回り道しても最後は遠くまで

朝は企業との共同研究の Skype ミーティング。なぜか画面共有がうまく動かなかった(珍しい)。この共同研究は文字通り共同っぽい感じで研究ができているので、有意義に思っている。今度、現場を見せてもらえることになった。

午前中は上記のミーティングのために研究室の全体ゼミに遅れて参加。チュートリアルの Transformer の実装の話、ちょっと聞きたかったが、クラウドソーシングの話が聞けたので満足。

午後は言語学習グループの進捗報告を聞く。手法とタスクのマッチングについてかなりしつこく聞いてしまうのだが、ここ数年の経験上、最初にしっかり研究デザインを確認しておかないと、あとで挽回することができないのである。言い換えると、これまでは、いずれにせよ実験するのは経験になると思って、とりあえず手を動かしてみてもらっていたが、実はトップカンファレンスに通るかどうかは実験(実装)をする前から8割くらい予測できる(実際にどこに通るかは運もあるが、upper bound は経験から推定できる)ので、この段階で見込みがない場合はゴーサインを出さない方がいいと最近は考えるようになっている(卒業がかかっているのでこれ以上先延ばしにできないという場合、こだわるのは諦めるが)。

夕方は D セミナーで博士後期課程の人たちの話を聞く。今日はちゃんと最後まで聞けてよかった。

夜は 自然言語処理(NLP)系のエンジニア・研究者のキャリアを語る会 参加のために新宿の LINE オフィスに移動。ここに来るのは2回目である。ちょっと遅れそうだったので立川から特急に乗ったが、ホームで買う特急料金と中に入ってから払う特急料金が結構違う……。

話の内容は Togetter のまとめ を見ていただければよいが、@y8o さんのお話も @hitoshi_ni さんのお話も、非常に示唆に富む内容であった。とりあえずの感想は N 社に入っていたら自分も命が縮まっていたかもしれないということだが、色々な生き方があるなと思ったし、自分が大学教員をするインセンティブも自然言語処理の研究をするモチベーションも違い(もちろんお2人と同じところもある)、人それぞれだなと。

いくつか違うなと思ったのは、たとえば @y8o さんと違って自分は自然言語処理という分野自体にはそこまで恩義は感じておらず、元々オープンソース開発に関わってオープンソース開発コミュニティで育てていただいたので情報系の大学教員にまでなったので、恩義としては情報系の異分野からの人でも受け入れてくれる懐の広さに感謝している(自然言語処理自体が学際的な分野で、情報系の中でも多様性に富んでいるというのも大きいけど)。

また、@hitoshi_ni さんは優秀な人たちに囲まれて仕事できるのが研究所にせよ大学にせよ楽しいということだったが、自分は一緒に時間を過ごす人が優秀かどうかはそこまで重要ではなく、焦らずくさらず泥臭いことでも楽しく一緒に前に進んでいけるなら誰でもいいと思っている。アフリカのことわざで「早く行きたいなら一人で行け。遠くへ行きたいならみんなで行け。」というのがあるそうだが、自分はこの後者で、最短ルートで早く行きたいのではなく、ぼちぼち道草したり休んだりしつつも、遠くに行きたいのである。

あと、会場に NAIST 時代の後輩、首都大に来てからの研究室の卒業生も来ていて、そうやって大学を出たあともこの業界に近いところでいてくれるのは何より嬉しいし、自分はこの世界の片隅でひっそりと見守っているくらいがちょうどいいので、やっぱり大学の教員というポジションは自分の性格には合っているのだろうなと思ったりする。自分は教員という仕事にはあまりこだわりがないのだが、周りの人は大学の教員が合っていると言うので多分その通りなのだろう。

ともあれ、懇親会には参加せずにきたくしたが、それでも色んな人とお話ができてよかった。今後もシリーズ化するそうなので、これからの自然言語処理業界に期待。