最近読んだ本からいくつか。
- 作者: 渡邉正裕
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/10/24
- メディア: 単行本
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渡邉正裕の本はこれで全部読んだと思うが、この本がいちばんおもしろかった。それ以外の本はデータ的な意味はあるが、読んであとに残らない本で、「検索できればいいや」と思う程度の内容だったのだが、この本は読んだ後に考えさせられるものがある。
要は彼が日経新聞の記者になってから IBCS (IBM のコンサルティング会社、彼が入った当時はプライスウォータークーパーハウス、通称 PwCC)に移籍し、5年でコンサルタントも辞めて MyNewsJapan というサイトを開設して軌道に乗せるところまで、という半生記である。本が500人も購読者を獲得できないようなら文筆業で生きていこうと考えない方がいい(本でも初版7,000部程度が普通だから500人というハードルは非常に低く設定しているとのこと)、とか(TopHatenar で検索するといまこのブログの RSS での購読者は84人のようである)、月にどれくらいの費用がかかってどれくらいの購読者が更新するとか、数字を出しているところは参考になる。
それで MyNewsJapan は大企業に関する批判でも載せるという方針のニュースサイトなのだが、第6章で Amazon (A8) や Yahoo! (オーバーチュア) や Google の広告を利用しようとしたときの話が書いてあり、Amazon は費用をかけても全く意味がなかった、Yahoo! と Google は門前払いされた、という顛末が書いてあり、こういう対応をされるのか、というのは読んでいてびっくりする(そう見えるように多少脚色して書いてあるのだろうが)。著者はたとえば Google の AdWords で「ヤフー 採用」を登録しようとしてできなかったのはおかしいという主張をしているのだが、ヤフーが相当のお金を払ってそういう広告が出せないようにしているのであれば、それはそれで言論の自由とは関係ないんじゃないかなぁ、と思うのだが……。(こういうところ、過剰に「敵」を作って書き立てる彼の書き方は好きじゃない)
そもそも検索自体自分が見たいものを一発で検索できる(もしかすると「企業が見せたいもの」である可能性はあるが、一応表向きはそういうのは広告として排除し、検索ランキングは企業による手が入っていないことを示す「オーガニックな検索」という概念はある)ように動いているわけで、広告というのも(今はまだそんなに最適化されていないが)そちらの方向に動いていくと思われるので、これまでのマスコミでの広告にたてつくのであれば、Web での広告も同じだと思った方がいいのでは、と著者には言いたい。
自分が Web を使い始めた1998年当時はまだ検索してもエロサイトばかりが出てきたり、スニペットやタイトルは文字化けしまくっていたり、ひどいものであったが、たった10年でそんなものはほとんど出てこなくなったし、広告もいまは過渡期なのでいろんな問題が出てきているが、10年もすれば成熟してきてみんな当然のようにクリックするようになるんじゃないかな?
で、同じ著者の
- 作者: 渡邉正裕
- 出版社/メーカー: 東邦出版
- 発売日: 2005/01
- メディア: 単行本
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と
- 作者: 山本一郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/11
- メディア: 新書
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は、どちらも既存のマスコミがその役割を終えてこれからネット上でどういうふうに情報が動くのか、という話について考察が書かれていて、(後者は読みにくいしあまりいい本だとは言えないが、自分の意見が書かれていて好感が持てる)考えさせられる。時事性のあるニュースは Web で読んで無料というのが当たり前になってしまった、というのが両者で共通する認識であるが、そこで Web ニュースでもいかにビジネスとして成り立たせることができるのか、真剣に考えて実際にビジネスとして動かしているところが「やりがいある仕事〜」の面目躍如というところである。
「やりがいある仕事〜」の本、タイトルと内容がかなり違うので、損をしている気がする。言いたいことは結局タイトルに尽きるのだが。言い換えると、「NPO に生き甲斐を見いだす人がいても、結局ボランティアでやっていたら自己満足、偽善である。そういう公益性が高い仕事こそ、ちゃんとビジネスで揉まれた人がやるべきであるし、利益を出すべきである(そういう社会になっていることが理想である)、というのが本書の主張である。自分もそう思うが、これはストレートに言わなくてもいいんじゃないかなぁ? (「最後の授業」的表現を使うと「頭のフェイント」として伝わればよいことであって、それを全面には出さない方がいいような、ということ)
ともあれ、他の渡邉本を読んでいる人や、会社(大学)を転々として自分の能力向上させたりすることに関心が高い人には特にお薦め。