開発コミュニティに育ててもらったという恩義を強く感じる(あと「びぎねっと」さんとか)し、そういうコミュニティは以上のような性質を備えていたのである。

翻ってみると、別にこれはソフトウェア開発だけの話ではなく、大学の研究室も同じなのかな。大学院から来る人も大歓迎とか、研究室のホームページに情報が載っていたり、研究室のメンバーがブログや Twitter をやっていて雰囲気が分かったりとか、公開されている論文を読むと研究やってみようという気になるとか。いまのところ、最後の1つ以外はだんだんできてきつつあるので、今年度は少しずつ対外発表を増やしていけるといいなと思った。