発表で優秀賞を受賞する

今日は第3回自然言語処理シンポジウム(情報処理学会第229回自然言語処理研究会)の2日目。午後は雨の予報だったので車で行くべきかどうか迷ったが、昼間の運営委員会のお弁当を持って帰らないといけないし、荷物をコンビニまたは配送センターから送らないといけないので、車で行く。

会場に着くとまだニコニコ生放送の配信アルバイトの学生たちが来ていなかったので、用意したりする。

今回は招待講演を [twitter:@tetsuyasakai] さんにお願いしていて、とても楽しみな内容だったのだが、幹事なので受付でニコニコ生放送越しにお聞きしたりする。統計的有意差の検定は、自然言語処理でもここ5年ほどは求められることが増えてきているので、非常に有益な内容で、受付の学生も会場で聞いてもらったのである(スライドを公開してくださっていて、非常にありがたい)。本の宣伝も貼っておく。

情報アクセス評価方法論

情報アクセス評価方法論

多分これまでは、統計的な検定をしなくても明らかな差があるような発展途上のタスクが多かった、という事情もあるだろうが、どれくらいの事例にタグ付けをすればいいか、みたいなのはあまり意識しないでタグ付けをしている人も多いだろうし、少しずつ研究分野が成熟してきているのだろうと思う。(サンプルサイズなんかの議論が必要かというと、そうは思っていないが、タグ付けの仕様が落ち着いてきたら簡単な分類器で分類してみて学習曲線を描いて、データの量と求められる精度の間の見積もりを取る、というようなことは必要だと考えている)

お昼は NL 研の運営委員会。学会関係の仕事の常として、幹事だと色々と気苦労が多くて研究会が楽しめないのだが、一度はこのような運営を体験しておくことで、毎回感謝の心で学会や研究会に参加できるようになる。(プログラム委員は研究に関する委員なのでまだ楽しいと思うが、お弁当の手配や懇親会の調整は、あまり喜んでしたいという人はいなさそうである。もちろん、誰かがまとめる必要があるのだが)

午後も淡々と研究会の受付でニコニコ生放送の配信を見ながら待機。以前は NL 研の様子を Twitter でも連動して実況したり(それを後で Togetter にまとめたり)していたのだが、今はその時間が取れないし、実況しても見合わない気がして、止めてしまった(あと、運営側の立場の人がやると公式的なクオリティやリスク管理が求められるだろうし、それに対応するのはしんどい)。ニコニコ生放送だと何人が見ているかは分かるので、その数字を見てこの配信には意味があるのだと毎回確認しながら続けている。生放送を持続可能な形にして次の幹事団に引き継ぐのが自分の来年度の一番大きな仕事だなぁ。

クロージングにて、昨日発表があった [twitter:@moguranosenshi] くんの以下の発表が情報処理学会第229回自然言語処理研究会優秀発表賞を受賞したとの知らせが。

幹事をしている間は基本的に毎回うちの研究室から2件発表するつもりで、いつか優秀研究賞を受賞したいと思っていたのが実現してよかった。

この「優秀研究賞」というもの、2年前に創設された制度で、自然言語処理関係の学会は他の分野と違ってストイックであまり表彰しないので、少しでも表彰して他の分野との差を埋めよう、という企画である。例えばデータベース系の国内の全国大会の DEIM は2割の発表が受賞されるのに対し、言語処理学会年次大会では3%しか表彰しないし、こういう不均衡は若手にとってよくないだろう、というわけである(たとえば就職のときに受賞歴があるかどうかはプラスに働くだろうが、言語処理を専門とするだけでかなり受賞のハードルが上がってしまう)。確かに2割と言わないでも、1割くらいに拡大してもいいと思うし、件の「優秀研究賞」も10件に1件程度を授賞対象としている(「該当なし」になることもあるし、15件くらいの投稿でも甲乙つけがたいときは2件に授賞することもある)。

うちの研究室からの発表、割としっかり書いていると思うのだが(見切り発車の発表は許可しないし、許可した発表の原稿はちゃんとコメントするので)、自然言語処理の学会で受賞したりトップカンファレンスに通るような研究をするにはアイデアレベルでの最後の一押しが足りないと感じていて、どうすればいいのかと日々悩んでいる(インクリメンタルな研究が多いので、もっとリスクのある研究に取り組むべきなんだろう)。受賞も1回だけだと運がよかっただけかもしれないので、次は授賞候補の常連となって毎年受賞する、というサイクルを続けたいと思っている。

帰りは運営委員会で出たお弁当のゴミと情報処理学会に送り返す研究会開催キットを積み、NLC 側の担当委員である K 山さんと駅前のコンビニまで車で行って発送し、シンポジウム完了(正確には、学会の口座に収益を振り込んで精算するところまでやらないと終了でないが)。2年前のシンポジウム開催はすずかけ台だったが、家から近いと楽だということを痛感する。来年の会場はどこがいいんだろうか……。