中学受験の失敗学〜ツカレ親にならないために

まだ中学受験のことを気にする時期でもないが(そもそも自分の子どもに中学受験させるかどうかも分からないが)、ふと

中学受験の失敗学 (光文社新書)

中学受験の失敗学 (光文社新書)

を手に取ったので読んでみる。おもしろい。自分も家庭教師をしたことあるし、代ゼミで通算1年半ほど住み込みチューターもしていたので、体験談はまさに「あるある」という感じ。ポイントは、子どもの現状を把握せず高望みの志望校を変えなかったり、もしくは子どもが基礎学力もないのに発展問題ばかり教えさせようとし、子どもが全く理解していない状況を認めようとしない「ツカレ親」の子どもは、志望校全滅する可能性が高いですよ、という内容。定量的な話があるわけではないが、まさに典型例のような事例ばかり載っていて、「こんなの話をうまくするためにこしらえた作例じゃないの」みたいに思うかもしれないが、本当にいる。

かつて自分が行ったところのお子さんは、我が家と同じく男子4人兄弟の長男だったのだが、父親が医者なのでどうも息子も医学部に入れたいらしく、それで母親も彼にスパルタで勉強させようとするのだが、子どもがほとんどやる気ない、という状況。ふとしたときに漏らしたのは「俺よりすぐ下の弟のほうが頭いいし、俺はだめだと思うけど、あいつは医学部に行けると思うよ」という一言で、自分の能力についてもよく分かっているようでちょっとぐっとくるものがあったが、それでも親の手前御三家クラスを目指さざるを得ない、という事情があるそうだ。

この家庭もこの本で言えば典型的「ツカレ親」で、ちょっと見ていてかわいそうなところがあった。彼はもう大学受験のころだと思うが、どうしているんだろうか……。

家庭教師って子どもを教えるのと同程度かそれ以上に親のコンサルタント・カウンセラーの仕事が重要で、教える対価としてもらうお金はたかがしれているように思う。とはいえ月の塾費用+個人指導料で月20-30万円かかるというのは馬鹿げているように思う(家庭教師が1時間当たり7,000-9,000円かかる)し、こんなに払う家っていったいどういう家なの?と思ったりもする。

大学受験だと中学受験より親の介入度合いは減ってくるが、それでもやはり自分で基礎からやり直さないといけないと思う生徒は珍しいほうで、試験当日得意な分野ばかり出て、そして自分の調子も150%出たら早稲田・慶応あたりに入れるかも、という一縷の希望にすがって失敗する予備校生が後を絶たず、いかに本人のやりたいことを聞いて(早稲田や慶応ではない、本人のレベルに応じた)「お買い得」な学校・学部を勧めて受けてもらうか、ということが一番重要な仕事であったように思う。

入ったら入ったでどこに入っても「楽しもう」という気持ちさえあれば楽しめるのは、自分たちは経験から分かるのだが、浪人している最中の人たちはそう思えず「早稲田に入らないと人生終わり」みたいに考える人が少なからずいる(そして多浪したり、それでも飽きたらず仮面浪人したり)ので、誰が不安を煽っているのか分からないが、受験業界は罪作りな気がする。(まだ親への煽りが少ない分だけ大学受験はマシだけど)

中学受験をした人・させた人・させようと思っている人、家庭教師・塾講師をしている人・していた人にお薦めである。