計画を考えているうちが華

朝の4時から授業(オートマトンと言語理論)の資料作成。当日に作るあたり、泥縄である。3時間きっかりで終わるが、中間試験が終わるまでこの綱渡りが継続する(汗)

午前中は [twitter:@kiyota_yoji] さんが来訪。賃貸住宅情報サービス HOME'S の裏側のお話をお聞きしたりなんだり。検索や推薦、スパム対策など、いろいろ実運用から出てきた課題ならではのおもしろいお話であった。

最近人工知能学会誌の2015年5月号で「イノベーションとAI研究」という特集を担当されたそうで読んでみると、[twitter:@1T0T] さんの「イノベーションのための産学連携と基礎教育に関する一考察」が目に止まる。僭越ながら情報系の大学教員として、@1T0T さんと目指すところが似ていると思っていて、大変参考になる。特に、ニーズ重視の研究でもいいのではないか、というのと、基礎教育が大事である、という話はどちらも共感する。

自分自身、データを見てからやれることを考えたり、サーベイをしてからやれることを考えたりするスタイルが多いのだが、必ずしもそれが唯一のやり方だとは思っていないし、解決したい問題が先にある、というのはある意味健全だと思っている(それが新規性につながればすばらしい)。結局のところ、基礎体力(プログラミング力、英語力、数学力)があれば問題解決できることが多いので、そんなに早くから研究テーマを決めず、最初はひたすらトレーニングもありなんじゃないかなぁ。(データ見たりサーベイしたりするのもトレーニングだし、ニーズベースでとりあえず何か手軽な課題で研究してみる、というのもトレーニングなので、シーズとニーズの境界は曖昧だが)

午前中はメール処理。溜まりすぎていて、なんとも……。

昼から SLP(自然言語処理の教科書)の勉強会。まだ機械翻訳の章で、今日は句に基づく翻訳(デコーダ)の話である。M2 の O 和田くんが分かりやすく説明してくれる。自分が M2 の5月当時、ちょうどフレーズベースの統計的機械翻訳の研究に着手して、1-2ヶ月一気に実験を回していた記憶があるのだが、そのころはこんなに自然言語処理アルゴリズムのことを分かっていなかったし、隔世の感がある。デコーダの動作をちゃんと理解できたのは、D1 に進学して12月くらいに自分でかな漢字変換エンジンのデコーダ(ひらがなを入れればかな漢字混じり文に変換するプログラム)を書いてみたときのことなので、自分の1/3くらいの期間でここに到達していることになる。

もちろん、機械翻訳に関する教科書が英語でも日本語でも出版されたり、各種チュートリアルが充実してきたり、公開されているツール群やリソースも多数登場した、という外的な要因はあるのだが、恐らくうちの研究室の関しては、去年からちゃんとしたラインナップを揃えている勉強会群のおかげかな、と思ったりする。特に [twitter:@neubig] さんのチュートリアルおよび [twitter:@chokkanorg] さんの100本ノックの貢献が絶大で、この2つは新入生向けの演習として外せない。NLTKの演習は時間の割に効果が薄いと判断し、外してしまったが、結局のところ自然言語処理のツールを使える人ではなく作れる人を育成する、というのが研究室のモットーなので、ツールを使うだけの演習は(やらないよりは当然やったほうがいいだろうが)優先順位が低いのである(もっとも、ライブラリを使ってツールを作る、という場合にはライブラリは使うだけ、という見方もできるので、何事も相対的なものであるが)。

ちなみに、NLPチュートリアルと言語処理100本ノックは自然言語処理分野に関する貢献が大変大きいので、言語処理学会か何かで表彰できたりしないんだろうか?(人工知能学会では、何かそういう表彰制度があった気がするのだが)

午後は南大沢に移動して授業。授業中に当てて問題を解いてもらう、というのをやったのは2回目だが、1回目と比較してみんなスムーズにできるようになっている。来年はもう片方の授業でもとにかく宿題を出して、毎回当てて説明してもらおうかなぁ。

夕方に少し学振(日本学術振興会特別研究員)の申請書の添削。研究計画書は、第1稿を書き切るのが一番の山場なのだが、初めて書くとだいたいスタートが遅くて時間切れになる。たったの数ページなのだが、この数ページを書くのにちゃんと書くと平気で1ヶ月かかったりするのである。このあたりは以前も書いたことがあるのだが、書くこと自体が経験だと思って挑戦するとよいと思う。

自分自身、最近は研究計画書にしっかり向き合っていなかったのだが(落ちた計画書を手直しして出して、連敗続き)、博士後期課程に進学してきてくれた2人の研究計画書を見て大いに刺激になり、自分もそろそろ新しい研究テーマを開拓する段階か、と思ったりする。自転車に乗りながら、あるいは自動車を運転しながら研究テーマを考えるのだが、ものすごく久しぶりに、研究プロジェクトを考えるのが楽しく感じており、ものすごくありがたいなぁ、とホロリとする。