研究は精度ではなくストーリー

午前中はオフィスアワー。研究が始まると、この話、世界中で我々しか知らないことをやっているぞ!という状態になって、おもしろい。最近はアイデアを思いついて「お、これはいける!」と思ってからもう少しサーベイすると今年にトップカンファレンスで発表されている、ということが多いので、アイデアを生成する能力は確実に向上していると実感。ただ単に少し遅れているか手が遅いかのどちらかだが、半年ならまだしも1年遅いとどうしようもないので、他の人が着目しないような観点から切り込まないと。

お昼は ACL 2018 読み会。(スライド

  • Urvashi Khandelwal, He He, Peng Qi, Dan Jurafsky. Sharp Nearby, Fuzzy Far Away: How Neural Language Models Use Context. ACL 2018.

最近研究室でも文を超えた情報の伝達についての一連の研究をしているのだが、この論文はいろいろ実験設定を変えて、どれくらいの距離でどういう情報が伝わっているのか、ということを調べて考察した論文。最近のニューラル界隈では、どれが state-of-the-art(世界最高精度)か、みたいなことを喧伝するものばかりでかなりお腹いっぱいな感じで、そういう流れから一線を画していていい論文であった。また、紹介してくれた学生も、まさに同じように考えてこの論文を選んでくれたようで、研究室の学生もちゃんと論文を選ぶ感覚が養われているようで、嬉しかった。XXX を使ったらなんでも解決!みたいな風潮には辟易しているのである(作る側がそう書きたくなる気持ちはよく分かるが、使う側がそう騒ぐのは、さすがにエンジニアとしてナイーブすぎると思う)。

午後は南大沢で B1 の自然言語処理の概論の授業。去年までは情報通信システムコースに入っても B1 と B2 の授業を担当しない教員と学生の接点がない、という問題があり、今年からは情報科学科の教員は全員90分×4回分の授業を B1 から B2 にかけての授業(しかも、専門科目は実験以外は全て選択必修の授業の中、この授業は講義なのに必修)で行うことになったのである。

この変更は割といいと思っていて、強制的に全教員の授業を受けるため、専門科目を履修するときも教員の性格に関する事前知識を得ることができるし、研究室配属前に全ての教員の話を一応聞いているという状態になるので、あまり不公平感がない。つまり、授業を受けた上で、その先生のところには行きたくない、と学生が考えるのは仕方ない、ということである。(授業を受けていないと研究室公開だけで判断しないといけないし、そもそも興味のない授業は取っていないと思うので)

自分はというと、去年までやっていた「情報通信特別講義」という授業で話していたような、大学と企業と学生の関係について話してみたり。来週からは自然言語処理の話をするが、B1 のうちはあまり専門科目の話をするより、最終的な出口がどうなっているか、という話を少ししておいたほうがいいと思っている(ただし、これらの話の真価が分かるのは、研究室に配属されてからだろうが)。