アメリカで子どもに日本語を身につけさせるのは一苦労

Laura に連れられて彼女の日本人の友人の Saori 一家のお宅にお邪魔する。実は最初行ってみたら誰もいなくて電話にも出ず、これはおかしいと思ったらどうやら彼女たちが自分たちの家に来ていたようで(情報が錯綜してすれ違ってしまっていた)、入れ違いだったようだ。まあ、自分たちは自分たちで買い物していたのでよかったのだが、ちょっと申し訳ないことをした。

さて、今日は↓のような話。この本、こういう第二言語習得の最新研究の成果もふんだんに書いてあるので、海外に留学しよう・インターンシップに行こう・働こう・住んで子育てしようと思っている人は必読だと思う。正直新書でこの内容はお買い得すぎる。

外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書)

外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書)

Saori は大学からこちらに来ているそうで、旦那さんはカナダ人、子どもは2人、上の子が女の子で5歳、下の子は男の子で2歳だそう。子どもたちには日本語を身につけてほしいそうで、家の中では Saori は子どもたちには必ず日本語で話しかけ、返事もできるだけ日本語でさせようとしているらしい。去年日本に2週間帰った直後は子どもたちも日本語で喋っていたらしいのだが、しばらくすると子ども同士も英語で喋るようになってしまい、日本語で喋らせるのに苦労しているとのこと。現在上の子は土曜日に日本語の補習校に通わせているのだが、他のママさんたちの話では、本当は毎年数週間日本に帰って日本語を使わせるのを10年繰り返してようやく身につくもの(子どもたちは言語を覚えるのも速いが使わなくなると忘れるのも非常に速い)だそうで、黙っていてバイリンガルになるわけではないとのこと。英語圏で子育てしたら英語が使えるようになるから素敵じゃないの!なんてバラ色な生活が両手を広げて待っているわけではない。

問題は旦那さんのお母さんがあまり日本語が好きではないようで、家の中で日本語を喋らせているのを見ると嫌な顔をするのだとか……。他のママさんでもそういう経験をする人いるそうで、そういう中で日本語を子どもに使わせるのは並大抵のことではないと思う。

実は子どもに生活言語以外の言語を家の中で使わせると、子どものアイデンティティが混乱するというのが心理学の領域で研究されているそうなのだが、逆に子どもに親の母語を身につけさせるのに失敗すると子どもが成人したときや親が年老いたときに意思疎通が難しくなってしまう(ので親に特に疎外感がある)、という問題もあるそうで、あちらを立てればこちらが立たず、一つの正解はないのだろう。英語ができるのは現在の世界では有利なのかもしれないが、一番近いはずの人たちとぎくしゃくしてしまうのは不幸なことで、それを避けるためには少しばかりの代償は払わなければならない、ということ。

自分がそういう立場だったら家の中では日本語オンリーで通し、かなりの負担を子どもに強いることになってもバイリンガルになってもらうかな。夫婦ともに日本人で日本語を喋る場合は、片方だけが日本人の場合と比べてまだ楽らしい。親が自分の言語に誇りを持っていないケース、特に危機に瀕している少数言語の場合だったり、貧しくて英語(などの優勢な言語)ができたほうが社会的に成功するチャンスが多い場合はあえて子どもに自分たちの母語を使わないことが多いようで、それはそれで仕方ないとは思うのだが、やはり自分の子どもと話ができないのは嫌かな……。(日本語は話者が非常に多い言語であり、なおかつ日本語でもビジネスができるので、子どもに使わせてもそんなに悪くはない、という現実的な問題もある)

笑い話なのか笑えない話なのか分からないが、上記の本に書いてあった内容だったと思うが、両親とも子どもには自分たちの母語を使えるようになってほしかったので、わざと英語ができないふりをして家の中では親の母語を使わせることに10歳くらいまでは成功していたのだが、あるとき子どもが英語で話しかけるのにうっかり英語で答えてしまって、それから先は子どもが英語しか使ってくれなくなった(家以外では英語しかないのだからそのほうが子どもは楽なのである)、という、一回失敗するだけでそれまでの努力が水の泡になったりする、第二言語習得というのは恐ろしい世界のようである。

将来どこでなにをしてどういうふうに暮らしているのか分からないが、子どもとどういう生活をしたいのかはちゃんと考えて家族で話し合おうと思った。