世界陸上の楽しみどころ

世界陸上では毎度のことだが、織田裕二が「この選手に注目!」とか「彼女にメダル取ってほしい」と言うと必ずその選手が負けるというジンクスがあったりする。今回それで散っていった選手が何人いたことか……。逆に中井美穂が「この選手がもしかしたら」とふと言うとその選手が勝ったり。どれだけ織田裕二が外すのかを見るのも世界陸上の楽しみだったり(生で見ないとこれは楽しめないのだが ;-p)。なかなかおもしろいコンビだったりする。

今回は400メートルハードルの苅部がパリに張っていて、向こうにいる女性キャスターの人と解説ボックスで2人で解説するのだが、苅部が女性キャスターのほうに向いて喋るとき、なぜか体を 20cmほど離したり逸らしたりするので、大会終了までにこの距離がどれだけ縮まるか、というのも個人的には興味津々で見ている :-) 為末が400メートルハードルの1次予選を走ったあとだけ苅部が眼鏡をかけて登場し(いつもは眼鏡は机の上に置いている)、そのときは自信を持って熱が入った解説をし、女性キャスターのほうを向いても全く体がのけぞったりしなかったのだが、1日経ったら元に戻ってしまった ;-)

特に今日の放送は陸上短距離が多かったので伊東浩司(100メートルのアジア記録保持者)が解説に来ていて、伊東浩司はもう一線を引いて後進の指導をしているためか、解説にとても親身なアドバイスをしていて、陸上と陸上をやる人たちにとても愛情をもっているのだな、とじんじんと伝わってくる。

走り終わったあとの選手にかける言葉も優しさに満ちていて、ちょっと油断して手を抜いて第1次予選落ちしそうになった為末に向かって大声で「馬鹿だ!!」と叫んだ織田裕二とは天と地ほど差がある(まあ織田裕二織田裕二で悪意があって言っているわけではなく、期待していて最後まで一生懸命やってくれなかったので、ちょっとそりゃないだろ、という気持ちで言ったので、そこまでひどいわけでもないが)。

そしてレース前に伊東浩司が「この選手は練習風景と予選の走りを見たらいまが伸び調子なのでマークですよ」とか「去年のヨーロッパ大会から調子を上げてきていて、こんなときは自己新も予選でぱっと出たりするんです」とか「中央のレーンにばかり目が行くかもしれませんが、混戦になると実は端のレーンの選手なんかもそんなに悪くないんですよ」と、本命の他にダークホース的な選手を1人か2人上げたりするのだが、これが魔術でも使っているかのように的中する(来るかも、と言った選手が実際1着になったりする)ので驚く。予選の走りを1回見ただけでそこまで調子が分かるのか、と舌を巻く。現役のころの伊東浩司のインタビューだと、いったいこの人は自分の言うことが普通の人に通じると思って喋っているのだろうか(意味は分かるのだが普通の人は引くかもしれないことを素で喋る)、と思っていたが、今回の世界陸上の解説はすばらしい。この解説を聞くだけでも世界陸上を生で見る価値がある。

その世界陸上もちょうど半分の地点。

かつて伊東浩司

ラソンで1位になって周りが感動する、そういうのは嫌なんです。

それよりも短距離で周りがわーッとなって興奮する、そのほうがずっと気持ちいい。

ぼくは周りに感動ではなく興奮を与えたいんです。

と言っていたが、この大会であと何回の興奮に出会えるだろうか。

とりあえず明日の男子200メートルは必見、ということで ;-)