大学院生になった直後はあえて手加減しないほうがいい

本日ようやく出していた研究費の申請書が全部受理されたとのメールをいただく。しばらく申請書については忘れよう。

午後は機械翻訳勉強会のキックオフ。今年から松本研に D1 で加わった katsuhiko-h くんがトップバッターで論文紹介をしてくれる。たくさん論文を読んでいるし、がしがしコードも書いて統計翻訳器を実装しているし、期待のホープである。というか、日本にいる自然言語処理の大学院博士の学生で、統計翻訳のデコーダ(日英翻訳なら、日本語を入れたら英語が出てくるプログラム)を書いている人って、片手で数えるくらい(3人以下?)しかいないように思う。@tarowatanabeさんと一緒に研究しているようなのだが、今後が楽しみ。

さて、今日の論文紹介は統計翻訳の枠組みにどのように統語(文法)的な情報を用いるか、という話。けっこうおもしろい話だと思うのだが、いかんせん自分で構文解析器を書いたことがないのでその部分がよく分からない(計算量やメモリの効率の話とか)。今年度の後半は基礎的な解析技術の研究をしようと思っているのだが、夏休みの課題として書いてみるべきか。

あと、4月から M1 の人が大量に入ってきたので、割と新人向けの論文を読む勉強会も増えているのだが、これも善し悪しだなぁと最近思っている。確かに説明なしに略語をばんばん使うのはよくないと思うのだが(そこは本質ではないから)、最初から最高水準の論文紹介をしていたほうが、そこで残る人は結局しっかりした研究をしているように思うのだ。別の言い方をすると、最初イントロ的な内容をしていた勉強会は、お勉強タイムが続くかぎり新人の人は出てくれるのだが、それが終わると去るので、結局勉強会全体としては(新人のリクルートに失敗して)続かない。それならそんなに手加減せず、教員と学生が(M1 にはチンプンカンプンかもしれないが)研究レベルでのやり取りをするのを耳学問で聞いているほうが、「こんな研究がいま最先端なんだ」というのが分かって、おもしろさが伝わって残ってくれるのではないかと。

高校生(予備校生)から大学生になったときのギャップ、学部生から院生になったときのギャップ、修士から博士になったときのギャップ、それぞれ非常に大きかったが、大学院生から教員になったときのギャップも相当に大きい。自分的は結果的にはとても満足しているのだが、最初からこういう仕事だと分かっていたらどうしていただろうなぁ。自分の人生の中で、大学教員になりたいと思っていた時期が短い(博士後期課程に上がってから)ので、なんとも言えないのだが……。修士のころなんて、博士の人たちと話しているだけで「こんなすごい人たちがいるのに絶対無理!」とか思ったり、スタッフの人のコメントを聞いて「自分があんななれるわけがない!」と思ったりしていたものだが、そういう意味で最初にカルチャーショックを受けたのはいい経験だったように思う。(この程度ならいいや、と思って他のところに行かずに済んだ)

そういえば、博士の入試のとき、試験官は松本先生と鹿野先生(とあともう1人いらした)だったのだが、研究内容に関する話は1つ2つだけで、あとは自分が卒業したあとどうしたいか、なんて話だった。そのときはM2の4月で、(学振の申請書は書いていたが)将来どうするかイメージもできていなかったし、「国Iでも受けて官僚になる可能性も考えています」と言ったら「博士号取得したら国家公務員の試験免除されるから、試験受けるなんて言わず博士号取ったらいいのに」と言われたり、そのとき高校の教職も履修していたので「自分で論文ばりばり書きたいわけではなく、自分より優秀な学生を育てて彼らがいい仕事してくれたらいいです」と言ったら鹿野先生からは「まだ博士の学生にもなっていないのにそんなこと言っていちゃだめだよ、まずはちゃんと優れた論文書いてね」と釘を刺されたり、松本先生から「教員なら高校でなくても大学でええやん、大学の教員はそんなに嫌?」と聞かれたり、なんだかいろいろな可能性を考えていたんだなぁ、と思う。

博士に上がってからは論文書く楽しさが分かってきたので、こういう仕事を続けるのも悪くないな、とは思っていたが、基本的に自分がやりたかった(やりたい)のは若手の育成であって、ずっと第一著者で論文を書いていたいわけではない(年1本くらいは書けるといいのだけど)。いましばらくは、まだ自分で論文を書く(研究の下半分を)能力が足りていないので、まだ何本か第一著者で論文を書く必要がある(ので NAIST、というか松本研はそれに都合がいい)。あと2-3年が勝負だと思うが、今年は下ごしらえして、来年がんばろうと思っている。まだ情報処理学会論文誌にも投稿したことないし、来年は投稿できるといいなぁ。

松本先生が「年々うちの研究室を希望する学生さんが増えているんやけど。今年はもうXX人問い合わせが来ている」と今日おっしゃっていたが、オープンキャンパスのときに来る受験希望者の人数は例年20人台であまり変わらないような気がするし、「気のせいじゃないですか、一昨年から不況ですし、学費の安い国立に来たい人も増えたんじゃないでしょうか」と言ってはみたものの、今年のオープンキャンパスで人が殺到したらどうしよう(取り越し苦労だと思うのだが)。いつも松本研のオープンキャンパスは人の呼び込みもいいかげん(笑)なので、興味がない人はあまり来ないとは思うのだけど……。