博士の学生のための就職活動日記

いろいろあって名大の萩原さんと夕食しつつ、就職活動について聞いたり。萩原さんは自分と志向性が似ていることもあり、同じく自然言語処理の博士後期課程の卒業生として、ちょうど1年先に就職活動をしてくれていたので、ちょくちょくお話を聞いていたのであった。

そういう就職活動記が博士のための「けものみち」就職活動。今日見たらすごくブックマーク数が増えていたので、ホットエントリー入りしていたようだ。

個人的におもしろかったのは

「就活で理想なのは、応募した会社全てから同時に内定が出ること」とMSRでインターンしていた時に同僚が言ってた。まず全てのオファーが出そろうまで待って、そこから最適なものを一つ選ぶそうな。新卒採用で無い限り、オファー(内定)の出るタイミングはなかなか予測できないし、内定の長期間のキープもほぼ不可能である。(ただし、面接のスケジュール調整をうまく使って、複数社の応募の進行具合を調整するという技もある)

そこで、複数社に応募する場合は特に、応募するタイミングと順番が重要になってくる(この件に関して自分はダメダメで、色んな人に多大な迷惑をかけたのだけど・・・)このとき参考になるのが、「最適停止の理論」というもので、これは例えば10社を順に受けるとき、どの会社から内定が出た段階で就活をストップすべきか、ということに関して確率的な最適解を与えてくれる。

というところで、最適化問題として就職停止問題(?)を扱うというの、やはり工学の人は考えることが違う(笑) 自分も現在就職活動中だが、受けているところ全部最終面接っぽい段階に来ているので、そろそろスケジューリングの問題かもしれない。

  1. 「迷ったら、人と違う方を選ぶ」
  2. 「迷ったら、得しそう、ではなく、楽しそう、を選ぶ」
  3. 「迷ったら、より難しそう(チャレンジング)な方を選ぶ」

というモットーも、自分と同じ感覚かなーと思ったり……(そして妻に小言を言われる、みたいな(笑))。

そんなこんなで

友人・知人にはある程度伝えたけど、4月からバイドゥ百度)株式会社の R&Dエンジニアとしてはたらくことになりました。いろいろと紆余曲折があったけど、上の指針に照らして、単純に「最も人と違って、最も楽しそうで、最もチャレンジングな」ところを選べたと思う。ちなみに最初の勤務地は上海のR&Dセンターの予定。今からワクワクしてます。

ということで、自分も百度オフィスは2回遊びに行かせてもらったし、id:mizuno_takaaki さんからお話いろいろと聞かせてもらって「ここはここで楽しいだろうなぁ」と思っていたので、最初聞いたときはちょっとびっくりしたけど、納得。自然言語処理だと最近は大学のポストもあまり空かないし、必ずしも論文を書くことが第一のプライオリティではない人も多いので、博士出て大学に残らずにこういうふうにエンジニアとして企業に就職する人もそれなりにいて、それはそれでうまく産学のバランス取れているいい分野なんじゃないかな、と思う。

「え、百度」と思う人も多いのかもしれないが、自分も NAIST 来る直前にpenny さんが Google に行くと聞いたとき(2005年のこと。penny さんはその前の年に Googleインターンに行っていた、と思う。当時のインターンは無給だったらしいが……)、一瞬驚いたのだが、2005年だったらすでにかなりの人が Google を使っていたにもかかわらず、それでも penny さんが行くのは(大学院を辞めて行く、というのもあったせいかもしれないが)びっくりするくらいだったので、百度に行くことに対して「え、なんで」と思うのも無理ないかなと思う。Google (日本)にどんどん人が行ったのはその後のことで、先見の明があるな(行く人はちゃんと見る目があるな)と思ったわけで、たぶん同じようなことになるんじゃないかな、と個人的には思っている。

さて、萩原さんも上記エントリーの中で何回も「インターンシップおすすめ」と書いているが、自分も全く同感(学生じゃない人にはくどい話かもしれないが……)。ちなみにこういうふうに周囲の人に「(海外)インターンシップおすすめ」と言って回るのも penny さんから学んだものである ;-) 最初半信半疑だったが(海外で働くの不安だったし)、行って納得。(さらに言うと Web で日記を書き始めたのも penny さんの日記の影響であった)

なお、このブログでも繰り返しオススメしているが、今では「インターン」という「会社で給料をもらいながらお試しで働いてみる」、恋愛の例えで言うと「異性と付き合う前に一夜を共にできる(?)」という素晴らしいシステムがある。日本ではまだまだちゃんとしたインターン制度を提供している企業は少ないけど、「その会社のことを知る」という点でインターン以上に良い方法は無いと思っている。

「海外で働きたい」と思っている人は海外のインターンシップに応募して3ヶ月お試しで働いてみるのもいい(自分もそうだけど、それなりに欲求は満たされる気がする)し、大学に残ることしか考えていない人でも、企業は企業でいろいろとおもしろいこともある(そうじゃないこともあるだろうけど)ということが分かっていいんじゃないかな、と思う。なにより、研究した理論なりツールなりのユーザが非常に近いところにいてくれるというのは、フィードバックももらえていいんじゃないかな(忙しくていろいろとお膳立てしたりデモしたり、使いやすくしておかないと、ツールもらったり論文教えてもらったりしても試せないってのはあるだろうけど。)。

問題は日本だとこういうインターンシップを提供しているところがまだまだ少なく、オフィシャルに大々的に募集しているところは(自然言語処理に関係するところでは) Google, はてな, NTT 研究所, IBM 東京基礎研究所かなぁ(後者2社は大学推薦があれば……)。自然言語処理に限定したとしても、漏れはあると思うので、これだけだと思わず研究室の先輩など聞いてみるともっと出てくると思う。はてなと NTT 研究所は1ヶ月と非常に短いので、本腰を入れてなにかやるって感じじゃないと思うけど、逆に言うとはてなインターンシップは盛りだくさんで、しかもちゃんとサービスとしてリリースされるようなアプリケーションまで作るので、瞬発力も鍛えられて非常にいいプログラムに見える。

非公式に募集しているところはいろいろあるのだが、それらはコネと運(タイミング)次第なので、興味ある人は普段から興味ありそうな顔しておくと見つかる可能性が上がるだろう。もしくは松本研のような研究室であれば非公式のインターンシップ募集も(海外のも含めて)よく来るので、大学院進学を考えているのであれば、そういうのがありそうな研究室に行く、というのも手である。海外のインターンシップでも基本的に渡航費・生活費・日当(は場合によってはないことも)支給であり、松本研だと毎年1回はそういう募集がかかっている感じ。(ほとんどの場合応募すればほぼそのまま決まるのに、尻込みして応募する人いなくて流れてしまうので、もったいないな、と思うのだが……)

何社行けばいいかという問題は、0社と1社の間には越えられない壁があるので最低1社行った方がいいと思うが、1社と2社の間にも大きな壁がある(1社見てそれが企業の常識だと思ったら違うことがある)ので、博士後期課程に進学するつもりの人は、修士のうちに1回、博士に進学してから1回の合計2回行くのがベストだと思う。D3 で行く場合新卒採用の時期は過ぎてしまうので、日本的な新卒での就職も考えているのであれば、D2 の冬までには終えておくことが望ましい。D2 の1月以降は新卒の就職活動でいろいろと忙しくなるので、自分みたく D2 の2月からインターンシップ的なものを始めるのは時期的にはお勧めしない。D2 の9月-10月スタートで3ヶ月程度、というのが限度かなー。もちろん就職活動が第一義でない場合はこの限りではない。

ではでは、萩原さん明後日から百度でがんばってください! 期待しています :-)