聞いているだけで賢くなっている

午前中は年度内最後の秘書さんの出勤日で、ハイパー事務処理タイム。会計書類について年々知見が得られていて、毎年少しずつ改善しているのだが、それを上回る速度で研究費とその数が増えているので、処理が追い付かないという問題。

数えてみると助教の最後の年から自分の使った経費(研究費+教育費)の総額は200万→300万→500万→1,500万→2,000万と毎年増えているのだが、額面が増える場合と種目が増える場合と両方で事務処理が発生するので、種目をあまり増やさない方が手続きが楽で、今年度から新規の案件は年間50万円以下の共同研究(企業との共同研究および科研費等の分担者)はもう受けない(無償で協力する方が手間が増えない)ことにしている。研究費で困らないというのはありがたいことで、感謝してもしすぎることはないのだが、研究費を使うにも教員の時間が取られるという問題があるのである。小口かつ単年度のものばかりだと(学生のアルバイト謝金以外の)人件費にも使えないし、金額はこれくらいでいいので、研究費1件あたりの総額の下限を抑えないと、研究自体に支障をきたす可能性がある、という本末転倒な状況なのである。

正直なところ、現在のような「AIバブル」がずっと続くとは思っていないので、今のうちに共用サーバを購入したり言語資源を作成したりするのに研究費をかけつつ(研究費が途切れても使い続けられる言語資源作成には、もっとお金をかけていいと思っている)、いくらくらいが研究室の運営に必要な金額か、というのを見積もっているのだが、学生数×30〜40万円くらいあればランニングコストとしてはいいんじゃないか、と思っている。(全員が国際会議で発表するわけではないし、年間1人1回程度の国内発表、1/3〜1/4の学生が国際会議で発表、3〜4年で個人端末とサーバの入れ替えをする、と仮定して見積もると、これくらい)

午後は年度内最後の進捗報告。そんなに時間はかからないかと思いきや、結局4時間半。必要な時間だと思うが、もっと授業期間のうちにこういう議論ができていればいいのになぁ、と思ったりする(そんな時間はなさそうだけど)。研究能力を身に付けるためにはディスカッションをすることが必要だと考えていて、少なくとも進捗報告でそれが体験できることを保証しているのだが、学生同士で各自勝手にやってくれるなら(それが理想だが)進捗報告は本当に進捗を確認するだけの軽いものにしてもいいのかもしれない。

うちの研究室を訪れる人たちから、研究室内で(雑談したり遊んだりもしているけど)研究の議論があちこちであったりするのがすごい、と言ってもらうことが時々あって、まだまだ発展途上ながら嬉しく思っている。そういう環境がデフォルトだという環境で育つとありがたみが分からないかもしれないが、少なくとも自分の経験ではこれはデフォルトではなく、不断の努力によって維持される(努力しなければそのようにはならない)環境である。

ちなみに自分の出身研究室である NAIST 松本研もそういう雰囲気で、研究室の入口のホワイトボードでなんとなく議論が始まって、気が付いたらいろいろ人が来て(耳学問も含め)参加していたり、そこに松本先生がふらっと来て話に参加したり、そういうのこそ世界水準の研究をする研究室に必要な環境だと思っているので、なんとかそういう環境に近づけたいと考えている。