若手が挑戦することを奨励する

先週くらいから一気に暑くなったな〜。奈良は、というかNAIST奈良県でも北部、山に囲まれているので、昼は暑くても夜は温度が下がるので、そんなに過ごしにくいわけではない。山で思い出したがNAIST の校歌を久しぶりに聞いてみた。一時期 BGM にして繰り返しかけていたのだが、完全に忘れていた (笑)

先日 NAIST 図書館で見つけた「さきがけものがたり」を読んだ。(車を手放してからというもの、本屋に行くのも大儀なので、図書館の利用率がさらに上がっている)

さきがけものがたり―未来を拓く研究者たちのドラマとその舞台

さきがけものがたり―未来を拓く研究者たちのドラマとその舞台

「さきがけ」というのはJSTという文科省の外郭団体が運営している研究者の支援制度で、研究者個人に年間1,000万円程度の研究費を3-5年間出し、なおかつ所属組織がない人にはフルタイム分のお給料も(研究費とは別に)出す、という他に例を見ない制度である。この制度は日本独自のものであり、諸外国からもこれだけ若手研究者に独立性を与える研究費はないと高く評価され、アメリカ・スウェーデンでも「さきがけ」を模倣した制度がスタートしたとのことである。「さきがけ」制度自身が世界における科学技術行政の「さきがけ」となっている、というのはすばらしいことである。

本に書かれているインタビューは全部サイエンスポータルさきがけものがたりで要約が公開されているのだが、それぞれの人たちがどういう経緯で研究者になったか、さきがけに出会い、その後どう変わったか、というのは読んでいておもしろい。とにかくみなさん苦労されている。「さきがけがなかったら、自分は研究を続けられなかった」という方々ばかり……。

あと、pp.124-152まで、「特別コラム」として「さきがけ誕生秘話」が書かれているのだが、これがいちばん興味深かった。それまで国が運営・配分してきた研究費は研究者に対して支援する制度ではなく、研究グループに対して支援する制度だったので、個人を対象にしたさきがけは当時の大蔵省の猛反発に遭い、JSTの担当職員は合計半年家に帰らず「篭城」することでこの制度を通し、守り抜いたとか。

さきがけは完全に自由に自分の研究テーマについて研究するものではなく、年度ごとに指定された研究領域の中から選択して出す、という特徴がある。そして、領域名は基本的に「AとB」という名前になっているのだが、これはあえてそういう名前にしていて、「A and B」という意味ではなく、「A and/or B」であって、どちらかに引っかかる(ピンと来る)人が応募してほしい、ということで、とにかくやりたい研究がある人を手広く取りたい、というメッセージを込めているのだと。

また、物理と化学の専門家しか審査委員にいないのに、テーマ名を見て「勘違い」して応募した生物の人も、「この研究はやる意義がある」と採択された、という話がインタピューにあるので、「いまは当てはまるテーマがない」と思う人もいるかもしれないが、A と B のどちらか(あるいは両方)にピンと来た人は、我田引水でも出してみる価値はあると思う。

ちなみに学生でさきがけに通った人もいるので、斬新なアイデアがある人は挑戦してみるとよいと思う。

IPA の未踏(未踏ユース)も独創的なエンジニアを育てるよい制度だと思うが、ときどき打ち切りの噂が流れたりするのが残念である。今年もやるみたいなので、腕に覚えあり・作りたいものがある人は、ぜひトライしてみては。(去年は7月20日から公募されて、9月30日が公募〆切だった)

NAIST も学生向けの研究・開発提案プロジェクト(CICP、1プロジェクトあたり最大100万円を措置)をやっているのだが、2009年度で予算措置がなくなってしまい、2010年度は研究科独自予算で規模を縮小して実施したと聞いた。10個プロジェクトやらせて1個でもおもしろいものが出ればいいだろうし、参加した人が(当初の期間内では成果を出せなかったにしても)なにか学んでくれればいいと思うし、今年は募集がまだ出ていないようだが、こちらもぜひ続けてほしいものである。