将棋でも渦中の人は大変だ

今日も今日とて朝から修論の要旨添削。要旨といえど2,000字(A4 裏表)あるので、けっこうチェックに時間がかかる。

午後は娘と外に行く。保育園で木の実を拾うのにはまっているようで、延々木の実を拾っている。以前は抱いて上って滑らないといけなかった滑り台(高さ2m以上)も、保育園の連絡帳に書いてあったように、自分で上って滑っている(順番待ちもしている)。大きくなっているとともに、社会性も身につけているようである。

Kindle ではなく紙の本だが、谷川浩司「常識外の一手」を読む。

常識外の一手 (新潮新書)

常識外の一手 (新潮新書)

日本将棋連盟会長としてのお話、電王戦の裏側など、とても興味深い。谷川より下の世代はたくさん人が揃っているのだが、この世代は谷川が圧倒的なので、いろいろ大変だったこともあるだろう、と涙なしには読めない。本人は将棋を指したいが、ご恩を返すために会長として尽力したり、というような運営の話がつらつらと。将棋自体の話はほとんどないが、自宅で「研究会」と呼ばれる定例会を導入したり(島研から来ていると思うが)、将棋界のレベルアップのためにどういうことをしてきたか、という話は、将棋以外でも役に立つ話であり、むしろ将棋のルールを知らないような人でも参考になるのではないかと思う。

そういう意味でタイトルと本文はほとんど関係ない(釣りにすらなっていない)が、強くなるためにはまず知識を身に付けること、という話が心に残った。知識があればよいというものではないが、知識がなく自己流で指してもプロにはなれないし、知識をつけた上でそれを乗り越えないといけない、ということである。

研究も同じで、サーベイだけしていていい研究ができるわけではないが、他人の研究を見ると独創性が失われる、などと言ってサーベイしないのは筋が違って、サーベイは常に必須であり、それをした上でそれを乗り越える必要があるのだ。(サーベイとは、何も最近発表された論文だけをサーベイする、という意味ではなく、古典も含めて広く基礎知識を身に付ける、ということこと)

教科書的な知識や最先端の情報は今の時代圧倒的に手に入りやすくなり、いわゆる「知の高速道路」は整備されてきているが、「高速道路の先の大渋滞」という問題も広く知られており、舗装されているところは当然高速に進まないと入り口にも到達できないが、高速道路が途切れたところから先、「けものみち」を車を降りて先に進んでいけるかどうか、が重要である。そういう乱戦の舞台では、自分のように他の分野から来る人とか、複線的なキャリアの人が力を発揮できたりもするので、自分としては、まず自然言語処理における「知の高速道路」を整備して、みんなそこから先で戦えるようにしたい。