恬淡として生きる

いろいろなブログで評判になっていたので長尾真先生の自伝を読む。

情報を読む力、学問する心 (シリーズ「自伝」my life my world)

情報を読む力、学問する心 (シリーズ「自伝」my life my world)

ご存知ない方のために補足しておくと、長尾先生は現在国立国会図書館長をされている方で、その前は情報通信機構(NICT)の所長、その前は京大の総長を歴任されていたが、元々は自然言語処理専門の方である。

元々長尾先生のご実家は神主の一家だったというのは初めて知ったのだが、ひょんなことから助手になったりだとか、自然言語処理が専門に落ち着くまでには紆余曲折があったのだということを知り、やはり昔の人工知能分野の研究者の人たちは今ほどタコツボじゃなくいろんなことに手を出していたのだなと思う。

助手の仕事についてしばらくして、仕事を辞めたくて辞めたくて仕方なくなって何回も先生にかけあったが、その度に慰留され、結局ある時点で腹をくくっていまの研究をしばらく続けよう、と決めたらうまく行くようになった、という話が印象的だった。人生諦めて道が拓けることもあるのだなと。

あと、できるだけ優秀な人を後輩や学生に持ち、ずっと飼い殺しにせずにいい場所に行くときは気持ちよく送り出してあげることにしている、という話も参考になる。

この本を読み終えたのは先々週くらいなのだが、それから毎日妻と電話しているとき2日に1回くらいこの本の中に書いてあったことを話している気がする先日紹介した本 は論文を書かねば価値がない、というような感じだったが、こちらの本は「研究を仕事にするとはどういうことか」という真摯な姿勢が行間からにじみ出てきて、噛めば噛むほど味が出てくる。自分もこういうふうに淡白に、しかしどっしりと生きたいものである。