ノーベル賞級の成果を挙げても任期が切れたら研究は続けられない

ゴールデンウィークは本をちまちま読んだりしている。

日本にノーベル賞が来る理由 (朝日新書)

日本にノーベル賞が来る理由 (朝日新書)

バカと東大は使いようと同じ著者で、過激なことを言っているかのように見えるが、言っていることはどこかで言われていることを言い換え、学術的風味を薄めて伝えるという感じ(ノーベル賞に関しては岡本拓司先生の授業で聞いたこととほぼ同じ)ではあるが、知らない人に取っては参考になると思う。(一般書に求めるのは筋違いだということは承知しているが、参考文献のリストはあったほうがいいんじゃないかなぁ)

個人的に泣けてきたのは GFP 遺伝子の研究でノーベル賞をもらった下村さんの実験に決定的な役割を果たしたプレイシャー博士(GFP 遺伝子の配列を決定した)が、実験をしていた当時は任期付きの研究者(博士号を持っているのだとすると、技官ではなくポスドク?)をしていて、その後研究職が見つからないで現在はトヨタの子会社で運転手をしている、というエピソード。(p.157)「彼は仲間のノーベル賞受賞を祝福すると共に、まだ研究のことを覚えているうちに、それを残しておきたい、と報道陣にコメントしていました」という話を読むと、自分が研究できるかどうかは別にして、他の人でもいいから研究を引き継いで、自分が到達した先に進んでほしい、という気持ちを感じ、こみ上げてくるものがある……。実際の任期とそのときの研究成果の評価にタイムラグがあるのも問題かとは思うが、こればかりは必要悪だろうなー(分野によっては1年とか数年という任期は短すぎる)

<ポスドク>1人採用で5百万円…文科省が企業に「持参金」というニュースが出たようだが、そもそも1年任期だったら少しお金積まれたくらいでは、就職先が元から厳しい状況の人は変わらないのではなかろうか……? (最初からいろいろ選択肢がある人なら、1年ポスドクして稼いでから次のところに行くときに積み増しがあるので嬉しいだろうが、そういう人は他の人に回るべきポスドクのポジションを逆に奪ってしまうような気もする) 特効薬はないとは思うが、自分も人生そういう選択の岐路にいるといろいろと考えてしまう。

ちなみに記事のほとんどはオンラインでも登録すれば読めるようで、記事リストもまとまっているので、興味ある人は読んでみるといいかも。