最近自分の研究内容やらやりたいことやらを(英語で)書かないといけないという機会の人に相談されることがあるので、いくつか紹介。
まずは英文レポート・エッセイで良いものを書くコツ(暫定版)。「エッセイ」と日本語で言うと「随筆」のように散文的な感想文チックなものを想像されることが多いかもしれないが、英語で「エッセイ」と言うと基本的には小論文のことである。これを間違えると採点不能(=0点)の文章を書いてしまう可能性があるので、注意されたし。
一番大事なのは、英語では「起承転結」は使わない、ということ。もちろん、日本語の小論文でもできるだけ「起承転結」は使わないことをお勧めする。「起承転結」は小説や漫画ならいいのだが、論文、特に英語の論文やエッセイでこれをやってはいけない(いけなさ具合が伝わるといいのだが、なまじっか文章を書くのがうまいと思っている人ほど、無意識のうちに「起承転結」の構成にしてしまうので、特に注意したほうがいい)。基本的に書くのは
- テーマ(トピックセンテンス)もしくは問題提起
- そのテーマを支える論拠もしくは問題の解決策
- 結論(トピックセンテンスの繰り返し。新しい情報を付け加えてはいけない!)
であって、この構成以外で書かれた論文はほぼありえないので、まだ論文の書き方に関する本を一度も読んだことがない人は、すぐ本屋に走ってなにか買うか、Amazon で注文するかしたほうがいい。どのように書けばいいのかは業界や分野によって微妙に違うのだが、どの業界でもその業界の「テンプレート」があって、ほとんどそれの穴埋めをするのが論文を書くということであり、テンプレートなんて使わないでいいのは本当に一握りの、10年にひとりくらいの天才だけであって、99%の場合従わないとひどいことになる。
特にやりがちなミスとしては、結論でそれまで言っていないような問題提起をしてしまったり(「...は問題である。それは...して解決できる」と書いたりするが、論証がない。小説好きな人に多いパターン?)、問題提起と解決策が対応していなかったり(3つ提起したのに2つしか解決策を提示していないとか、全く違う問題を解いていたりとか)など。
もう一つ参考になるのはやればできる卒業論文の書き方。これは元々「東大で学んだ卒論の書き方★論文の書き方」という名前だったのだが、もっと穏当なタイトルに変更されているようだ(苦笑)
こちらはタイトルこと「卒論」と入っているが、基本は修士論文でも博士論文でも(と執筆中の自分が言うのもなんだが)論文誌や国際会議に出す論文でも同じであり、大変参考になる。まだ読んだことない人は一度は目を通してみよう。最後の余談が秀逸である。
余談
(1) 自分の意見を簡単に撤回してはいけない。なんでも「はい、そうします」と答える人間に、学生としての資格はない。金出氏曰く、「自分は研究テーマについて何ヶ月も考えてきた。あなたはそんなに長時間は考えていないはずである。すると、あなたの意見が正しくて、私の意見が間違っているということは、おかしい」。(2) 「起承転結」は漢詩の作法です。科学論文の執筆には絶対に使わないように。漢詩愛好者の私が言うものなんであるが。
牀前看月光、疑是地上霜、挙頭望山月、低頭思故郷。(李白 静夜思) こんな感じの論文ではロジックが活きてこない。
要するに、補足トリビアを先に書かれると、じれったいのである。
章にせよ節にせよ段落にせよ、最初の文は、それに異論や別段の興味が無ければ、以降を読み飛ばして構わない約束に、論文ではなっている。「春はあけぼの。」に異論が無ければ、「夏は夕暮れ。」にスキップして読んでもよい。
「私はこの論文を感傷的にならないように努力して書いている。それでもなお、真理を書いたつもりで、グチを並べているだけではないかと不安になる。」(スタンダール、『恋愛論』)
あと参考にするべきは松尾さんの松尾ぐみの論文の書き方:英語論文と松尾ぐみの論文の書き方 (これらのページは前も紹介したことがある)。ただしこちらは基本的になにがしかの文章を書けるようになった人が、トップカンファレンスに通用するような論文を書くにはどうしたらいいか、という視点で書かれているので、基本ができるようになってから読むとより役に立つと思う。
また海外などしっかりしたインターンシップに応募したいという人が今後増えていくと思うが、海外のエンジニアや研究者の人にメールを送ったりする前に、(海外に限らずですが)海外に行く際のアポの取り方(特に学生の方へ)を読んで、チェックリストで自分のメールはそれらをクリアしているかチェックしたほうがよい(このページは前にも紹介したことがある)。特に
典型的なNGパターン
大体、おいおいと思うのは、以下のいずれか、あるいはこの組み合わせです。
はとても重要で、インターンシップに応募するなら事前にこのあたり胸に手を当ててしっかり考えてから書類を書いたほうがいい。特に学生だと相手の会社に対するメリットを意識していなかったり(自分もそうだったけど……)、有名な誰々さんと会いたいからという憧れだけが先行したり、具体的になにをしたいのか分からないということもあったりとするのだが、そのあたりは普段から意識しておけば解決できることなので、直前になってばたばたするものではなく、インターンシップに行きたいと思っているなら日頃から心がけてアンテナを張っておきましょう、という話。
上記リンク先にはそれぞれこうすればいいということも書かれているので、気になった人はぜひチェック!