いまの自分から見た昔の自分

今日は社会的知能発生学研究会に参加するために大阪へ。ホテルコスモスクエア国際交流センターというところで開催されたのだが、これNAISTから電車1本で乗り換えなしで行けるというものすごいアクセスのよさ。交通的に初めて NAIST でよかったと思ったよ!(笑)

初日は講演と懇親会とフリーディスカッションのみとお伺いしていたが、どういう人が来るのかいまいち分からなかったので(上記リンク先にも「瀬名秀明」とか「茂木健一郎」とか書いてあるし……)、隅の方で聞いていた。初日の講演は「アスペルガー症候群 治療の現場から」を上梓された国立成育医療センターの宮尾先生。

アスペルガー症候群 治療の現場から

アスペルガー症候群 治療の現場から

アスペルガー症候群自閉症の話だったが、アスペルガー症候群は先天的な障害だというのが従来言われてきたことだが、それは正しくなく、先天的な要因と環境要因(特に1歳前後)の両方が揃って完成するものだ、というのがここ数年の研究で分かってきた定説らしい (Nature とか Science とかにも論文が載ったり、これまでアメリカでは ADHD 研究がホットだったが、いまは自閉症がホットなのだとか)。講演中もいろいろと実例をお話くださって、参考になる。

先日のメンタルヘルス講習会でも「アスペルガー症候群は環境要因もある」というのはこういう話だったのかな〜。メンタルヘルス講習会では対応策メインだったので、詳しく原因については聞かなかったが、今回たっぷり4時間アスペルガー症候群について、最新の研究成果を聞いていろいろ目が開かれる。「アスペルガーの場合、歩き方が特徴的なのですぐ分かる」という話から、実際にどの部分の遺伝子に変異があるのでこれが起きているのだろうか、という話になったり、ネアンデルタール人との関連の話になったり、あちこち話が発散してもちゃんとみんなついていく、というのがさすが (笑) 

乾先生から「みんなとてつもなく頭がよいので心配しなくてよい」とお話があったが、確かにこういう議論が可能だったのは中高生のころだけだったなぁ。大学に入ってから、こういうふうに哲学から考古学・言語学・経済学・生物学・物理学・工学とどんな話題が来てもついていけるタフな人をほとんど見かけなくなってしまったが (特定の分野で詳しい人はいるので、それはそこまで悪いことではないのだが)、久々に守衛さんが「そろそろ帰りなさい」と教室や部室に来るまで議論していた中学時代・高校時代を思い出した。自分の通っていた学校は、いわゆるお勉強ができる人が多かった印象はあまりないのだが (やっていたとしてもみんな学校では言わないし)、議論好きな人が揃っていたというのは強く思うし、自分にとってはああいう環境で育つことができたのは幸運なことだったのだなと思った。

懇親会を挟んで21時からフリーディスカッション。終了時間が書いていなかったので、アルコールを飲みながら翌日までやるのかとびくびくしていたが、ノンアルコールで延々議論して0時半に解散。なんとか自室に戻ったが、腰が「もうこれ以上は無理」と言っていたので、そのまま動けなくなる……。いやはや、議論するのもこの歳になるとしんどいな、もう若くないのだな、と思った。

中高のころほどこういうフリーディスカッションに胸躍る感じじゃなくなった (つき合うことはもちろんできるし、それはそれで楽しいのだけど) のは、自然言語処理に特化してしまったせいかなぁ。治療が困難だった病気に苦しむ人を助けられるとか、苦労して100時間かかっていた作業がクリック一発でできるようになるとか、直接的に困っている人を助けることができる仕事をすることのほうに (少なくとも大学に入って相談員を始めてから) 関心が移ってしまったので、中高のころの自分がいまの自分を見たら「なんてつまらない人間になったんだ」と思っているかもしれないなぁ。

自閉症スペクトラム指数自己診断ページでやってみたら、いまの自分だと10点、中高生のころの自分を思い出してやってみたら36点だった。たぶんそうだろうなと予想したが、昔は割と自閉的傾向があったように思う。幸か不幸か最近中高生のころの自分が復活してきたようなので、うまくつき合っていきたい。