博士号を取ったあとの研究の方向性

朝、いま情報系の学部3年生で、日本の大学院に進学するか、それとも海外の PhD コースに進学するか悩んでいる、という人と武蔵境のドトールで1時間ばかりお話。日本で就職することを考えると日本の大学院(修士)に行く合理性も高いが、別に今後ずっと海外生活でもいいならアメリカの大学院も検討してみては? とアドバイスアメリカの大学院に進学してしまうと、一生で一度しか使えない新卒カードがなくなってしまうのが痛いが、「新卒カード」なんてものに頼らないで生きていくなら問題ないわけで……。

理系大学院留学―アメリカで実現する研究者への道 (留学応援シリーズ)

理系大学院留学―アメリカで実現する研究者への道 (留学応援シリーズ)

ちなみに最近は新卒優遇するのもそれなりに理由はあるのだなということが分かったので、新卒主義撲滅!とまでは言わない。新卒優遇しないとどうなるかというと、大学を出ても就職できない人がうようよする社会になってしまう (新卒だろうが経験者だろうが持っているスキルで判断されるならそうなる) わけで、それはそれでどうかと思うのである。

さて、以前情報処理学会山下記念研究賞を受賞しますに書いたように、昼から山下記念研究賞の表彰式に出てきた。@issei_satoくんと同時受賞なので、隣に坐っていたのだが、式の前若手向けの研究費の話ばかりしていて周りの人は苦笑していたかもしれない(汗)
大会奨励賞の授賞式は論文のタイトルも読んで一人一人に渡していたので、この調子で進んだら3時間かかりそう、と思っていたのだが、山下記念研究賞は10人くらいずつひとまとめに壇上に上がって「おめでとうございます!」という感じだったので、あっさり終わる。いろいろ思うところあり、別の研究でもう一度この壇上に上がれたらなと考えていたのだが、「山下記念研究賞は一人一回までの規定ですよ」と教えていただき、調べてみたら確かに……

第15条 山下記念研究賞は、研究会(シンポジウムを含む)に発表された論文のうち、特に優秀なものを 選び、その発表者に贈呈する。
第16条 表彰する論文は、原則として各研究会から毎回1編乃至2編以内とする。
第17条 原則として同一人は、同一研究会において重ねて山下記念研究賞(旧研究賞を含む)を受賞でき ない。

松本研で情報処理学会自然言語処理研究会(NL研)以外の研究会に出している人、そういえばあまり見たことないな〜(@togiso さんは今回人文科学とコンピュータ研究会で受賞されていたようだが)

会のあと櫻井さんと外で少しお話。昨日の ERATO セッションのときにもお話があったが、3月1日から九州大学の准教授に着任されたそうで、おめでとうございます。夫婦で研究者の方々のお話を聞くと、夫婦ごとにそれぞれの形があるのだなぁと思うことしきり。どうするのがいいのだろう。

午後プライバシー保護データマイニング (PPDM) のセッションにも出てみる。こちらは以前も PPDM の勉強会に出させてもらったこともあり、イントロ的な話は知っていたが、プライバシー保護リンク解析という研究テーマがあるというのを知ってびっくり。自分の情報を出すことなしにたとえば PageRank が計算できたりするそうで。自然言語処理でもスペル訂正とか日本語入力とか、あまり自分が入れているものを知られたくない状況はあるわけで、そういうところで使えるといいのだが、けっこう処理は重いようなので、将来的な方向ってことかなぁ。

懇親会に行ってみると id:s-yata さんがいらしたのでいろいろとお話したり。二宮さんも交えて四国トークに花を咲かせたり (自分は父が香川、母が徳島出身なのでルーツは四国なのだ)。大学教員も学部生の人数が多いと大変だということを聞く。NAIST は学部がいないのでそういう負担はないが、NAIST 以上のところなんて滅多にないだろうなぁ……。関西住みやすさランキングなんての見ても NAIST の近くが軒並み上位にランクインしているし、子ども育てるならこのあたりが一番いいと思っているのだが……(ちなみに上記リンクは「ファミリー向け」なので、恐らくほとんどの NAIST の学生が該当する「単身者向け」ではないので、学生にはあまり住みやすくないのだろうとは思う)

昨日今日とお話をお伺いした人たちけっこうさきがけの知の創成と情報社会に採択されていらっしゃるので、やっぱりあのさきがけに入れたらよかったかな〜と思いつつ、やはり圧倒的な力不足であったなということを痛感。たまたま審査してくださった方がいらしたので、ちゃんと審査して面接に呼んでくださったお礼と近況報告などすると、落とした理由(一応書面で20行くらいの詳細なものをいただいていたが)をもう一つ教えてくださって、どうやら「自分自身で考えたのではなく、指導教官が考えた研究テーマをやっているようだったので落とした」ということだったそうだ。う〜ん、さきがけに応募するのは松本先生には相談しなかったし、たぶん内容も松本先生が考えているものとは相当違うと思ったのだが (そもそも自分の論文の共著者に松本先生は半分入っていないし)、そう思われても仕方ない面もあったのかなと思い、ショックを受ける。

たぶんさきがけが特殊な研究費で、過去の実績がどうこうというより、突拍子もないようなハイリスクの研究を奨励する研究費だからだろうが、もっと踏み込んで (これまでの自分の研究から離れて) 書いてもよかったなと思った。一緒に「申請する研究費によって性格が違って、たとえば民間企業の助成だったら応用につながるような書き方がよかったりするので、単に内容をコピー&ペーストしてフォーマットだけ整えるのではなく、その研究費でなにが求められているのか意識して書くように」とのアドバイスもいただき、そうだよなぁ、去年はそれが足りなかったなぁ、と痛感する。

他にも懇親会で@issei_sato くんから@junsakuma さんを紹介してもらい、一緒に研究費の申請についてのレクチャーを受けたり (笑) いろいろあるのだなぁ。まあ、今の自分に足りないのは研究費や設備ではなく自ら研究する時間と精神力だと思う(周りの人の研究を手伝っているだけで1日が終わってしまう)ので、むしろそこをなんとかしないといけないわけだが……。

帰り際 @iwnsew さんに話しかけられ、いろいろと自然言語処理についてお話したり、インターンシップについてお話したり。Dに行く人は海外の研究所でインターンシップをすると視野が広がると常々思っているので、積極的に出て行く人の話を聞くと嬉しいものである。そして @tkksnk くんとオハイオで会ったという元 NAIST助教をしていた方ともお会いする。うーむ、世界は狭いものである。