新しい学部・コースを軌道に乗せる

人生3回目の講義。今回から30分に1回くらい雑談を入れているのだが、聞く人は聞くけど聞かない人は聞かない、という感じ。全体的に反応が薄いのだが、どうも学年によって違うらしい。できるだけ、研究の中でどういうふうに今習っていることが登場するか、ということに言及してみているのだが、記憶に残ってくれるかなあ。

テクニカルライティングは最終回。接続詞の使い方や曖昧性の低い文の書き方の演習をしているのだが、個人的には「理科系の作文技術」は (必要最低限まとまっているという点はよいのだが、知っている人が読んだらそれが分かる、という意味で) あまりよい本だと思わないし、やろうとしていることに対して練習問題が適当でない気がするのだが、みんなこれで論文が書けるようになるのだろうか……。かけられる時間が少ないので効果があるかは疑問だが、「論理トレーニング」

新版 論理トレーニング (哲学教科書シリーズ)

新版 論理トレーニング (哲学教科書シリーズ)

のような本を使ったほうがよいのではなかろうか。

午後は研究費の報告書作成。けっこう時間がかかる。

夜は新任教員歓迎会。情報通信コースの先生方が企画してくださって、新しく着任した4人の教員の人たちの歓迎会を和花の宝石箱 八王子店で開いてくださったのである。

八王子で降りるのは初めてだったが、新宿三丁目や渋谷のセンター街に似ている雰囲気で、かなり開けている。立川もそうだが、こんなに栄えているとはなぁ。立川よりはこちらのほうが町並み的に古くからある町っぽいが……。

情報通信コースの先生方は全部で20人ちょっとなのだが、外せない用事のある方を除いてほとんど全員集まってくださっていたようで、楽しく歓談する。首都大のよい点は教員同士の仲がとてもよいところが挙げられる。NAIST にいたときは、教員同士の仲が悪いわけではないのだが、あまりお互い干渉することもなく、同じ研究科でも一緒にご飯を食べたりすることは皆無だったので……。NAIST は研究室単位で分かれているので行動の単位が研究室単位になるというのに対し、首都大は教員は全員教職員の居室のある建物の半径20m以内に部屋があるので教員間の距離が (物理的にも心理的にも) 近い、という違いがあるのだろう。(その反面、首都大だと学生室と教員室が別の建物で100m以上離れているので、NAIST にいたときと比べて学生と疎遠になってしまっている感がある)

中央線での帰り、4人の先生方と一緒に帰る。都立大、都立科学技術大学が首都大に統合される前後の昔話をお伺いしたりする。情報通信コース自体は首都大になってからできたコースで、発足してから9年と新しいコースなので、まだいろいろと変えていきたいという話。とりあえず今年4人教員が増える前の段階でできるかぎりのカリキュラムは整えたとのことで、今年入った4人でさらに情報系の科目を充実させていきたい (もう1人助教の公募を出しているので、最終的にはさらに+1) と。今年の自分の担当授業は学部1.5コマ+大学院1コマ (前期週1コマ後期週1.5コマ) で、来年の担当授業は学部3.5コマに増えると聞いているので、来年どういう授業を2コマ増やすのか、考えておこう。

こちらに来るまでは、(西) 東京に自然言語処理の研究拠点を作るのが仕事の一つだと思っていたが、たぶん大学内での第一のミッションは、首都大に情報系のエンジニア・研究者を養成するコースを定着させる (基礎段階は終わったので、それをさらに発展させる) ということで、その傍ら自然言語処理の研究をしてくれるとさらに嬉しい、ということなのかなと思った。

自分が NAIST を出ようと思った理由の一つとしては、NAIST はできてから20年経ち、カリキュラムも研究環境も相当整備されていて、あの環境で研究・教育できるのは素晴らしいのだが、たぶん創立期の先生方がものすごく努力されてそういう環境を作り上げてこられたのだろうし、それに乗っかっているだけでは新しい大学を作る力が身に付かないと思った、ということがある。NAIST は変え続けることで競争力を維持しているのだろうが、そのように一つのところに止まり続けないためにはどうすればいいか、ということである。

現状維持が一番楽なので、強い心でなにかしなければ現状維持になり、現状維持だとすぐには沈まないかもしれないが、前にも進まず、徐々に沈んでいく。なにか変えて失敗すると一気に沈むかもしれないが、常に前に進むためには変え続けないといけない。

想像通りいろいろとやることがあるのだなという印象だが、まだ誰もやっていないところに開拓者のように入って行くのは好きなので、楽しめるうちに楽しんでおこう :)