研究室で研究するのが一番力がつくような環境にしたい

午前2時半からメール処理。けっこう溜まっている。

syncha が遅いという報告があったので、xargs で20並列で動くようにしたところ、2時間ほどで終わるように。元々の見積もりでは2週間だったので、だいぶましになった。(その後、そもそもサーバにインストールされている CaboCha の文節区切りが変なのでやり直しになったが……)

午前中は論文紹介で、

を紹介してもらう。pLSI の原論文の一つで、自分もM1かM2のときに読んだ気がするのだが、そのころは全然分からなかったなぁ。いまは hiroya-t さんの「言語処理のための機械学習入門」もあるし、いろんなスライドが見つかるので、だいぶ初学者でも勉強しやすくなったけど。

これくらいの年代の論文は、いまと違ってアイデアがシンプルで背景もしっかり書かれていてよい。もうなかなかこういう論文は書きにくいほど、専門が細分化されてしまっているように思うけど。

昼間からB3の応用実験のガイダンス。後期に「プロジェクト研究」という比較的大きな実験があるのだが、その説明である。時間が若干余ったので、新任の S 井先生に「アメリカの大学院生活について話せませんか」と無茶ぶりしたところ、さっと Mac を開いてスライドを取り出し「こんなんでいいですか?」と見せてくれる。すごい。さすがすぎる……。

PhD生活について、インターンシップの話とか、就職やお給料の話とか、在籍中の負荷とか、卒業率とか、赤裸々に話していただいて、とてもおもしろい。これを聞いてアメリカの大学院に進学したくなる人はドMだと思うが、そういう人こそ現代に求められているので、ぜひ自分自身清水の舞台に飛び込む気持ちで挑戦しようという人が出てくるといいな。

「最近毎日5時間しか寝られない」と言ったら「5時間も寝ているのか」と同級生たちから驚かれた、という話が象徴的だったが、本気で勉強しようと思ったら、それくらいやる覚悟が必要(自分はNAISTに入ってから1年は平日の睡眠時間は3時間だった)だし、それだけ圧倒的に勉強すると、一生涯の財産になるので、受験生にでもなったつもりで勉強に没頭してみるとよい。

14時からクラウドコンピューティング講演会。Elasticsearch の [twitter:@johtani] さんとクックパッドの [twitter:@PENGUINANA_] さんに、学部3年生を主なたターゲットとしてそれぞれトークをお願いしていたのである。

今回も Twitter で実況中継することにして、いろいろつぶやいてみた。前回よりも盛り上がった気がする。まあ、今どきもう Twitter ではないのかもしれないが、こういうのは Twitter くらいのほうが、お互い気軽である。

うちの学生にあまり基礎知識がないので @johtani さんには申し訳ない感じであったが、大学院に進学する人は、基本情報技術者試験くらいは受けさせたほうがいいんじゃないかと思った。データベースの授業を取っていなくても、データベースの基礎くらいは学んでいていいと思うのだが、3年前期までにそういう授業がないのだろうか……(意味的には2年後期あるいは2年前期くらいにあるとちょうどよいのだけど)。

@PENGUINANA_ さんの話は本当に深い話で、学生は生の検索クエリログデータやセッションログデータの分析から分かることで興奮していたが(それ自身は全く同意で、自分も初めて検索クエリログやセッションログを見たときは、宝の山だと思ったものである)、自分はそれ以外のところがいろいろと感じ入る。

一番心に残ったのは、ユーザからの評価を大事にしているという話で、アンケートを取るが、言われるがままに直すことは絶対にしない、意見を参考にして議論してから対処する、というもの。自分などは去年から毎週授業をするようになって、隔週くらいでアンケートを書いてもらっているのだが、何かコメントがあるとすぐ対応していて、どちらかというと「言われるがままに直」していたな、と。

最近でこそ、「簡単な問題を出すことがよいことだとは思いません」なんて反論して採用しないことも増えてきた(半分以上)が、せっかくもらったコメントに対し、アクションをしない、というのは相当勇気が必要で、言われたようにしなかったことで愛想をつかされたり、言っても無駄だと思わせてしまう危険性と隣り合わせで、いつも本当にこれでいいのだろうか、という葛藤がある。直さないより、直すことのほうが遥かに簡単。しんどいけど、たぶん悩みながら自分の信じる道を行くのがいいのかな、と思った。

あと、最後の総合討論で、これからの時代に必要な技術は何かお聞きしたら、@johtani さんが「技術者は英語力が必要」とおっしゃっていたのと、@PENGUINANA_ さんが「個々の技術ではなく、背景の考え方や哲学を勉強しておくとよい」とおっしゃっていたのが、学生に届くといいな。学生のうちに勉強しておくとよいのは英語、数学、プログラミング(データ構造とアルゴリズム)の3つで、これらは時代が変わっても必要な基礎知識だし、プログラミングに関係する仕事をするなら、仕事が始まっても学部時代の教科書を引っ張り出して再度勉強することがあるくらい大事なので、真面目に勉強して損はないのではないかな。

講演後、お2人を研究室にご案内。勉強会や研究環境の説明をしたら、@PENGUINANA_ さんから「こんなに充実しているなら、下手なインターンやアルバイトをするより、研究室で研究したほうがいい」とおっしゃっていただいて、恐縮ながらありがたいお言葉であった。個人的には学生には外で研鑽を積んでほしいとも思う反面、研究室で研究する人にはそれ以上の体験をしてもらいたいとも思うので、企業の方にずっとそう言ってもらえるよう、研究室を作っていきたい。

夕方からは共同研究のミーティング。講師の方々とお話しでもできればよかったのだが、最近タイムスケジュールが過密で、今日しか入れる余地がなかったのである(ランチをご一緒できればよかったのに、コース幹事で授業の司会をしないといけなかったので、できなかったし……)。いろいろと忸怩たる思いもあるが、今年は時間がもっとも貴重なリソースなのである。(というか、最近お昼にご飯食べる時間がないことも週に1-2回ある)