研究で学んでほしい思考力

先週末〆切で言語処理学会年次大会の原稿(初稿)を受け取っていたのだが、結局(別の国際会議の原稿にかかりっきりだったので)全然手をつけられておらず、国際会議の原稿が PST かと思ったら GMT 〆切で日本時間の午前9時にあっさり切られてしまったので、やおら言語処理学会年次大会の原稿の添削をする。

学生が(査読付き)国際会議に投稿したいと言う場合、基本的に教員から止めることはないのだが、本質的ではない英文添削で指導時間が取られるのが、現在の学生数だと厳しい。研究論文としての書き方の添削なら、それに時間がかかるのは正当な時間だと思うし、一度添削してやり方を身につけてくれれば次回からは楽になるのだが……。

英文添削だと、本人が英語を自力で勉強してくれない(あるいは英語の論文をたくさん読んでくれない)限りこの成長が見込めないため、日本語で原稿を書いてもらってこちらで英語にした方が速いが、学生が作業員みたくなってしまうので全く気乗りがしない(業績としては残るが、教育的にはよくない)。研究室として特に業績を増やしたいわけではなく、学生が一番成長してもらえるようにしたいだけなので、うちの研究室の環境を活用して成長したいという学生を受け入れるべき、という話なのかもしれないが、就職することが最重要と考える学生だと折り合いが悪いのである(就職することが重要ではないというわけではないし、むしろ就職は重要だと思っているのだが、就職は単なる通過点に過ぎないので、大学院を出てからも役に立つスキルとして、学生の間は一時期でいいので真剣に研究に取り組んでほしいと思っている)。

今年新しく始めたことでよかったことは、初めて原稿を書く人には必ず1名 M2 以上のメンターをつけてメンターにまず見てもらうようにしたことで、毎年10件近く同じような指摘をしないといけなかったのが、1-2件程度に減ったことである。他人の原稿にコメントする立場になるとかなり多角的に見ないといけなくなるし、発言に責任を取らないといけなくなるので、勉強にもなるのである。教職の授業でも「教える側は教わる側より多く学ぶ」というフレーズを教わったことがあるが、教えることで身につく能力もあるので、これはよいシステムだと思った(導入したきっかけは、自分が添削する時間を捻出するのが厳しいということであるが)。

基礎勉強会も、新入生として受けたときはほとんど理解していなくても、1年後に TA をすると「ああ、これってそういうことだったのか」と理解できることがあるので、TA をするところまで含めての研究室の(寺子屋的)教育システム(サイクル)をこの3年間地道に作ってきているのだが、今年のメンタリングを受けた B4 が M2 になるころに、うちの研究室の研究システム(サイクル)も一通り完成かなと思ったりする。そこから毎年3-4件トップカンファレンスに通せるようになればいいのだが……。(質の問題はあるが、ひとまず量を確保して「あの先輩でも採択されているし、とりあえず投稿してみよう」という状態にして、トップカンファレンスへの精神的なハードルを下げたい)