緑の世界史

岡本先生の授業で初回で準備時間がないということでみんな発表を引き受けなかったので発表担当になってしまったのだが、準備が終わらない。泥沼、もとい、泥縄な性格はもともとだが、この時期発表の準備をするには就職活動がやはり余分であった。

とはいえ緑の世界史の上巻自体は高校時代に読んでおり、おもしろい本だということは分かっていたので、今回担当することで下巻にも目を通すいい機会であった。

簡単にまとめるとこの本が扱うのは環境史と呼ばれる分野だそうで、環境と歴史の相互関係について考察している本である。かといって別に日本はモンスーン型気候だから云々、と議論しているのではなく、人間が有史以前から環境に与えてきた影響(環境破壊、という形がほとんどであるが)と環境が歴史に与えた影響について数字や実例をふんだんに交えて(数字に関しては恣意的な使い方をしている感も受けるが)解説してあって、自分にとっては環境の中で生きる人間という存在への見方に多大な影響を与えた本であることは間違いない。

具体的には生まれた子どもの「間引き」という行為はそれまで常に悪だと思っていて、間引くなんて未開で野蛮な文明だからやることだ(とまでは思わなかったが)、と忌避していたのだが、環境と時代背景によっては一概に悪とはいえない状況もあるのかもな、と考え直したのはこの本がきっかけであった。間引かないとそこで生活している集団全体の生活が危ない場合、間引くことで全体としては生き残る戦略、という考えもあるし、厳しい環境の中その環境で生き延びられる限界の人数があって、限界の人数を超えたら人間の側で調整することで自然と「共生」していた、という考えもある。

なかなか示唆に富む本なので本屋で見かけたらどうぞ。

しかしこの本、訳がけっこうひどいな……。原本に当たらないとなにが言いたいのか分からないだろうというのもしばしば(かといって原文に当たっているわけではないので、この本だけからはギブアップせざるをえないことになるのだが)。