オレオレ詐欺三度

「みたび」と「びたび」は似ている。そんなことはどうでもよいが。

昼に弟からの電話で起きる。三男から電話がかかってくることは滅多にない、というか、これまでかかってきたのはオレオレ詐欺のとき2回だったので、嫌な予感がする。開口一番、「守だよな? 元気だよな? 大学にいるよな?」と言われ、もちろんそうだ、なんのこっちゃ、とねぼけまなこに思ったが、やはり悪い予感は当たるもので、またオレオレ詐欺だったらしい。そして今回も母は引っかかりそうだったとか……(いいかげんにしてくれ。)

しかし今回は弟も最後の最後まで信じそうになっていたそうだ。よく要領を得ないのだが(それもそのはず、最初は母が受けて途中から弟に変わっているのでどこまでが母の話でどこからが弟の話なのかが分からない)

  • 手口としては「守さんがはいま風邪が悪化して病気で入院していて声も出せない。しかし大学に監査が入ってお金が用意できないと捕まってしまうので数百万用立ててほしい」というもの。
  • 「大学に監査が入るのでお金が必要」というところで公認会計士志望の弟は「おかしい」ということを確信したらしいが、いくつか向こうが守について詳しく知っていたので、信じそうになった。ちなみに彼も理解していなかったが、大学に対する監査は「予算で買った物品が確かにそこにあるか、適正に使われているか」を確認するものなので、物品がないと困ったことになる可能性があるが、お金がないと困るということはありえない。しかも年度をまたいで新年度になっているのにお金がないので監査が入るというのはどう考えてもおかしい。(が母はだまされそうになった)
  • 入院しているので電話口には出られない、ということで母も弟も電話口に自分が出なくても信じそうになった。
  • いま大学院にいて研究員として働いていることを知っている。
  • 自分が結婚することを知っている。しかも驚くべきことに相手の名前まで知っていたそうだ(でも「奥さん(彼女?)のことを殴るくらい追い詰められている」と言っていたそうだが、そういう事実はない。)。弟曰く「○○さんの名前を確かに聞いたというのは母の話なので全く信用できない」とのことだし、自分の母ながら母の言動は80%くらい信用できないので、先に母が「○○さんのこと?」とか言ったために名前を知ったとかだと思うが、とにかく本当に相手の名前を知っているとしたら恐ろしい。この日記にも相手の名前は書いていないし、大学や研究室でも名前は言っていないので、相手の名前を知っているのは結婚式と2次会に招待した人だけなのである。
  • 3月まで風邪を引いていたのが悪化したということを知っている。これは日記を見れば分かることだが、つまりこの日記を非常に最近まで読んでストーリーを考えたということになる。
  • 大学の監査の話が出ていたが、そもそも大学で研究費を使って監査が入るような立場にあるということを知るにはたぶん大学院に入って研究した人しか知らない(一般人はそもそも理科系の大学院でなにしているかなんて知らないだろう)だろうし、「大学院生の親をだますにはこういうふうに言えばよい」というマニュアルがあるとしたら、複数人でマニュアルを作っていて、その中には割と理科系の大学院で博士くらいまでは行った人がいるということか。もしくは単独犯だけどやはりこういう大学院事情に詳しい人(か学生)がやっている。
  • 大学に入学してしばらく経ってから(メールを使うようになってから)の友人はそもそも自分の実家の電話番号は知らないので、実家の電話番号を知る人は20歳以前に知り合った人(中学高校、予備校、そして学部前期)、もしくは同じ研究室の人(研究室の住所録がある)のみである。この日記のみを見ている人が自分の実家の電話番号を知るのは非常に困難だが、自分の実家の電話番号を知っている人は自分の名前で検索すればこの日記を発見するのは容易である。
  • とはいうものの、実家の電話番号と住所自体は中高の卒業生名簿および大学の卒業生名簿を見ればばれてしまうし、業者にすでに流れていることはほぼ確実である。事実我が家には4人男の兄弟がいるのだが、東洋大の長男と日大の三人にはオレオレ詐欺はかかってこないが、東大の自分と一橋の四男にはかかってきている(もう独立生計者なので実家にはかけないでほしいんだけど。そもそもまだ長男と三男はそれぞれ専門学校と資格予備校に通っていたりするので実家に蓄えは全くない)。しかも四男に対するオレオレ詐欺は就職先まで知っていたらしい。

長々と書いてしまったがポイントは

実家の番号を知る人が自分の Web 日記を見て話に信憑性を持たせた。

オレオレ詐欺にいかにも引っかかりそうな母(60)だけでなく、かなり分別のありまともな弟(25)すら引っかかりそうになるくらい日記を読み込んでいる。

本当に妻の名前を相手が知っていたとすると、だまそうとした人は非常にかぎられる(というか自分の知る人がかけている以外ありえないので気分悪い話なんだが)

こういうことがあるとこうやって日記書いてもあまりプライベートなことは書かない方がいいのかという気にもなるのだが、「風邪引いた」「結婚した」「大学院で研究している」とも公の場には書けない世の中というのはせちがらいものである。書くことによって受ける不利益よりも、読んでくれているということで(初めての人でも)話かけてくれたり、書いた内容で雑談や議論できたりするので、書くのは辞めないつもりだが(35歳になったらこの日記も含め限られたチャネル以外はインターネット上から消える予定ではある)。

ちなみに最終的には「これはおかしい」と気がついた弟が「折り返し電話かけるので電話番号を教えてください」と言うと、「携帯の番号でいいですか」と言われて、病院なのに携帯使えるわけないからいよいよこれは詐欺だろう、と思って「携帯ではなく病院の番号を教えてください」と言ったら「0120-XXX-YYY」みたいな(0120 はフリーダイヤルだから病院の番号ではありえない。また、奈良に住む詐欺師なら奈良の市外局番を知っていると思われるので、かかるわけがない番号でも奈良の市外局番から始まる番号を言うはずだと思われる)番号を言ったので、これは完全に詐欺だと分かり、いったん電話を置いて折り返し携帯電話で自分にかけて生存確認をしたそうだ。その横で母が言われた番号にかけたら(当然だが)つながらないでたらめの番号で、母も詐欺だったと納得したらしい。(もっと早く気がついてほしいものなのだが……)

結局、こういうことがあったときは、まずなにを言われようと本人に電話かけてみる、そしてなにかあったら(たとえば実家ではなく弟の携帯にかけるとか、信頼できる人に伝えることに取り決めておいて、実家には極力かけないようにする)のときのためのプロトコルというかマニュアルをちゃんと作っておかないといけないな。弟もあと数年で実家を出るだろうし、母には「まず自分が危篤とか誘拐されたとか拘置されているとか言われたら、相手が何と言おうと自分に電話をかけ、つながらなかったら次に妻に電話をかけて真偽を確認するように」と電話の前に大書しておかないとな……。今回はたまたま弟がいたので止めたのだが、病院にいるからと現金を用意して奈良まで新幹線に乗ろうとしていたところだったそうだ。はあ……。