10年かけて研究者を育てる

午前中、Kevin さんが gcc-4.5 を使いたいというので少し深追い。いろいろ調べてみると、Ubuntu の multilib 周りが問題のようである。新しいサーバ群は基本的に使いたいツールは自分でコンパイルして入れる、というような運用になるらしいが、逆に言うと開発ライブラリ・ヘッダー系は基本的なものが一通り入っていないと、相当面倒な気がする……。(Gentoo だとライブラリはデフォルトで全部入るのだが、DebianUbuntu では細かく分かれているので、ライブラリをちゃんと入れないといけない)

昼は日本語学習者の支援についてメールでやりとり。Lang-8 の2012年度の最新データも見積もりをお願いする。昨年度のデータも購入しているが、貴重なリソースとして研究で大変お世話になっているので、微力ながら支援できたらな、と……。使ってみると分かるが、Lang-8 データは相当使えるデータである (もちろん質は多様だが、量が圧倒的)。検索クエリやクリックスルーのデータが検索の改善にとって貴重なように、大規模な学習者の作文の添削データも貴重なのである。

午後はいいかげん Tcl/Tk のデバッグをしようと思ったのだが、データの確認をしようと思って Windows を立ち上げようとしたら、VMware のバージョンが古くて Mountain Lion に対応していない問題を忘れていて、結局アップデートだけで1時間仕事。うーん……

夕方は言語教育勉強会。ippei-y くんが

  • Ross Israel, Joel R. Tetreault, Martin Chodorow: Correcting Comma Errors in Learner Essays, and Restoring Commas in Newswire Text. HLT-NAACL 2012

について紹介してくれる。

実はこの論文、去年も別の場所で紹介してもらっておもしろかった記憶があるので、この勉強会でも議論ができてよかった。これに関することも、例の CoNLL 2013 shared task (英語の文法誤り訂正) で担当してくれるらしい :)

後半は kensuke-mi くんが進捗報告をしてくれる。いつもながら、外部の研究者の方に積極的にコンタクトして、相談に乗ってもらったり、データについて質問したりできるのはすばらしい。

いろいろ研究テーマは考えられると思うのだが、このテーマも十分おもしろいと思うので、本腰を入れて取り組むのもありなんじゃないかな?なにをやるかも大事だが、修士の2年間は (NAIST では特に) 短いので、なにをやらないか、ということを決めるのも、大事だと思う。(就職活動を止めることにしたら、本気で研究したほうがいいし、逆に進学しないことにしたら、本気で就活したほうがいいし)

結局のところ、先日の湊先生のお話ではないが、いくつも取り組むのは結構なことだと思うのだが、最終的にはいちばん力を入れてもっとも成果が出たもので評価されることもあるわけであって、いろいろ手を出して共倒れになるくらいなら、フォーカスを絞って少なくともこれは自分で誇りにできる仕事、というのを積み重ねるのもいいんじゃないかな。

湊先生といえば、いま研究科長なので、印鑑をいただきに行こうかと思ったら、ちょうど松本研の研究室のエレベーターですれ違い、書類をお渡しする。詳細は一身上の都合により割愛するが、いろいろと考えるところがあった。

湊先生は今年の3月で定年退職されるのだが、自分が入学した当初は特待生担当で、哲学科から、しかも3年留年したりあちこち行ったりしている自分をいろいろとかわいがってくださって、大変お世話になって感謝している。湊先生は自分が着任したときざっくばらんに話してくださった先生方の中のお一人で、研究者を育てる、ということをとても大事に考えていらして、学生のころからそうであったが、助教としても折に触れて教員としての心構えを雑談的に話していただいて、じっくり育ててくださったなと思うのである。

大学院・研究者を目指す人へという翻訳記事2本、とてもいい内容なので、研究者を目指す人、大学院に入ろうとしている人は、ぜひ読まれるとよい。どこか強調したいところを抜き書きしようかと思ったが、どこも抜き書きできないほどいい文章である。含蓄があり、折に触れて読み返したい。

夜はNAIST近くのはぎはらクリニックという医院で健康診断。8,000円で作っていただけるようである。最近は〆切前の追い込みで満身創痍であり、もしかしたら異常が見つかるかもとドキドキであるが、一応いちばん心配だった胃・咽喉は12月の胃カメラで異常なしと分かっているので、たぶん大丈夫であろう。

これまで病院と言えば自宅近くの病院に通っていたのだが、この1年は職場近くの病院に通っている。自宅と職場がほとんど同じ場所だったので気がつかなかったが、仕事が立て込んでくると自宅近くの病院に通うのはしんどいのである (車通勤だからまだましだが)。職住近接で働きたいのは山々なのだが……。