論文を書くというのも温度差が

午前中は言語処理学会年次大会で発表しない学生たちの進捗報告を聞く。修士論文に関係する内容を5月の NL 研または7月の NL 研、あるいはそれに相当する外部の研究会・シンポジウム等での発表を義務付けているので、3月に発表しない人はこの時期に進めておかないと修論にたどり着かないのである。(人数的には対象となる学生は5人で、4月以降も残る学生の半分強)

午後は特別研究(卒業論文)発表会。実はうちの学生の特別研究発表会の予稿は今回特にチェックしなかった(NLP 若手の会シンポジウムのときチェックしたし、言語処理学会年次大会または NL 研の原稿でも何往復もチェックしたので)のだが、まあそんなに変な予稿ではなかった。しかし他の研究室はバラバラで、研究室の学生が全員例外なくしっかりした予稿を出している研究室もあれば(学生によると、その研究室では4-5回添削されているらしい。やはりそれくらい往復すると、論文の体裁をなしていない予稿は駆逐することができる)、これはいかがなものか? と思うような予稿を学生が出している研究室もある。

3年間毎年見てきて、これは学生の能力によるものではなく、研究室のポリシーによるものだということが分かったのだが、さすがに教育的には(少なくとも大学院に進学する予定の学生くらいは)ちゃんと指導したほうがいいのでは、と思っている。あるいは、予稿ではなくジャーナル文化の分野だと、そもそも国際会議も含めて予稿は重視しない(卒論のほうをちゃんと書かせる)、というスタンスなのだろうか?(情報系と通信系の研究室で、かなり予稿のクオリティが違うが、そもそも力を入れている場所が違いそう)

他の情報系の研究室の学生の研究についても、副査になる可能性が低い学生も含めて、ポスターで色々コメント。去年までは、主指導教員の手前もあるのであまり突っ込んだコメントは避けていたのだが、今年からは反映してもらいたいことはしっかり「こういう実験をしてほしい(こういう実験がないと、査読に耐えられる内容にならないが、こういう実験をして有効性が言えれば、それなりの場所で発表できるはず)」などと伝えるようにした。コース全体のレベルを上げることが、長期的には(10年以上先を考えると)必要だと思ったからである。特に時間を取られるような仕事ではなく、集中して話を聞いて学生にフィードバックするだけ(いずれにせよ、話は聞かないといけない)なので、うまくいけば費用対効果は高いはず……。

研究室別では、高間研、石川研の学生の発表は(うちの学生も含めて)、予稿集もしっかりして発表も分かりやすいが、実験の詰めの問題で、国内の全国大会での発表は問題ないが、査読付き国際会議に投稿するにはちょっと足りない、みたいな感じで、大学院に進学して研究テーマを続けるか変えるか分からないが、研究としてはこういう視点を持ってほしい、という意識でコメントしている。あと、貴家研の学生の発表は、学部生でも予稿・ポスターともにみんなそのまま査読付き国際会議に持っていけるような内容で(ネガティブリザルトでも、しっかり分析していて丁寧な仕事をしている)、うちもそういう研究室にしていきたいものである。

今の B4 が M2 になるころには、ちゃんと指導教員以外がコメントする効果が分かるわけだが、どうなるだろうなー。