ウェブ系の研究をするなら Microsoft に行くべき

SIGIR 2009 の採択論文が発表されていたようだ。SIGIR というのは情報検索に関する世界で一番権威ある国際会議で、情報系の国際会議ランキングでもトップ10にランクインしている。その採択数が一番多いのは Microsoft、二番目が Yahoo! 次いで Google (でも3本だけ)という結果に。

なぜ採択数(率)が問題になるかというと、情報系の国際会議というのは最新の研究成果を発表する場であり、投稿された論文に2人以上の査読者がついて各項目について点数をつけ、一定点数以上のものだけを採択するので、国際会議のランクに応じてそれなりのクオリティの論文が書けないとそもそも通らないし、1人で書ける論文の量にも限界があるので大量に通せる研究機関は研究者の層も厚いことが分かるからである。

上記リンク先でも書いてあるが再度引用すると、

38% of the papers have at least one author from Microsoft (21 papers), Yahoo! (7 papers), or Google (3 papers)

ということで、4割近くが検索エンジンの企業上位3社で占められているというのはある意味納得(研究論文のはずなのに大学とか国の研究所があまり出せていないのは、検索エンジン作るのもかなりコストがかかるからかもしれない)だが、これを見て分かるのは、研究に一番熱心なのは Microsoft で、Yahoo! はシェアもいまいちだが研究もそこそこで、Google は研究にはあまり関心がないようである。

この日記でも何回か書いているが、世間的には Google = オープン = 善、Microsoft = クローズド = 悪と(オープンソース界隈の人たちからは)見られがちだが、少なくとも研究の世界においては Microsoft = オープン = 善、Google = クローズド = 悪(とは言い過ぎだが)という構図の方が適切である。特に人材の面では、世が世なら論文書いていてもおかしくなさそうな人たちが Google に吸い込まれていく数があまりに多いので……(でもその人が楽しそうなことを追求したらそうなるんだから、わざわざ論文書きなんて因果なことしなくてもいいじゃんね、とも思う)

トップでないからこそ失うものがないからばんばん論文が書けるということもあるだろうが、もっと Google は気を吐いてもいいと思うんだけどなー Yahoo! はあまり欲を出さずエンジンでも研究でもこのあたりで止まっていれば、なにかのタイミングでチャンスがあればまたシェア伸ばせると思うが……(でも欲を出して自滅しそうな気もする)

ウェブ系の研究するんだったら現状 Microsoft に行くのが一番研究環境としていいってことなんだろうな。人が多いと埋もれて嫌だからあえて他のところに行く、という人もいるかもしれないが、Microsoft, Microsoft Research (Redmond), Microsoft Research Asia, Microsoft Research Cambridge, Microsoft Live Labs, Microsoft Search Technology Center と世界各地の機関で研究しているところはここくらいだろう。インターンシップ募集のページを見ると Microsoft Search Lab というのまであるらしく、ありえない数の研究者・エンジニアを投入し(ようとし)ているのが分かる。

あのまま世界同時不況がなかったらどうなっていたのか見物だったと思うが、さすがに GoogleMicrosoft の対決も今後失速するだろうなぁ〜