台風接近中ということで、高校生の理数研究ラボは1時間半繰り上げて終了してほしい、と言われたので、午前中はいつも学部1年生向けに話している自分の大学院生生活についてのトークをした上で、午後はニューラル機械翻訳、統計的機械翻訳そして人手(自分)による翻訳結果の評価をしてもらう。高校1年生だと実は英語力が微妙で評価できないケースもあったりしたのだが、楽しく評価してもらえていて、よかった。
最後の議論では鋭いコメントや洞察もあり、B4/M1 相当の演習内容をしっかりこなしていたし、研究は泥臭いことを厭わずやる気があれば高校生でもできるなと思ったりする。逆に言うと、勉強はできても泥臭いことはやりたくない人は、少なくとも自然言語処理の研究は向いていないような気がする。自然言語処理はどうしても人間の言語と向き合う部分があり、そこは理論の世界で閉じてはいないし、唯一の正解があるわけではないので……。(研究の最先端ではそもそも教科書もないし、正解もない、というのを体験してもらうのが趣旨なので、それはそれでいいのだが)
午後は文科省国費留学生の推薦書を書いたりする。毎年大使館による1次選抜前に問い合わせが両手で数える程度来て、かつ実際に大使館の1次選抜をクリアした人が1-2名うちの研究室を第一志望にしてくれるのだが、去年は学生本人の希望を無視して国立の他大学に配属されてしまったケースがあり、こちらに理由も示されなかったので、受け入れに慎重になった。特に、日本語が不自由なケースでは、基本的に他大学を第一志望にしてもらうことを勧めている(うちは日本語ができない学生の受け入れ態勢が不十分)。結局今年も1次選抜をクリアした2名に研究生としての受け入れ許可を(指導教員レベルでは)出したけど、来てくれるのは1人じゃないかな。
夕方は大学院の自然言語処理特論の採点。毎回小課題を課しているのである。留学生が2割くらい受講しているのだが(この授業を受ける留学生は全員中国人か台湾人)、基本的に全員日本語でとてもしっかりした内容を書くし、感心するような答案を書くのは留学生であることが多い。去年までとかなり様相が変わっていて、留学生として優秀な層が入ってくるようになった印象である(これまでは、日本語的に意思疎通の問題があることや、あるいは研究のクオリティに問題のあることが散見された)。もっとも、中国語ができれば漢字を使えるというアドバンテージがあるので、中国人や台湾人は読み書きは会話に比べると問題ないことが多いのではあるが、直接話してみてもこれまでとやる気(熱量?)が違うので、そういう次元の話ではない気がする。
大学院入試の問い合わせも、これまでは年に数人しか問い合わせが来なかったレベルの学生が20人以上問い合わせをしてくれているし(とはいえうちの研究室では博士後期課程に進学希望でない人は受験を断ったし、今後は留学生も社会人経験者以外は断るつもりだが)、このままだと日本人学生は同じ土俵では太刀打ちできないのでは感がある(汗)アメリカのように、大学院は留学生ばかり、みたいな感じになるのかなと思ったりするが、すでに博士後期課程はどこも留学生ばかりになっているし、それが博士前期課程にスライドするだけだと思えば、自然な流れなのかもしれず。実際、国際的な研究のプレゼンスを考えると、英語のできない日本人学生と研究するより、研究も英語も(そして日本語も!)できる留学生と研究する方が質の高い研究ができる、という状況になったら、そちらの方向に行くのは不可避ではなかろうか。