ウェブ学会と今後のウェブ研究

第1回ウェブ学会というのが開催されていた。博士論文の〆切前のこの時期東京に行くのは不可能だったが、幸いにもストリーミング中継されていたので、半分くらい見ることができた。いちばんおもしろかったのはやはり最後のセッションで、録画も公開されているので、興味がある方は参照されたい。

emiko-y さんの感想が冷静なところだが、自分もウェブ「学会」と言われると、??? と思ってしまうのだが、確かに学会や企業を横断的につなぐというのはとてもいい試みだと思う。もう一つの方向性としては、楽天研究開発「シンポジウム」(カンファレンス、でもよい)のように、場所だけを提供します、という黒子に徹する、という立場もあるし、自分としてはそのほうが好きなスタイルではある。企業の名前が冠されてしまうのは善し悪しだと思うし、もう少し中立的でもいいと思うが、プロ野球で企業が各球団を所有するのと同じで、別に各企業がそれぞれ知名度を上げるカンファレンスを主催するのでもいいと思う。

内容については @taku910 さん、ダヌシカさん(@ymatsuo さんTwitter にいた)、@toyodam さん、id:naoya さんの話が聞けたりしたので、楽しかった。Twitterustream (動画)のコメントを見ていると、ちょっと研究と一般の人とでの温度差がとても気になったが、見栄えがする研究はとても一般受けする一方(@toyodam さんのとか)、どこが難しい、新しい問題なのかっていうのは分かってもらいにくいのだろうなぁと思ったり(ダヌシカさんの発表とか)。確かに研究的に新しいから一般的にもすごいってわけでもないのだが、ウェブ「学会」だというのに、なんだか切ない。そういう意味では taku さんの話とか naoya さんの話とか、テクニカルな内容なのにみんな評価していて(たとえば「MapReduce について聞いたことがある」という人が1/3くらい挙手したそうだが、実際「MapReduce なんて単語初めて聞いた」という人も Twitter でちらほらいて、そちらのほうがびっくりした!)、すごいなぁ、ありがたいなぁ、と思った。

こういう「学会」なり「カンファレンス」なりに、研究者的視点(いわゆる「上から目線」)から言わせてもらうと、やっぱり(狭義の)研究者というのは研究者コミュニティで認められた国際会議で発表しないと意味がないので、もっと一般の人に研究の成果を還元したい、分野外の人とつながりたい、という気持ちがないと、参加するインセンティブがないのだと思う。一部の研究者やエンジニアの人たちはそういう意識があるのですばらしいと思うが、もっといろんな人がそうなってほしいものである。逆からのアプローチとしては、こういう場所に来るのも業績にすれば、業績をエサに研究者が釣れる、というのもあるだろうが、なんかそこまでして研究者に媚びることもないと思う。

運営としては、こうやって「学会」の内容を全部中継(実際は東大の安田講堂でやったので、数百人以上入るはずだが、中継を見ていた人は1000人以上いるようだ)したり、それを録画公開したり、質問は Twitter で受けたり(というか Twitter 経由での質問しか認めない、という運用!)など、さまざまおもしろい試みがあって、すばらしかった。ウェブを中心とした「学会」だと思うとちょっと違って、「(ウェブを口実にした)学会」や企業の活動、という意味で、「学会ウェブ」のほうが適当な名前かもしれない、と思いつつ、最初の試みとして、ウェブ中継をイヤホンで聞きながら、研究室のディスプレイの前で何回も一人拍手したくなったくらい、おもしろかった、ということを、企画・運営・参加された方々に伝えたい。