研究に MSR はいい組織

今日は Microsoft Research Asia Academic Day 2017 に参加するため台湾。自分は D1 のときにシアトルの Microsoft Research (MSR) でインターンシップをしたのが研究者になる転機となったし、Microsoft がいかに研究者を大事にしているかを知ったので、基本的に Microsoft 推しである。

朝に少し仕事をしようと思ったのだが、会場のホテルが添付ファイルを開けない(ファイルの添付もできない)速度で、意図的に仕事をさせないようにしているのかと思ったりしたが、どうしようもなかったので諦める。

午前中は招待講演とパネルディスカッションだったが、こういうイベントの招待講演は、隣接分野の概観を知るために有益で、なるほどなーと思いつつ聞いたりする。

パネルディスカッションでは、いかに質が高い研究をするか、というお題で、研究はたくさんやればいいってものじゃない、自分の代表作と言えるようなものを数個やればいい、そもそも片手で数えられる以外は(例えばアメリカの研究大学テニュア審査では)評価されない、という話があったりして、うーむと考えたりする。突拍子もないアイデアを馬鹿にしないのが大事、という話もあったが、これは分野による(例えば自然言語処理はかなり歴史的背景が重視される)ような気もする。

自分自身、10年に1本代表作と言えるような研究ができればいいと思っているのだが、今年の結果を鑑みると今の研究の仕方では難しいように感じていて、どうすべきかと思ったりする。特に憂慮しているのは内部進学生で、理由は不明だがどうしてもインクリメンタルな研究テーマ中心になってしまうので(学部生はそれでいいと思うのだけど)、端的に言うとおもしろい研究テーマにならないのである。ちなみに、開発的にはそれで何の問題もないので、ある意味研究室としては成功しているのかもしれないが。

論文をたくさん読んでもらってそこから研究テーマを考えると、インクリメンタルになりがちという背景はあるのだが、博士後期課程の学生は論文をたくさん読んでも必ずしもインクリメンタルにならないので(人文系出身の人も、そうならない)、異なる分野のバックグラウンドがあると考え方が違っていいのかなと思ったりする。やはり(できれば博士後期課程に進学したいという)異分野から来る人を大学院から取れたらいいなぁと思ったり。

あと、教員の考える研究テーマというのをやる人がいてもいいんじゃないかなと思ったり。これまでのところ、自分が考えたテーマをやってくれた学生はほぼいないのだが、一つ一つはできればトップカンファレンスに通るネタだと思っているので(できないかもしれないけど)、そういうのやってみたいという人がいるといいな、と……(ただ難しいのは教員が考えたネタだと間に入ってくれるメンター的な人をつけにくいので、そこそこプログラミングできる人でないと研究にならないという点だろうか?)。

ポスター発表はランチと一緒だったので聞きにくる人がほとんどいなかったが、松本先生が少しディスカッションしてくれたのでよかった。やはりこれ、LSTM でなく CNN でやると(元々の頑健な形態素解析器を作るという目的に照らすと)いいと思うのだけど(そのように2015年のころから思ってプロポーザルを書いたのだけど)、誰かやってくれないかな(去年の B4 テーマだったが、結局誰もやらないで放置されてしまっている)。仕組みは単純なはずだが……。

あとランチで日本の情報系はこれから5年間で定年退職になる教員がたくさんいるという話が出たが(うちの学科も例外ではないが)、減った人員が補充されるのであれば、いま大学院にいて大学教員になりたい人には朗報ではないかな(玉突き人事で上が上がらないあるいは出ていかないとポストができず、すぐには准教授や助教のポストが出たりはしないかもしれないけど)。

午後はいくつかのセッションに分かれてトークを聞く。質疑がないのは珍しい気がするが、休み時間に話してね、というのは確かにいい進行方法かもしれない。対話のセッションでなんか見覚えあるなと思ったが、ACL-IJCNLP Student Research Workshop で PhD thesis proposal をしていた CMU の人で、バンケットに行く道すがら話した人だった。ACL のフルペーパー含む多数のトップカンファレンスに通していてすごいなと思ったが、博士号を取って台湾に戻ったのか〜。

夕方は懇親会には参加せず(参加できず)タクシーで桃園空港へ。結局部屋の温泉しか入れなかった。台湾的な連休なので道路が混むかも、と言われていたが、そこそこスムーズに空港に着く。学部時代に台湾語を1年勉強していたので、少し台湾語を話したら運転手の人が喜んでいた。

0:20の便で羽田に戻ったが、いまいるコースは台湾とも割とご縁があるので、もう少し台湾に来てもいいかな〜と思ったりする。