専門を一度は捨ててやり直す

土曜日だが土曜保育をお願いしているので仕事の日。

午前中はオンラインで研究相談(キャリアについて?)に乗る。今情報ブーム、AI ブームなので、プログラミングや AI を学び直して転職したいという人がいるのだが、正直なところ能力的なものというより、常に技術について学び続けるという分野の特殊性が合っているかどうかにかなり依存する気がしている。3年後にはほとんどの技術が廃れていると分かった上で、その技術の勉強をできるかどうか、みたいな……(それに虚しさを感じる人は精神的に厳しいかも)。すごく頑張って勉強しても、大体の知識の優位性は3年も経てばほとんどなくなってしまうので、刹那的なものを感じる。もっと良いものが登場して上書きされている、というのは発展しているという意味ではポジティブなのだけど、常に更新をかけていないと自分の市場価値が落ちてしまうというのはなかなか大変かもしれず(定年の有無とは無関係に厳しい)。

あと、特許や法律、医療などドメイン知識があるかどうかも武器になるので、そういう武器がある人はそれを活かす方向で考えたほうがいいという気も。それから離れたくて情報系に転じたい人もいるだろうが、それまでの専門性を完全に捨ててももったいなくないのは、25歳以下の人だと思う。自分が M1 で NAIST に入ったときは26歳で、その経験からはとりあえず自分の出自は一度全て忘れた方がいいと思う(自分の知識がある方だとなまじ思ってしまう方が、新しい分野のやり方に慣れるのに時間がかかったり、あるいはそもそも受け入れるのが難しかったりする)のだが、10年くらい続けていると、昔やったことが活きてきたりするのである。海外留学にせよ大学に入ることが目的なら好きにやればいいと思うのだが、結局入って出たあとのことを考えると、専門を複数持つみたいにした方が自分の希少価値が上がるのである。

とはいえ自分自身、あまり深く考えて人生の選択をしてきていないので、なんとも言えない。自分の中では NAIST に行ったのはハイリスク・ハイリターンという意識で行った(そして結果的に高いリターンを得た)ので、ローリスクを志向する人には向かないのではないかなという気がしている。首都大はローリスク・ローリターンな人(学生、教職員ともども)が集まるところで、着任してしばらくはカルチャーが違って戸惑ったが、今はまあ慣れてきたし、最近来ている学生は必ずしもローリスク・ローリターン志向でもないように思っている。

午後は国際会議の原稿 x2 や論文誌の原稿 x1 を見たり、授業の準備をしたりで4時間半。土曜日にならないと翌週の授業の準備ができないというのが自転車操業っぷりを示している。