若手研究者が活躍しやすい NAIST の実現に向けて

元々 @tom_shibata さんとランチする予定だったが、都合がつかなかったので、先週の情報科学研究科を中心した若手の会で教えてもらった男女共同参画室ランチミーティングに参加させてもらう。結論から言うと、大変勉強になった。毎週火曜日にやっているらしいので、今後もちょくちょく出てみたい。
http://www.naist.jp/gender/index.html
最初は「子ども作るのは2-3年後くらいだから、いまから参加しておいて、自分が子育てで大変になる前に制度が整うといいな」というくらいの軽い気持ちで行ってみたのだが、託児所を作るだけで本当に苦労されている、という話を聞いてびっくりする。託児所の設置を検討します、と上層部が言う割には、本当に「検討だけする」という感じで、部屋を申請しても割り当ててくれないとか、いろいろ問題があるようで。

NAIST はH21年度の科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成事業」というのに選ばれていて、3年だか4年だかプロジェクトの予算がついているので、男女共同参画室もでき、改善しようという姿勢は見せているのだが、予算がなくなったあとの維持管理費がないので、長期間持続するような制度や施設を作ることに難色を示しているみたい。こんな山の中で子育てしないといけないのに、それを支えるシステムがないこと自体がおかしいのに、それにお金をつける気がないのであれば、それもひどい話。

大学宿舎に入ってみて、どうやら専業主婦しているとおぼしき方々がかなりいるようなことに驚いたのだが、いまの NAIST はそうせざるを得ないのかもしれない。こういう状況だと若手の教職員が NAIST に来てくれなくなる可能性があることを NAIST はちゃんと認識した方がいいと思う。妻から東大の話をよく聞くのだが、東大にも男女共同参画室があり、本郷、駒場、柏、白金といった主要キャンパス全て学内に保育園があるし、出勤するお父さんが預けてから研究室に行ったり、もしくは帰るとき迎えに行ってから帰るのも日常的な光景だそうで(本郷では弥生門の近くにあるので自分もよく通りがかる)、曲がりなりにも研究大学院大学を標榜するのであれば、NAIST くらいの規模の大学院大学であれば、四の五の言わずに設置してほしいものである。(と、数年後に子どもを産むであろう自分は思う訳だが)

それで託児所にかかる費用の概算を見てみたのだが、日中預けると1時間あたり2000円台前半、夕方から夜間(22時まで)に預けると1時間あたり2000円台後半かかるようで、1人の人につき何人か子どもを見てもらえるのだと思うが、だいたい託児所の維持に(利用者から利用料を徴収したとしても)大学内に設置するとどこもランニングコストが年間1500万円くらいかかるそうで、確かにそう聞くと恒常的に設置するのは大変なのかもしれないが、必要なコストじゃないのかなぁ。(節約して捻出できる金額のようにも思えるし、そもそも大学の中期計画の中に最初から入れておくべき)

母が以前「稼いだお給料が全部保育園代に消えても女性は仕事をしたほうがいい」と言っていて、自分も女性は家庭以外にも評価される場所、もしくは家族以外の人と喋れる場所があるのは重要だと思っていたが、実際保育園にかかる費用をこうやって目の当たりにすると、少なくとも0歳児や小さいうちはどちらかが仕事を辞めて専念するという気持ちも分かる。(よく病気したりするそうだし)

女性研究者に対するアンケートで、女性が研究を続けて行く上でなにが一番解決してほしいか、と書いてある調査の結果を見ると、「育児や出産があるのでそれを考慮した人事評価をしてほしい」(ちなみに情報系はバイオや物質と違って在宅で勤務しやすい分野で楽なようである)といったような項目は真ん中くらいの順位で、トップと2位はダントツで「時短勤務や在宅勤務など弾力的に働けるようにしてほしい」と「託児所や保育園といった育児支援を整備してほしい」というもの。

働きたいのにそれを許さない硬直化した制度や、それを支援する施設も精神もない、というのが問題だと思うのだが、NAIST みたいな先進的な大学でそれができていないというのはむしろ恥ずかしいことだと思うし、今日のランチミーティングでも「海外と比べるまでもなく、日本の他の大学と比べても NAIST育児支援は論外すぎる」というような話を聞いたし、これは早急に学長や役員会のレベルでトップダウンに解決してほしいものである。

若手(女性)研究者に対する研究費的な支援はたくさんあるのだが、それは対症療法というか研究者個人を対象に支援しているだけであり、研究者の人生は個人の人生ではなく研究者のパートナーや子どもも含めた家庭の生活なので、こういう育児支援は絶対必要。研究者にだけ支援していればよい、(男性)研究者の尻を叩いて論文書かせればよい、というのはいかにもマッチョな発想であり、家族の満足度を最大化するためには必ずしもいい方針じゃないと思う。

ちなみに今日のランチミーティング、参加者13名中10人が女性、3人が男性(含自分)で、普段男性のほうが多い環境にいることがほとんどなので気がつかなかったが、最初男が自分1人しかいなかったとき、「ああ、立場が逆だとこんな感じなのかぁ」と感じることもあり、もっと男性の若い人がこういう共同参画に協力するといいんじゃないかと思う。