グラミン銀行とこの世でいちばん大事な「カネ」の話

この世でいちばん大事な「カネ」の話 (よりみちパン!セ)

この世でいちばん大事な「カネ」の話 (よりみちパン!セ)

がおもしろいという話を何回か見かけたので読んでみた。西原理恵子の自伝的エッセイ。漫画もしくはイラストかなと思っていたのだが、イラストは数カットだけでほぼ全部文章。文章で書くとあまりパンチがないのだが、確かにおもしろい。人間働く場所があるというのは幸せなんだ、というメッセージ。人間ポジティブな感情だけで生きていられればいいという清らかな世界もあるかもしれないが、社会悪を憎む、というネガティブな感情も必要(悪)だと思う。そういう意味で、この本は「貧困」という社会悪に対して猛烈に怒っている、その一点だけでも価値がある。

淡々と彼女の生い立ちから現在まで書いてあるのだが、自分がびっくりしたのはグラミン銀行について取り上げて1章使って書いているくだり。グラミン銀行マイクロクレジットを広めた銀行として有名であり、2006年にはこのグラミン銀行の創設者がノーベル平和賞を受賞したので記憶に残っている人も多いかもしれない(ノーベル経済学賞でいいと思うのだけど)。

このマイクロクレジットというのは、グループに対して貸し付けをし、返済を怠るとグループ全体が連帯責任を負う一方、担保なしでグループのメンバーが推薦すれば借りられるというのが特徴で、定期的な返済と、借りたすぐ翌週から少額ずつの返済が始まる、というのがポイント。お金ばかりで生きられるものではないが、お金がないと仕事を始めることもできず、そういう(主に女性の)人たちに仕事と「希望」を与え、自分たちの未来を自分たちで切り開いていける可能性を拓いている、という意味で、すばらしい取り組みだと思う。西原理恵子も同じようにグラミン銀行を取り上げ、評価しているが、こういう仕組みを作って貧困から抜け出すのが大切だというのを、彼女の原体験から言われると、非常に説得力がある。

経済(カネ)って人を狂わせることもあるが、こうやって人を救うこともできるのがすごいなぁと思うのであった。カネというよりは、生きるとはどういうことか、そして働くとはどういうことか、考えさせられる一冊であった。